第5話
次の日の昼休み。
さすがに昨日の今日で下駄箱に手紙は入っていなかった。
「ねぇ、あーちゃん。もしかしなくても、それって手作りのお弁当?」
いつもと違うのは昼休みに椎名先輩が私の教室に来てるって事くらい。私をSクラスにスカウトしに来た日以来じゃないかな?
それより、さっきからずっと私のお弁当をじっと見つめてくるんだけど。
パン持ってるのに。
「え、えーと、ひと口食べます?手作りだから美味しい保証はしませんけど……」
「え、良いの?食べたい!」
あー、目をキラキラさせて……
眩しすぎるよー。ほら、クラスの男子とか皆んな机に突っ伏してるよ。ノックダウンさせちゃってるよ。
「はい。あー」
椎名先輩が目を閉じて口を開けている。
これは、あーん、しろって事かな?うん、とりあえず可愛い。写メりたい。
「分かりましたよ……はい、あーん。」
「……っ!美味しい!私、甘い卵焼きって大好きなのよね〜。料理上手なんて、あーちゃん良いお嫁さんになるわね。私、立候補しちゃおうかしら、なんてね。」
そう言って椎名先輩はウィンクをした。
つい1ヶ月前まで中学生だった男子には刺激が強すぎる……
これ絶対、男子全員椎名先輩のファンになっちゃったよ。
女の私でも心臓が保たない!
ん?でも、椎名先輩男だから男女関係では合ってるのか?逆転しちゃってるけど。
あーあー幸せそうな顔しちゃって……そんな顔見ちゃったらもう後戻りなんて出来ないじゃん。
「お口に合ったようでなによりです。良ければ明日から先輩の分のお弁当も作りましょうか?1人分も2人分も変わりませんし、なにより毎日パンなんて栄養偏りますよ。お肌にも悪いですし。」
どうせなら、水琴くんにも作ろうかな。寝てるところは見たことあるけど、お昼食べてるところは見た事ないし。
朝は遅刻前提なのかゆっくり朝食べてから来てるけど。
「あら、やだ、何この子。良い子過ぎるじゃない。せっかく作ってくれるなら頼んじゃおうかしら。学寮棟って歩いて30分はかかるじゃない?こっちで食べちゃった方が楽だったのよね〜。」
「分かりました。なんかメニューでリクエストあったら教えてくださいね。」
そこで私は一呼吸置いた。
さて、そろそろ本題にいくとしますか。
「それで、先輩。どーして突然私の教室に来たんですか?いつもは自分の教室とかで食べてますよね?」
「んー?あーちゃんと食べたい気分だったのよ。」
椎名先輩はニコリと笑う。
その笑顔がウソだって物語ってるんだよなぁー。
普通だったら、そんな事聞かれたらビックリした顔をするだろうし。まるで、コレを聞かれると分かってたみたい。
「わざとウソだって分かるようにしてるのバレてますよ?正直に白状してください。」
「あらら、バレちゃったものは仕方ないわね。頼まれたのよ、ひーちゃんに。自分は朝と昼は寝ちゃってて一緒に居られないから代わりに守ってあげて欲しい、って。昨日の事も全部聞いた。あ、もちろん、紅ちゃんには言ってないわよ?」
水琴くんいつの間に……
もしかして昨日の帰りずっと黙ってたのはこの事を考えてくれてたのかな?
男の先輩達に頼んだら余計に敵を増やすけど、皆んなが女だと思ってる椎名先輩ならずっと一緒にいても違和感はない。
きっと色々配慮して考えてくれたんだよね。後でお礼言わなきゃ。
でも、いくら私が紅先輩には言わないでって言ったからって椎名先輩に喋ったのはデコピンするとしよう。うん。
それに椎名先輩にもお礼言わないとね。
「椎名先輩、ありがとうございます。お弁当、精一杯作りますね。残したら許しません。」
「こちらこそ。あーちゃんの手作りを残したりしないわよ〜。これからよろしくね。」
Sクラスに勧誘された日は本当に面倒な事になったって思ってた。
能力の事を隠したくても周りが能力を使っていれば釣られて使っちゃうかもしれない。
そんな不安もあった。でも、実際入ってみると、個人は尊重してくれるし何より『異端者』である私にも普通に接してくれる。
私この学校に来て本当に良かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます