タブロイド・ブルース~川崎シュージのジャーナリズム~

ありキャノン

#0「理想×現実、情けない俺は胸を張る」

 真実はこの世に隠されている。

 そんな言葉を聞いたことがある。

 いうなれば、カッコつきの宇宙で、「ホンモノ」と書かれた袋の中に価値のありそうな砂を詰める、そんな気の遠くなるような作業を俺はしていた。


 新聞社を辞め、晴れてフリーのジャーナリストになった俺は、自分の興味の赴くままに好きなものを取材し、好きなように記事を書き、好きな媒体で記事を発表……とまではいかず、明日に食つなぐためにろくでもない雑誌に寄稿する日々だ。

 会社勤めの頃とは何もかもが変わった。

 「夜討ち朝駆け」と騒ぎつつも、SNSを探索する毎日を過ごし、興味のわかない取材に飛ばされては、すっからかんの記事を書く毎日……。

 たまに攻めたことを書こうものなら、社風だとかブランドだとか、そんなくだらない「お決まり」の壁につぶされていく。

 そんなつまらなく、「ワクワク」しないものに手を振った俺は、「ドキドキ」の止まらない極貧生活に頭を悩ませている、という情けない状況でもがいているというのがこの世の残酷な真実だ……。

 

 しかし、下らん仕事に忙殺されていた頃には想像もつかない世界が俺を待っていたというのもまた事実。

 好きな時間に時間に起き、好きな服を着て、好きなだけ愛車を乗り回せる。

 「神にでもなった気分」とまではいかないが、少なくとも「生きている実感」みたいなものを感じられるようにはなった。 


 大丈夫だ。

 何も心配する必要はない。

 こんな時こそ胸を張り、クールに生きろ。

 俺は、俺だけの被写体を……ッ!


 勢いよく愛車のアクセルを踏むと、スピードを失った世界が「ガス欠ですよ」と俺にささやく。

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