第2話、税金…備蓄金…、ああ、もうわかんないよ
私立向日葵咲いた高校3年G組。
立花美玖、吉川明日香、中田瑠奈。
成績、容姿、運動神経、すべてが人並み程度で特技なし。
そんな3人が、ふとしたはずみで異世界の貴族の地位を相続することとなった。
この世界の貴族は、王の直系である王族と、領地持ちの伯爵と伯爵の庇護下にある男爵の3種類しかない。
今回、養子縁組の届け出が受理され、ミク・ジャム、アスカ・ジャム、ルナ・ジャムがジャム家3姉妹として誕生したわけである。
先代の他界により、ミックスベリー・ジャム伯爵位は空位。故ストロベリー・ジャム伯爵夫人位の候補としてJK3人が名を連ねている状態である。
税金さえ上納すれば結構融通がきき、原則3年以内に婿をとり伯爵位を埋めれば問題ない。
ただし、現時点での3人は時給2000円のアルバイトであった。
「それで、区長会議によると税の徴収が思わしくないと・・・」
私たち3人は、セバスチャンと一緒に経理役から報告を受けていた。
「ええ、確かに今年は冷夏で農作物の収穫量が例年の2割ほど落ちるのは分かっていたのですが、各区で何の対策も行っていないようなのです。
天候不順によるものだから、不足分は徴収免除の申し入れを行ってくれと」
「それは可能なんですか?」
「備蓄をすべて吐き出して、それでも足りない場合の最終手段ですね」
「収穫量の予想は?」
「各区共に3割ほど落ちると・・・」
「具体的な数字は?」
「先代の方針で、各区長の裁量に任せています」
「じゃあ、領主として各地区の実体は把握できていないってことですか?」
「はい。いままでその方法で問題ありませんでしたので・・・」
「この家の資産は、どれくらいあるんですか?」
「・・・金貨にして2万枚が常蓄されておりまして、年間の収支はだいたい金貨20000枚で運用しております」
「上納する税金はいくらなの?」
「人頭税ですので、一人金貨2枚。領地全体で1万2千人ですから2万4千枚になります」
「あら、以外と安くない?」
「領主は税金を治めるだけで、国が何かしてくれる訳じゃありませんからね。
税金は王都内で使われますが、還元される事はありません」
「うーん・・・じゃあ、金貨2万枚は備蓄から回せるとして、4千枚徴収できれば今年の上納は問題ないって事ね」
アスカとミクは金銭面ではあてににできない。
ただ、高校生でも分かる・・・金銭の管理がまったくできていない。
どうしよう、やっぱり誰か応援を頼まないとダメかな。生徒会の会計さんとか・・・
「資産の照合をしますから、台帳を出してください。
それから、収支の記録もお願いします」
「今からですか!」
「当然です。土日に済ませないと、月曜は学校ですから」
「・・・はい、用意いたしますので、少しお待ち下さい」
30分後、経理役の姿は領主館から消えていた。
執務室の金庫にある約5千枚の金貨はそのままだったが、地下の金庫室にある筈の1万枚は見あたらず、残りは貴金属類や穀物類だった。
「セバスチャン、すぐに経理役を捕らえるよう手配してください!」
「はい!メリー、区長に連絡を!」
「えっ?警察とか兵士とかじゃないの?どういうこと?」
結論からいうと、領主はただの飾りでした。
ジャム伯爵領は12の地区に分割され、それぞれが区長により自治されています。
1区から4区までは、直轄区とされており、課税対象の10才から50才が各2000人暮らしています。
このエリアの税金は、一人あたり金貨3枚で、そこから金貨1枚が国への税金となります。
金貨1枚は区の運営資金になり、残りの1枚が領主と区長の収入となります。
領主は4区合計で2千枚の収入となり、その半分を積立金として貯蓄し、災害復旧などに充てます。
「じゃあ、行政的な役割は区長に任されており、区民からの預かり金である備蓄金のうち、半分が消えてしまったって事ね」
「そうなります。
申し訳ございません。私は政治的な面はノータッチでしたので・・・」
「それで、区長の選出ってどうやってるんですか?」
「表向きは領主の任命ですが、実質は世襲になっているようです」
「もし、強引に区長を解任したらどうなるかしら?」
「区長は私兵をもっていますので、下手をすれば内乱かと・・・」
「もう!こんな状態で、何をしろっていうのよ!」
トントン、執務室の扉がノックされた。どうぞと応じるとメリーさんが入ってきた。
「失礼いたします。
バンドル男爵様がお見えです。
下の応接にお通ししておきましたが、如何いたしましょうか」
「あれっ?何コレ?」
メリーさんの足下に”心の声”ってボタンみたいなものが表示されていた。
これって、ゲーム的な感じだよね・・・ボタンに指を重ねてみた。
『まったく、あのブタ男ときたら、毎回毎回、胸ばかりガン見して・・・
キモイし、臭いし、いいかげんにしてほしいわ・・・』
そういう情報が頭の中に流れ込んできた。
これって、もしかしてチートとかいう・・・
アスカも何か指で操作しながらキョロキョロしてる。
ミクは・・・いつも通りぼんやりしていた・・・
「バンドル男爵、お待たせして申し訳ございません。」
「いや、突然押し掛けて申し訳ない。
税金の関係でアドバイスできればと・・・」
表向きの口上は、各区長が備蓄している備蓄金を引き当てて税を納めるよう指示してはどうか。
男爵も各区長に働きかけるというもので、1区から4区は領主が備蓄しているので、そこから出せば問題ないだろうというものでした。
『せっかく伯爵夫妻を葬ったのに、なんでこんな小娘が割り込んだ来るんだ。
だが、金貨1万枚が無ければどうにもならんだろう。
泣きついてきたら、貸してやらん事もないが、逆らうようなら区長を焚きつけて責任を追及し、罷免させればいい』
そんな事を考えていました。
三人とも胸は小さいが、それくらいは我慢してやろうとか・・・冗談じゃないわよ。
経理役の潜伏先と金貨の隠し場所も分かりました。
何だか、この能力って・・・人間不信に陥りますよね。
すぐに、セバスチャンに連絡して経理役の身柄を確保し、金貨を押収しました。
その夜、セバスチャンも退室してもらい、執務室で3人だけの内緒話です。
「という訳で、見たくもない本音を見られる能力ができたわ。
でも、これで当面の納税は問題ないわ。
アスカとミクも何か能力が見つかったみたいよね?」
「私は鑑定眼を授かったわ。
こっちの価値と地球での価値が両方金額で表示されるの。
何を持っていけば高く売れるのか、何を持ち込めば儲けられるか一目で分かるわ」
「それ・・・羨ましすぎよ。ミクは?」
「私は味の記憶だって。
例えばこのクッキー、食べるだけでこっちでの材料と作り方が表示されるの。
それから、地球で同じものを作ると、何で代替えできるのか分かるわ。
でも、私・・・料理自信ないんだけど・・・」
「別に、自分で作る必要はないでしょ。
誰かに作ってもらえばいいんだからさ」
「でも、これってあっちでも使えるのかな?」
残念ながら能力は地球では使えませんでした。
でも、鑑定眼は百均で色々と購入して持ち込めば確認できますし、味の記憶は向こうで食べたものを思い出せば表示されます。
笑っちゃったのは猫です。
校舎の裏に棄てられていたんです。
3匹の子猫が。
ミクが向こうで飼おうよって言いだして、連れて行ったんです。
それをアスカが鑑定したら、金貨200枚とか表示されて、1000万円!って驚いたんですが、セバスチャンによるとこの世界では愛玩動物ってウサギとか小鳥程度で、ネコや犬ってイメージがないらしいんです。
貴族に紹介すればそれくらいの価値になるだろうって・・・売りませんけどね。
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