第6話:没落・ルイジア公爵ローザ卿視点

 私には信じられない事でしたが、ミルバル皇国の皇帝リバルは、姪のルレナとその私生児を助けるために、ボザン王国に大軍を派遣しました。

 ラアス皇太子と反目している状態では、恐ろしく危険な事なのですが……

 ですがその結果は劇的で、多くのボザン王国貴族がミルド国王を見放し、ミルド国王は魔法薬で回復したゼフラ王太子に殺されてしまいました。

 義理とはいえ国王の父親を殺すとは、冷酷非情と言うべきが、馬鹿と言うべきか。


「公爵軍の半分を残していく、後の事は頼んだぞ、エンナ、ラリス」


「「はい、お任せください、姉上」」


 長妹のエンナと次妹のラリスが力強く返事をしてくれます。

 この好機を見逃すわけにはいきませんし、内乱を拡大させて、民に塗炭の苦しみを味合わせる事もできません。

 ラアス皇太子が反乱を起こしてリバル皇帝を弑逆し、皇国軍が慌てて帰国しているこの時に、民の蜂起で混乱する王都を占拠しなければいけません。


「密偵の報告では、私生児のゼフラは民に皮を剥がれて殺されたとの事です。

 売女の王妃も、下層民に繰り返し凌辱されて殺されたとの事です。

 王都は地域ごとに支配者が違い、互いに激しく争っているそうです」


 エンナが密偵が集めてきた情報を教えてくれます。


「その話は聞いたが、影武者という事もある。

 万が一奴らに逃げられたら、皇国が旗印に使う事もある。

 みな油断することなく、ゼフラとルレナが生きて隠れているという前提で、虱潰しに王都を捜索するからな」


「「「「「おう!」」」」」


 将兵が気合を入れて返事をしてくれます。

 私が王都を占拠し、女王に戴冠すると思っているのでしょう。

 本意ではありませんが、そうしなければいけないのでしょうね。

 ラアス皇太子と交渉するにしても、ラアス皇太子を討ち取って皇国に実権を握った誰かと交渉するにしても、ボザン王国を支配下に置いておく必要があります。


「王都まで駆けるが、馬を潰すなよ。

 私が休憩しなくても、馬が疲れたら替え馬に乗り換えるんだぞ」


「「「「「おう!」」」」」


 王城は国内貴族が争って焼け落ちたという事ですから、生き残った貴族と暴徒を殺せば王都は簡単に占拠できるでしょう。

 早期に王城の再建するのは不可能ですから、王都の城壁や城門が破壊されているようなら、戴冠宣言をした後で我が領都に遷都するのも一つの方法です。


 さて、問題は王城から逃げて領都に籠っているというエリル侯爵です。

 ゼフラとルレナが生きて一緒にいれば、必ず殺さねばなりません。

 奴がラアス皇太子が支配している皇国に逃げ帰らないのは、自分が許されないと考えているからなのか、それともゼフラとルレナが一緒にいるからなのか?

 逃げ道を塞いで取り押さえ、拷問して真実を吐かさなければ!

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婚約破棄と言われても、貴男の事など知りません。 克全 @dokatu

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