第3話、ネコが売れるなんて、どうなってんの

でも、納税の馬車が出発する朝、アスカがナニゲに鑑定したら金貨3000枚って表示されて、これって王都でならこういう値段が付くって事よね。

王都に連れて行ったら、案の定お姫様の目にとまっちゃって、3匹で金貨一万枚・・・ドナドナしちゃいました。


「ねえ、保健所でイヌ・ネコの譲渡会ってやってなかった?」


「でも、あれって親の同意がないと貰えないよ」


「それって、セバスチャンかメリーでいけるよね。

親の保険証を持ち出せばOK。

でも、確かイヌって市役所の登録が必要だよ。

ネコは意外とフリーだったはず」


「増やすんなら、ハムスター。手間もかからないし、タダであげるって友達も何人かいるよ」


「これは情報収集が必要ね。

誰か、サポーターを頼めないかな」




「調べたんだけど、室内飼のネコは20年生きるってさ。

外だと病気なんかで5年くらい」


「よし、ネコ部屋を作って繁殖させよう。

王都からお茶会だって貴族を招いてネコ部屋に連れて行って抱かせる」


「抱かせるって…、援助交際みたいな響きだからやめようよ」


「だけど、当面の財政難は乗り切れるわね。

ハムスターも別の小屋を造りましょう」


「こんな時こそ、不登校のネネちゃんだよ。

あの子、ネコを5匹くらい飼ってたはず」



ネネちゃんを騙して…、いえ、ちゃんと説明して協力してもらいます。


「譲渡会の場合、去勢済みか、受け取った後で去勢手術をした証明書の提出が必要なのよ。

繁殖目的なら、知り合いから譲ってもらうか、ペットショップでの購入ね。

ああ、子猫の場合は、確約書の提出で済む場合もあるけど、どっちにしても未成年にはハードルが高いわよ。

うちの子も去勢済みだから繁殖は無理ね。

ペットショップでも、売れ残った子は値引きしてくれるから、繁殖ならそっちのほうがいいんじゃない」


「でも、猫って20万くらいするよね」


「安い子は10万以下でも買えるわよ。

あとは野良猫を確保するって方法もあるけど、こっちの世界に病気を持ち込む可能性があるわ。

人間にはうつらないけど、猫エイズや白血病の可能性があるの。

そのリスクを考えるなら、買ったほうがいいわよ


「10万を10匹で100万。金貨20枚か…。その前に換金できるところを探さないとね」


「金はあるの?」


「うん。私たち一応領主だからさ。

予算を使うこともできるんだよね」


「金の換金ルートなら確保済みでございます」


「ホントなのセバスチャン!」


「はい、日本円のほうがよろしければ、アルバイト代も日本円でお渡しできますが」


「もう、早く言ってよ。それで、アルバイトの増員は何人までOK?」


「先日の子猫の収入がありましたので、5人までとしておきましょうか」


「ちょっと待って。この間の経理役の代わりも必要よね。

その分の人件費を考えれば、あと3~4人はいけるんじゃない?」


「では、経理役込みで10人までとしましょう」


「やった。ネネちゃん、協力してもらえるかな」


「収益をあげたら、バイト代増額してくれる?」


「勿論でございます」


「学校辞めるつもりだったから、バイト探してたんだ。

こっちも助かる」


「でしたら、雇用でも結構ですよ。

日本にダミー会社を作りましたから、正式な雇用契約書も作れます」


「あっ、それいいな。やりたいことができたからって、親も説得できるし」


「では、新規事業の責任者として採用させていただきます」


「ネコの仕入れとこっちでの繁殖でいいんだよね。予算枠は?」


「そうですね。今のお話を聞きますと、当面は日本円で300万円。

それ以上は個別に判断しましょう」


一週間後、ネネちゃんは学校を辞め、こっちの仕事に専任することになりました。



次のターゲットは生徒会役員。


会計の宇佐美ちゃんと、副会長の久美ちゃんは何とかして確保したいところ。

書記の筑紫(つくし)ちゃんはどっちでもいいけど、会長の茜ちゃんには知られないようにしたい。

あの子はキャラが濃すぎるから…


「宇佐美ちゃん、ちょっと相談に乗ってもらいたいんだけど、放課後空いてない?」


「相談?いいけど、今、話せないようなこと?」


「う、うん。ここだとちょっと…」


「なに、相談なら私が聞いてあげるぞ」


「げっ、茜ちゃんいたんだ…」


「ん?何か後ろめたいことがあるんだな。なら私が適任だ」


「い、いや…」


「そういえば、お前と仲のいい立花美玖と吉川明日香も最近様子がおかしいな」


ギクッ


「まさか、三人でエンコーとかやってんじゃないだろうな」


「そ、そんなことしてないよ」


「だが、人に言えないバイトだろ」


「な、なんでそれを…」


「簡単な推理だ。昼に食べているパンが、タマゴサンドからフルーツサンドに変わった。

金回りがよくなった証拠だ」


「そ、その程度のお小遣いはもらっているわよ」


「羨ましいです。憧れのフルーツサンドを毎日食べられるなんて」


「そういう事だ。普通は、着るものとか帰りによるカラオケとかに小遣いを回すんだが、そっちに小遣いを回さず、昼飯に贅沢を求めるっていうのは、放課後の時間を別のものに充ててるということだ。

しかも、ネネがあいさつに来た時、それほど親しくもなかったお前たちと話し込んでいた。

そして、ネネの辞める理由が、やりたいことが見つかったという。

さあ、正直に話してもらおうか」


「じ、実は…」


正直に全部告白しました…、いえ、させられました。


「ほう、領地の運営で、人材を探している。経理担当として宇佐美を引き抜こうという事か。

面白い。そうだな、料理研究会からは理奈と私がいれば十分だろう。

課題が見つかったら部員にやらせればいい。

あとは、農業研究部の草山豊美だな。

それと、手芸部の手崎美縫みほ

これで、様子を見て、必要なら人材を追加すればいい。

まあ、お前たちは顔役なんだから、細かいことは私に任せればいい。

いや、大学の推薦が決まって、生徒会も来月で卒業だからな。

うん、全目的に協力しようではないか」


「あっ、はい。よ、よろしく…」


事の次第をミクとアスカに話しました。


「へえ、いいんじゃない。茜ちゃんなら任せられるよ」


「そうだね。学校中の人材、知ってるもんね」


あら、あっさりと…



「よし、みんな集まったな。

詳細は昨日話した通りだ。

我らの主は、ルナ・ミク・アスカの三人だ。

主の治める領地を発展させ、かの地のトップとなることが目的だ。

いくぞ!」


「「「おー!」」」「「はい」」


知ってたよ。茜ちゃんのあげた4人は、こういうノリのいい人たちだって…

せかされて転移します。


実は昨日、茜ちゃんに連れられて残りの3人に声をかけたあとで、告白?されたんだ。


「実は、私は生徒会長になりたかったわけじゃないんだ。

私は、トップに立つ人間ではない。そういう、包容力とか、人間的魅力が欠けているのは自分が一番わかっている。」


「そんなことはないんじゃないの。

現に今だって、3人共即答だったし」


「あいつらは、自分を輝かせてくれる人間を求めているんだ。

そして、私にその力があることを知っている。

だが、私には実務能力があっても、求心力はない。

トップに立ってくれる人間さえ見つかれば、私はその下で最高の手腕を発揮できる。

その自負があるからこそ、お前と宇佐美の話に割り込ませてもらった。

ルナが私を苦手と感じているのは分かっている。

だが、頼む。私を信用してくれ」


「うん、分かった。

茜ちゃんに全部任せたからね」

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