第5話:宣伝戦・ルイジア公爵ローザ卿視点
私は護衛の側近と共に領地に戻りました。
腐りきって、鼻が曲がるほど悪臭を放つ王都になど長くいられません。
それに、分離独立を宣言した以上、領地を接する国や貴族の侵攻を覚悟しなければいけませんから、私が戻って公爵家の軍勢を指揮しなければいけません。
二人の妹は優秀ですが、血臭に満ちた戦場を任せるにはまだ若いです。
「姉上、しばらくは魔境の浅場で狩りをしていただきますぞ。
王家に喧嘩を売るのなら、前もって相談してもらわねば困ります。
兵糧の備蓄や武具防具の備蓄が心許ないではありませんか!」
長妹のエンナが五月蠅く騒いでいますが、問題はありません。
エンナが智謀泉の如しと褒め称えられるこの国一番の軍師です。
いえ、私の知る限りでは、大陸一の智謀の持ち主です。
ただ少々慎重居士な所があるので、攻めるよりも守りが得意です。
ですから、彼女が満足する兵糧や軍資金は、普通ではありえないほど膨大です。
今領都に備蓄されている、全領民五年分の兵糧でも多いくらいです。
「分かっているわよ、公国軍の半数を動員して獣を狩るから、保存食を作る準備をしていくれればいいわ」
まあ、十分以上の兵糧があっても、多過ぎるという事はありませんし、領民を安心せるという意味では、有り余る食糧を商店に並べるにはいいことです。
それに、領民全ての良識と善意を信じるほど愚かでもありません。
「商人や金持ちに買い占めや売り惜しみを禁止させなさい。
もし違反する者があれば、家財を没収して奴隷に落としなさい」
「もう私の名前でやっております姉上。
ですが改めて領主である姉上がお触れをだすのはいい事です、直に手配します」
流石エンナです、既に城代として命令してくれていましたね。
まあ、こんな時のために、エンナに全権を与えているのです。
「それで姉上、宣伝戦の結果なのですが」
私が王都で見聞きした話をエンナにしたのですが、それは使い方によっては大きな戦力になるというので、自由にやらせる事にしました。
王妃の不義密通と、腐れ王太子が私生児であるという事実は、皇国の動きを抑えるのに利用できると言うのです。
「皇国はその事を認めないという公式見解を発表したようですが、かなり内部でもめたようで、皇帝と皇太子が激しく言い争ったようです。
上手くいけば、皇帝と皇太子の内乱が起こるかもしれません」
この話には正直驚きました。
皇国は腐りきっているかと思いましたが、皇太子は誇りを持っているようです。
まあ、本当に誇りを持った行動とは限りませんがね。
家臣の権力争いに担ぎ上げられていて、ボザン王国の事などどうでもいいと思っている可能性も高いです。
ですが、これは私達にとってもボザン王家の者にとっても好機です。
皇帝と皇太子が反目しているなら、皇国軍を遠征に出せない可能性があります。
大軍を派遣して、皇太子に叛乱を起こされては困りますからね。
たかだか姪のために、皇位を失う可能性がある事はしないはずです。
送られてくるとしても、皇国軍の一部でしょう。
でも、その一部でさえ、公爵家には大軍なのですが……
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