涙華さまと3人の天使と界魔カフェ

「ここ、どこ?」


結は、不安げに辺りを見回した。

無理もない。さっきまで森にいたのに、どこかの路地裏まで移動していたんだから。


「もうすぐで、俺らの働いてる界魔カフェに着くよ!」


「結ちゃんが前世に働いていたカフェなんだけど、覚えてる?」


『私が前世で働いていたお店』っていうことに、ピンっとは来なかった。


「それって、本当に私なの・・・・・・!?」


「結ちゃん、少しの間目をつぶっていてくれる?」


と言って、双子は声を合わせて続けた。


「3・2・1 。界魔カフェにいらっしゃい!!!! 」

「3・2・1 。界魔カフェにいらっしゃい!!!! 」


さっきまでの景色とは、打って変わって、目の前にキレイなカフェが拡がっていた。


木の温もりや匂い、珈琲の匂い・・・・・・。


結は体の奥から疼くように『懐かしい』と感じたが、思い出すことは出来なかった。


困ったように2人を見上げたら、カフェの扉が開く音がし、イケおじが中に入ってきた。


「おかえり、魎さん!!!!」

「おかえり、魎さん!!!!」


どうやら、あの人が魑明くんと鬽闇くんの会話に出ていた『魎さん』という人らしい。


「おう、ただいま!」


と2人に挨拶をし、何も無い方向に向かって


「狐神、お前に用は無い。本来、居るべき場所に戻れ。」


と言った。


「・・・・・・、さすが我が甥。即座にバレてしまったのか。」


という声が聞こえ、1人の老人が姿を現した。

あからさまに、残念がりながら扉から外に出ていった。


イケおじの魎さんは私の方を見た。


「お待ちしておりました、涙華さま。」


「あのう・・・・・・。人間違えじゃないでしょうか?私の名前は結なんですけど・・・・・・。」


「いや、間違えじゃない。あなたは昔、ここでオーナーとして働いていた。」


「けど、私、前世の記憶とか全然無いですし、魑明くんたちにあるような翼なんて無いし・・・・・・。」


「あぁ、その点なら問題無い。」


魎さんは、右手を胸に当てて呟いた。

『夜桜の舞!!!! あの子に聖なる翼を授けよ!』


結はその言葉を聞き、体中に光がまとわりつくのを感じた。


その光が止み、目を恐る恐る開け鏡を見てると、自分の背中にも翼が生えているのが見えた。


「・・・・・・!?!?!?!?」


自らの背中の変化に結は驚きを隠せなかった。


「まだ、生えたばかりで扱いに困ることもあるだろうが、しばらくすると慣れると思う。」


魑明と鬽闇が、しきりに『結ちゃんの翼、俺らよりも綺麗じゃん』と騒いでいるのが感じた。


イケおじは困ったように笑いながら


「君が今すぐ過去を思い出さないのには理由がある。その時が来れば、自然と思い出すはずだ。」


「あ、あの!この背中の翼は、なんですか!?」


驚きを隠しながら、結は問うた。


「あぁ、それか。この世界に来た2月29日生まれのヒトには、天使の役割が自動的に与えられるんだ。」


「な、なるほど・・・・・・。」


「お前が記憶を取り戻すまでの間、ここで働いてもらう。ここ、界魔カフェは、お前がさっきまでいた“現世”と“天上界”を繋いでいる扉の役割だ。そして、俺たちの仕事はその扉を通れない人の悩みや後悔を解決することだ。」


「わかりました。今日から、よろしくお願いいたします!」


「おう!いい返事だな・・・・・・!!!!ところで、急なんだが。お前の“現世”で悩みや後悔はあったのか?」


私の悩み・・・・・・?それは・・・・・・


「私の悩みは、家族と仲良く暮らしたかった・・・・・・というものです。」


「聞いたか、お前ら!涙華さまの願いだ!家族のように仲良く過ごすことを忘れるなよ!」


「りょーかい!」

「りょーかい!」


2人は大きな声で返事をした。


「俺が、結ちゃんを幸せにするからね!」


「あ、抜け駆けするな!ずるい!!!!僕も結ちゃんのこと幸せにするからね!!」


「抜け駆けも何も無いだろ!みんなで涙華さまを幸せにすればいいだけだ!」


結は、3人の天使を眺めこれから始まる賑やかな生活を想像した。


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界魔カフェ 1号店 天昶狗神 @amano_inunokami

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