第6話
山へ向かう車内。
急勾配な上り坂に頭がキーンとなる。ドライバーは佐藤先生。
今日は明日が土曜日だからと言う事で入学して初の課外授業に来ています。
一応今日から泊まりがけで課外授業とは聞いてたけど、何をするとかは何一つ教えられていない。口止めされているのか、先輩達は何も教えてくれない。
『読心術』を使って探る事も出来るけど、辞めておいた。
せっかくなら楽しみたいしね!
「それにしても結構山登るんですね。私たち山籠りでもするんですか?って思っちゃうほどです。」
「そーよねー。船で本土まで来て、そこから車でもう1時間だものね。私も去年同じ事思っちゃったわ。でも、そろそろ着くわよ。ひーちゃん起こすの時間かかるから起こしてくれる?」
昼休みに入ってすぐに学校を出て佐藤先生が船主で本土まで来て、佐藤先生がドライバーの車に乗って既に1時間。
佐藤先生って免許いくつあるのってのは、もはや驚かない。
てか、気にしたら負けだ。
私は素直に水琴くんを起こすことにする。
「水琴くーん、起きてー?もう着くみたいだよー。」
……って起きるわけないですよねー。
体を揺さぶったり、頬を軽く叩いたりしてみたけど全然起きない。
いつも思うけど、こんなに起きないとどこまで起きないのか試してみたくなる。
普段だったらこんなにテンションは高くないんだけど、やっぱり課外授業の影響か少しいつもよりテンションは高め。
だからこんな事やっちゃうよね。
言い訳はこのくらいにしとくか。
まぁまずは王道で
「ご飯だよー、起きてー」
「……んえ?飯?」
一堂先輩が起きた。
「ぷっ!あはははははっ!理樹ってば最高過ぎ!そんなので起きる人普通いないわよ!はー、お腹痛い」
椎名先輩がお腹を抱えて大笑いしている。
まぁ何というか……
起きるかもって予想して言ってはみたけど。ここまで、想像通りだと反応に困るよね……
しかも起こしたい水琴くん本人は全然起きてないし。
いやまぁ、この起こし方で起きるのは確かに一堂先輩だけか。
さて、気を取り直して次いきますか。
「わー、あんなところに巨乳美女のお姉さんがいるー。」
嘘である。
こんな山奥に居たら逆にびっくりだよ。
でもちょっとこのナレーションもやってみたかった。
………
誰も起きない。
てっきり紅先輩は起きると思ってたのに。さすがに、一堂先輩ほど残念ではないか。
ちなみに寝てるのは水琴くん、一堂先輩、紅先輩の3人。
千歳先輩はイヤホンで音楽を聴いてるし、椎名先輩と一堂先輩はさっきから言い合いをしてる。と言っても一堂先輩が一方的に椎名先輩にからかわれているだけだけど。
そろそろさすがにふざけた起こし方は辞めとくとしますか。
遊んでたら着いちゃうしね。
私は目を閉じてあるものを取り出し、思いっきり叩いた。
バーーーーンッ!
「うわぁ!な、なんや!?」
紅先輩が飛び起きた。
紅先輩はバッと後ろの方を振り向き、私の方を見て目を見開いている。
「ちょっ、杏奈ちゃん何もってるん!?」
「シンバルです。そろそろ着くらしいので、起こそうかと思いまして。」
驚く紅先輩に冷静に返してみる。
「シンバルです、って……淡々と言われてもなぁ。起こすのにシンバル使うとか、マンガでしかないで?」
その通りで。
私にふざけた起こし方を辞める事は出来なかった……!
だって楽しいんだもの。
千歳先輩はイヤホンしてるせいかそこまで驚かなかったみたいだし、椎名先輩と一堂先輩は驚いて言葉が出てないみたい。
まったく、面白い先輩達を持って私は幸せ者だな!
佐藤先生は全然驚いた様子がない。もしかして予想してたのかな?
本当は少し先生の驚いた反応を見てみたかった。
だからといって、驚いて急ハンドルされても困るけど。山道ですぐ崖だし。
そして、本命の水琴くんは……
寝てるーー!
これでも起きない水琴くん、恐るべし。
え、コレ本当にどうやって起こせば良いの……?
「それにしても起きないわねー。ひーちゃんって寝るの大好きだから理樹みたいにいかないかしら?あーあんなところに羽毛布団が〜なんちゃって?」
どうやら椎名先輩も同じ事を思ってたらしい。
水琴くんの頬をつんつんしてる。
可愛い。
「そもそもシンバルすら聞こえてへんのやし、そんなの聞こえるわけないよなぁ。」
「いっそのこと1発思いっきり殴ってみたら良くね?」
「一堂さんみたいな力加減の知らない人に殴られては水琴さんが不憫ですね。」
全員でわいわい水琴くんの起こし方を考えていると、ついには目的地に着いてしまった。
「とりあえず、仕方ねーし俺が部屋まで運んで……」
「着いた……」
一堂先輩が言いかけている途中で普通に起きた。
しかも、寝ぼけてる様子も一切ない。
「ねぇ、水琴くん。もしかしてずっと起きてて狸寝入りしてた訳じゃないよね?」
「え?……えーっと、皆んな…わいわいしてた…から…なんか…起きなかったら…どんな反応するかな…って。」
つまりは私達が頑張って起こそうと四苦八苦してたのを楽しんでた訳だ。
前々から思ってたけど、水琴くんっていたずらっ子だよね。うん。
「ちなみに、どの辺から起きてたの?」
「シンバル…鳴った…くらい?僕も…寝ちゃいやすい…だけで…普通に…シンバルは…起きるよ。」
結構早かった。まぁさすがに起きるか。
てか、あんな爆音で瞬時に私達にバレないくらいの寝たフリ出来るとか相当の演技力だよね。
「ほらほら、もう着いてるんですから皆さん降りてください。」
佐藤先生が手を叩き、私達に降りるよう促す。
さてさて、結構時間かかったけど、どこに来てたのかな?
車から降りると目の前は……
「寺?マジですか……」
遺伝子が強すぎた件。 小倉 唯 @ogura_yui
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。遺伝子が強すぎた件。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます