領地運営はアルバイトにお任せ!
モモん
第1話、赤い靴履いて山下公園にいたら異人さんに連れられて異世界に
横浜、山下公園に銅像がある。
その前ではしゃぐ女子高校生3人。
一人がコロコロと澄んだ声で歌う。
赤い靴を履いていた女の子が”イイジイサン”に連れられて行ってしまった、と。
「あれっ?ミク、今のおかしくなかった?
誰、良い爺さんって?」
「えっ・・・人のいいお爺さんの養女になったんじゃない。
めでたしめでたしって歌でしょ」
「馬鹿ね、そこは”ヒイジイサン”の間違いだよ」
「アスカ、あんたのも違うんじゃない?」
「えっ、両親が死んじゃって、親族の一人である母方の曽爺さんが引き取ったんでしょ。違った?」
「違うわよ!そこは異人さん・・・のはず
ちょっと待ってね、ググってみる・・・」
「ねえ、異人さんって異世界から来た人だよね。
なんかTVで見た気がする」
「ほら、異人さんで間違いないって・・・
えっ、結核で死んだ女の子・・・お母さんを安心させるためのウソ・・・
良い爺さんも曽爺さんも、ポピュラーな勘違い。
他にも、ニンジンサンって何それ・・・
ジャムパン〇ンとか出てきそうね。」
「人参さんって、二股に分かれたプリケツじゃないの?」
「結核っていうのも、ねつ造じゃないかって説もあるみたいね」
「死ぬまで踊りつ続ける、呪いの赤い靴ってなかった?」
「ああ、童話であったな。火がついてるやつだろ」
「なんか、アニメとごっちゃになってない、それ」
「今は、動揺の赤い靴に限定しましょうよ。
歌詞に出てくる事実関係としては、
1、赤い靴を履いた女の子が、異人さんと一緒に横浜から旅立った
2、女の子の目は、やがて青い目に変わってしまう
この事実から推測されるのは・・・はいアスカ君」
「カラコン・・・いや、女の子は目の病気で失明してしまった・・・かな」
「わお!不良品をつかまされた奴隷商人は、怒って日本に戦争を仕掛けてくる。
いやいや、やっぱ異世界人で、新たな能力に目覚めた少女が魔法少女に変身すると青い目になる。
やがて祖国に帰ってきた魔法少女は、悪の組織と戦うことになる」
「ミク、あんたアニメの見過ぎでしょ。
具体的にイメージするには、アスカあんた赤い靴履いてるんだからモデル決定ね」
「赤いスニーカーだぞこれ」
「赤い”クツ”に違いはないわ。あとは、異人さんぽい・・・あっ、なんかセバスチャンっぽいおっちゃん発見。
・・・おじさま、JKのお願い。この子と手をつないで、モデルやってくださらない」
「ルナ・・・それが自然にできるって・・・エンコーとかやってないよな・・・」
「じゃあ、二人で手をつないで、氷川丸をバックに・・・氷川丸へ向かって歩いていく感じで・・・
はいOKです。
おじ様、ありがとうございました」
「「どれどれ」」
「うーん、セバスチャンに同行するJKか・・・
異世界から来たヒツジのセバスチャン」
「執事だろ!って突っ込みは置いとくわね。
辺境を治める貴族が事故で死んじゃったの。
跡継ぎがいないので、このままだと強欲な叔父に乗っ取られてしまう。
そこで執事のセバスチャンと、メイド長メリーは一計を講じる。
実は、事故死する前に異世界から召喚した利発な娘との養子縁組が整っており、王都へ申請している最中だった。
執事とメイド長が証言し、申請書類が整っていれば押し通せるだろうと。
そうすれば、屋敷は継続でき、使用人たちが路頭に迷うこともない。
実は事故も強欲な叔父の仕組んだものであり、それを知った娘は、怒りで能力に目覚める。
能力を得た代償に、娘は黒い瞳を失うが、視力にかわる全方位探知があり、元の世界の知識を活かして領地を発展させ幸せに暮らしました。
どう、私のオリジナルストーリー」
パチパチとセバスチャンが手を叩きながら話しかけてきた。
「いやあ、大変興味深いお話ですな。
できましたら、場所を変えてもう少し詳しいお話を伺いたいのですが、とびきりの洋菓子なんぞ如何でしょうか?」
こうして私たち三人は、セバスチャンに連れられて異世界へ飛んだ。
「概ね、先ほどおっしゃっていたとおりの事が起こりました。
現在進行中です。
先代の叔父にあたるバンドル男爵ですが、彼の出した急使が王都に到着するのは2日から3日後と予想できます。
急使が到着する前に、養子縁組の届け出を出すことができれば、領主交代を阻止できます。
書類の作成に2時間。これは私の本来業務ですから、専用の封緘をした正式な書類として作成できます。
私の転移能力を使えば、明朝までには王都に入れるでしょう。
そこから、知人を頼って養子縁組の届を受け付けてもらえば」
「それで、私たちは何でここにいるんでしょ。
このケーキは確かに美味しいですけど」
「それは勿論、領主に・・・」
「「「パス!」」」
「えっ!」
「わたしら、ただの女子高生だよ。ムリに決まってんじゃん」
「そうそう、大学受験で時間だってないしさ」
「バイトだってあるしさ」
「時給2000円出しましょう」
セバスチャンは指を3本立てて私たちに提示してきました。
指の本数ちがってっけど・・・
「えっ?」
「こちらが現在運用されている金貨で、約20グラムあります。
金の相場って、地球では日々変動しますけど、今日の時点でグラム5000円くらいですか。
地球換算で約10万円になります。
これを勤務50時間毎に1枚お支払いいたします。
こちらの世界で買い物して持ち帰るか、地球で換金するかはお任せいたします。
必要なものがあれば、領収書を持ってきていただければ経費としてお支払いいたします。」
「「うっ、時給2000円・・・」」
「某ハンバーガーショップでバイトすると自給960円くらいですよね。
そうですね・・・一日のマックスを10時間にしましょうか。
金曜の学校が終わった時間にこちらにきて、日曜の夕方帰る場合は30時間になります」
「週末のバイト代が6万円・・・」
「転移用の魔道具をお渡ししますから、学校から直行できます。
各ご自宅に転移マーカーを設置すれば、家に直帰できますよ。
転移マーカー用の魔石は金貨1枚で買えますが、月1個は交通費として支給しましょう」
「そ、それってプライベートでも使えるの?」
「ええ。今日使ったように、手をつなげば500kgまで同時に運べます。
終電がなくなった時とか便利ですよ」
「領主って、具体的に何をすればいいんですか?」
「基本的な領地運営は私にお任せください。
皆様方は各決裁書類へのサインとか領地運営に対するアドバイス。
パーティーや各種行事への出席。来訪者対応が中心になります。」
「でも、領主って一人でしょ?」
「全員を養女にして、代行権限を与えればほとんど同格にできます。
イケメンを見つけて、こちらで結婚。定住していただけるなら月に金貨20枚以上をお約束いたしましょう」
こうして私たち3人はアルバイトとして領主になりました。
ちなみに、セバスチャンっていうのは、名前を私たちが発音できないので、言語変換されているらしいです。
転移用の魔道具は、セバスチャンの発明品で、一般化しているわけではありません。
地球での収入ではないので、源泉徴収とかされないし、扶養とか健康保険とか気にしなくてもオッケーです。
条件としては、1日3時間以上、誰かしら勤務に入ること。
重複するのは問題ありません。
今日も私たち3人は、学校から領主館の自室に直行します。
セバスチャンと打ち合わせをして、3人で手分けして書類にサイン。
全員集まって、領地運営に関する検討を始めます。
「やっぱり、何か新しい名物とか作りたいわよね」
「そうね、文化水準は明治初期ってところだけど、魔法中心の社会だから工業化は進んでない」
「でも、ゴーレムによる自動化は結構できているわよ」
「ああ、あたしたちの頭じゃ無理よ・・・新しいこと考えるなんて・・・」
「ねえ、セバスチャン、友達連れてきてもいいかな?」
「転移器はこれ以上お渡しできませんが、同行なら結構ですよ。」
「マーカーは?」
「5個くらいなら用意できますが」
「アスカ、誰か心当たりあるの?」
「料理研究部、スイーツ開発同好会、不登校のネネちゃん。
人材なら学校にいくらでもいるじゃない」
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