「職人たち」

今日もTさんから聞いた話を書いていく。因みに、Tさんは何故か車の中でよく怖い話を聞かせてくれるのだけど、オチを「それが、今通ってるこの道なんだよね」にするのはやめてほしい……こわい……。今回もそんな感じです。


Tさん……ドドドドS。化粧箱みたいにコロンとしてる可愛い車を運転している。眼鏡もコンタクトも似合う。

k  ……私。MでもSでもない。居眠り運転しそうで免許が取れない。眼鏡のお世話になったことがない。


Tさんがよく使う道の一つに、産業道路がある。補修工事などは行われてはいるものの、かなり古くからあるそうで、Tさんには今はない古い工場で働いている職人さんたちの姿が時折見えているらしい。

「昔の職人さんのイメージってさあ、kちゃんはどんな感じ?」

「頑固一徹で頭にハチマキですね」

まさにそれ。とTさんが頷いた。私はまさか、とペットボトルのお茶を飲んだ。

「あは、今察したでしょ。ここいるんだよね」

私は助手席で死んだ。そういう不意打ちはやめてほしい。

「まあ、お察しの通り、頑固な職人さんたちは作ったものを生中な気持ちで使われたり、触られたりするとさ」

「怒りますね」

今日もおびえ方がかわいいね、とにこにこのTさん。私は頑張って近くの工場を見ないようにしていた。

「そうそう。それで触るな!って言うんだけど、私以外見えないし聞こえないのね」

みんな車だし、聞こえてない人のが多いからねえ、とTさんは笑った。

「まあそうですよね」

「それで、見えてて聞こえてる私の方に」

「来るんですか!?」

「いや? 来ないよ」

むせかけた。

「ただ、怒鳴るからさー。それがちょっと怖くって」

人の怖がるものってほんとに違うんだなー、と私はアスファルトの隙間に生えたよくわからん雑草が後ろに流れていくのを眺めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

寺生まれじゃないTさん @tunasi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ