プラスチックモンスタッカーを恐れすぎず正しく警戒しよう

棚霧書生

プラスチックモンスタッカーを恐れすぎず正しく警戒しよう

“プラスチックモンスタッカーとは?”

 先頃の春にプラモン対策委員会が緊急対策として、特殊ファイアーガンを各国の警察など保安を司る組織に持たせるべきだとの意見を表明したことは、皆さんの記憶にも新しいかと思います。

 プラスチックモンスタッカーについて、ニュースの特集が組まれ、連日のように放送されていますので、知らない方はそう多くないと思いますが、正しくプラモンを警戒して頂くためにも、彼らについて少しおさらいをしておきます。


 プラモンは約1メートルから2メートルの大きさで、その身体は主にマイクロプラスチックで構成されています。ノロノロとナメクジのように遅いスピードでしか動かず、知能はないとされています。しかし、人体に有害な物質を噴出しながら移動を行うため、人間が近くにいくと健康面に多大な損害を受けてしまいます。

 だから、各国とも国民の健康を守るために必死に手を打っているのです。


“なぜ今になって、プラスチックモンスタッカーが問題視されているのか”

 プラモンが我々に目撃されるようになり始めたのは、今から約三十年ほど前のことです。このことを意外に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、沿岸部では近寄ってはならない、毒を振りまく怪物として、かなり前から恐れられていました。漁師の方の間では“プン”という名称で前々から警戒されていまして、船にプラモンの有毒物質がかかって使えなくなってしまうことを“プンが付く”と言うそうです。そのような言葉ができるくらいプラモンが身近にいたということですね。


 内陸部や都市部にもプラモンが進出し、被害が深刻化したのはここ数年のことです。初めは海水浴客の集団中毒の発生が大きな問題となり、メディアでもプラモンについてセンセーショナルに取り上げられました。あの頃はまだプラモンの名前が正式には決まっていなかったので、謎のバケモノとか妖怪ドクドクとか各報道メディアによって色んな呼び方をされていたのを印象深く覚えていらっしゃる方も多いでしょう。

 それが段々とプラモン発生の原因が大量に排出されたプラスチックゴミだとわかってくるとプラスチックモンスターと呼ばれることが多くなりました。最終的にはプラスチックモンスターではなく、英語の積み重ねるという意味のスタックが追加され、それに人に似た形をしていたので“er”をつけて、プラスチックモンスタッカーというのが正式名称に落ち着きました。

 プラモンはプラスチックが積み重なり凝縮されることで発生するものなので、妥当な名前でしょう。


 プラモンを語る上で“凝縮”というのは重要なワードの一つです。なぜ現在になってプラモンがこれほどまでに注目されているのかも、この“凝縮する”というプラモンの特徴を知れば理解できるでしょう。

 プラモンはマイクロプラスチックが集まることで発生しますが、大量に集まると凝縮が始まり人のような形をとります。このとき、凝縮熱というものを起こすのですが、これが中途半端な熱なので溶けたプラスチックから有害物質が出てしまいます。これがまず1つ目の凝縮。

 もう一つ、凝縮してしまうものがあって、それがなにかというと有毒物質の毒素なんです。1つ目の凝縮よりも厄介で、年々、毒素が凝縮されることで、強毒性が高くなってきていると言われています。

 以前は有毒物質に当てられても人体への被害は大きくなかったところがありました。しかし、年を経る毎にプラモンの毒によって重大な中毒症状を起こす人が増えてしまいました。症例の増加が人々の目をプラモンに向かわせているわけです。


“プラモンに遭遇したときは退避を優先に”

 我が国では警察や消防だけでなく、警備会社などの民間企業にも補助金を出して特殊ファイアーガンの全国普及に努めているところであります。

 半端な火力では、プラモンの体表が少し焼けるだけで、消滅に至らないどころか、人体に有害な物質が大量に発生しますので、決して素人判断でプラモンに立ち向わないでください。

 プラモンを見つけましたら、まずは退避。彼らは、脳や感覚器官を持っていませんから、こちらを認識して追いかけてくることはありません。距離を十分に取ってから、警察か消防に連絡しましょう。先にプラモン案件であることをご自身がお持ちのパートナーAIに伝えると、プラモン対策室の方につないでくれるのでスムーズにことが運ぶかと思います。その際、住所と合わせて近くの見守りカメラの番号をお伝え頂けるとベストです。見守りカメラの番号がわからないときはパートナーAIに聞きましょう。


 プラモンの持つ有害物質は脅威ですが、近づかなければ毒される可能性はとても低いのです。だから、皆さんにはプラモンにもし遭遇したときは落ち着いて慌てずに対応して頂きたいと思います。


筆者 魚住清

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