第44話 夢と真実と不思議な世界、そして僕は恋をする
贄の仕組みを壊そうとする物に力を与える
見知った台地、見知った建物。たった一つ違うのは僕が概念として存在しているということ。
この場所は水のような場所、エネルギーが水のように満ち溢れ世界を構成する植物が母のように浸っている。人間として自分の意志で生きていると思っていたが、その意志は上位の存在によって操られていることを知った。
言うなればゲームのキャラクターがプレイヤーによって操作されて動いていることが自分の意志で動いていると思い込んでいるようなものだ。それに、ゲーム世界のように自分たちの認識できる範囲だけ感覚がつくられ不要な場所は消えていく。
そんな世界を維持するためだけに僕のような鍵、『かみのよななよ』のような神が作られ
何者だかは分からない。人間がモルモットを実験台にするように僕たちの世界で実験しているのだろうか。『ヴォイニッチ手稿』、別世界で書かれた文字が現世で識別できるはずがない。しかしそれは人間が認識できる世界に垂らした一本のクモの糸なのかもしれない。
人間の世界を統べる神とひとつになった僕はさまざまなことを理解した。ただひとつ分からないことがある。……それは亜巫の存在。
もし、亜巫が22枚の
それでも僕たちは自分の意志だと思って必死に生きている。僕はただ祥奈や美佳を救いたかった。神になりたかったわけでも、神の力を手に入れたかったわけでもない。
僕はこの世界を統べる概念になった。何千、何万、いや人が勝手に決めた不完全な『数字』という概念では表現できないほどの世界が動いている。僕が高校生まで生きてきた世界はその中のたったひとつ。美佳と恋人になった世界もひとつしかない。
僕の今の幸せは、祥奈と結ばれる世界と美佳と結ばれる世界にいる謙心という意識に入り込んで幸せを感じることだけ。数多の世界には同じ人間が住み、同じ寿命を全うする。ちょっとした違いが加えられているだけで大きく歴史も変化する。
そんな僕がエネルギー源となった世界を何度も繰り返す。僕は彼女たちとの恋愛に口出しはしない。謙心という人間の判断に全てを委ねその幸せを享受する。高校を卒業し大学、就職、結婚、子育て、老い……。あのとき祥奈や美佳と作った子供は概念としてここに存在している。
僕のエネルギーが尽きた時、新たな
今度は僕が那奈代や三花となって次世代のエネルギー源を導く必要がある。こんなことはいつかは止めさせたい。でも、いくら僕がわめいたところで変える事なんてできない。人間なんて……人間の存在を統べる僕たちが
しかし、どんな境遇であっても構わない。人間たちはどんな状況であれ必死に生き、子供を作り、幸せに向かって進化しているのだから。例え、それが作られたものであっても……知らなければ……目に見えなければ悲観することなんてない。
そう、ぼくも謙心として祥奈と美佳との幸せだけは作っていきたい。那奈代や三花が世界を好きにいじったように、僕もその力があるのだから。
『かみのよななよ』の一部として、小さなエネルギーとして存在している謙心の意識に入り祥奈と美佳と過ごす人生を楽しみ、那奈代や三花の姿を借りて観察する。
そう、次世代に引き継ぐまでは鍵の子孫に試練を与え、解決する道筋を作り力を蓄えさせて時を待つのだ。
祥奈、美佳、役割を終えても一緒だよ。たとえ無になったとしても……
そして僕は恋をする。いつまでも……いつまでも……
────END
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『 夢と真実と不思議な世界、そして僕は恋をする』最後までお読みいただきましてありがとうございます。ウルフリッドの世界で遺跡を探す旅路も描こうかと思っていたのですが、今までの雰囲気にそぐわなそうなので思い切ってカットしました。
最後の2話はかなり詰め込んだので分かり難い部分もあるかとは思いますが、ニュアンスだけでも捉えて頂けると嬉しいです。
イメージ的には人間の世界は物理的には存在しないというイメージです。それ以上のことはご想像にお任せいたします。
最後までお付き合いいただきました
秋桜@揚羽様 :https://novelup.plus/user/596363613/profile
えねるど様 :https://novelup.plus/user/734124401/profile
たまひよ様 :カクヨムにて。執筆はしておらず(URL省略)ありがたい反応を頂ける方です。
には本当に感謝です。
改めて設定集なども紹介できればと思います。最後まで本当にありがとうございました。
2020.12.20 彩羽 心(いろは こころ)
夢と真実と不思議な世界、そして僕は恋をする ひより那 @irohas1116
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