第4話 はじまり
コンクールが終わり控室に向かう途中、緊張なのか疲れなのかわからないが手がすごい震えていた。ただ、ものすごい達成感に浸かることができたし思っていた以上にいい演奏が出来たので最後にいい思い出ができてよかった。
私服に着替えて外の掲示板に貼られている結果を見に行くと自分の名前が上位に入っていた。初めて上位に入れたのでもの凄く嬉しかった。掲示板の前から離れてガッツポーズをしていると後ろからわぁ!っと言って押された。
「お疲れー!凄くよかったよ」
押してきたのは涼香だった。
「ありがとう、思い通りに弾けたし上位にも入れたからよかったよ」
「すごい楽しそうに弾いてたもんね」
「うん、楽しかったよ」
「あのさ、昨日言おうとしてた事だけど」
「なにを言いたかったの?」
「実は、私海斗の事好きかもしれない」
「え、」
唐突すぎて一瞬理解が出来なかった。ずっと口が半開き状態だ。
「ごめん、急だったよね」
「あ、いや、一瞬理解が出来なかったから」
「そうだよねー、仕方無いよね。まぁ付き合うとかは今は置いといてこれからもよろしくね!」
彼女は笑顔で言った。
「うん、これからもよろしくね」
母親は先に帰っていた。帰りは彼女と一緒に今日の事を話しながら帰った。家に着いて靴を脱いでいると母親がお疲れ様とおめでとうと言ってくれた。ありがとうと返事をして部屋へ行き荷物を置きリビングで久しぶりにゆっくりすることができた。
夏休みが明け2学期が始まった。気温も少しずつ涼しくなってきた。もうすぐ秋がくる。今年の夏はいろんな体験が出来た。とても充実した夏休みを送れて全てが楽しく感じる。
「よお、海斗。久しぶりだな」
改札を抜けるとそこに健斗がいた。
「おはよう」
健斗と並んで学校まで向かう途中で涼香も後ろから走ってきた。
「おはよー!」
涼香が後ろからぶつかってきて転けそうになったがなんとか転けずに済んだ。
「朝から痛いな」
「へへ、ごめんね」
彼女は少し舌を出して言った。
「相変わらずラブラブで〜」
横から健斗が茶化してくる。
「そんなんじゃ無いよ!」
恥ずかしくて全力で否定した。
「ひどいよ海斗君。私がいる前でそんな事言わないでよ」
「あ、ごめん」
最近はいつもこんな感じだ。涼香とはあの告白から何一つ変わってない。言うならば友達以上恋人未満みたいな関係だ。
いつもみたいに体育館で校長先生や他の先生の話しを聞き教室で夏休みの課題を提出して担任の先生の話を聞いて今日は終わった。帰りは行きと同じように3人で帰った。こんな事が出来るのもあと半年しかない。高校を卒業したらみんな違う大学に入学する予定なのでばらばらになってしまう。だから今のうちに出来る事をして思い出を増やしていこうと心の中で誓った。今しかない高校生活を思いっきり楽しまないと。もちろんピアノは続けていくつもりだ。ピアノに関してはまだまだだからもっと頑張らないと。そしてピアノで沢山の人を楽しませたり感動させることの出来る人になれるようにこれからもずっとどんな事があってもピアノを弾き続けていく。それが僕の唯一の夢であり生きがいなのかもしれない。次は音楽教室の生徒として舞台に立つのではなく1人のピアニストとして舞台に上がれる日を夢見て...
ピアノに捧げる青春 fumi @fumi2309
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