&α
「というわけで、退院しました」
「あの。ええと。おめでとうございます」
「全ての力を。病を治すことに使いました」
「うん。外傷性脳損傷で一ミリも頭動かせないのに、がんばりました。えらいです」
「どうやってがんばったか、しりたい?」
「しりたくないです」
「おととい。あなたに告白してから。覚えてますか」
「覚えてないです。思い出してないです」
「うそだ。覚えてるくせに」
「なんのことでしょうか。にほんごわかりません」
「どうせ外傷性脳損傷でしぬなら、あなたに揺さぶられてしにたかったのに。あなたが拒否するから」
「し、しらない、です」
「わたしは。まる二日間。ひとりでしませんでした」
「もうやめて」
「ひとりで。しませんでした。いいですか。それのおかげでいま退院できました。パワーを全て治すことに注ぎ込んで。動かずに。しませんでした。その結果、しにませんでした。しなかったからしななかったの」
「もうやだ」
「あなたにはもう拒否権がありません。よろしいですね?」
「はい」
「私はあなたのことが好きです」
「はい」
「あなたはわたしのことが?」
「くそっ」
「わたしのことが?」
「好きですよ。ええ。好きです。大好きですから」
「やった。嬉しさで卒倒しそう」
「退院直後に卒倒再入院は勘弁してくれ」
来ない明日、思い出す昨日 春嵐 @aiot3110
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます