第7話
――いや、ちょっと待って! そんなの、あんまりじゃないか? だってリミちゃん、なんにも悪くないじゃん!
ストップストップ! こんなんダメだよ。リミちゃんも一回戻っといで。
「え? いや、ともくん……え? これ何?」
こんなの納得行かないでしょ。こんなのさ、落とし所のない話なんだから。マイノリティはどっか行っておわりって、そんなのダメすぎるよ。
「いや、でもこれ以外どうすることもできないからわたしは……」
これは物語なんだからさ! 物語でくらい、トンチキでもリミちゃんに幸せになってもらったってバチは当たらないよ。
「物語?」
そうだな……じゃあ、みんなゴリラになるってのはどう?
「えー……それ、根本的な解決になってるかな?」
リミちゃんがハッピーだったらなんでもいいんだよ! 物語はハッピーエンドで終わりたいって思わない?
「まあ……」
みんなゴリラだったら、リミちゃんがゴリラであるアドバンテージはなくなるけど、別にそんなのなくたってリミちゃんはリミちゃんだよ! 僕も、他のみんなもゴリラになっても、僕が好きなのはリミちゃんだけだよ。
「こんなよくわかんないところでいい告白しないでよ……もー」
ふふふ。
「でもこんなことしちゃっていいの? お話の作りとしてはかなりズルじゃない?」
いいんだよ、百年前にブレヒトがやってるし。「こんな終わり、見たいか? 見たくないだろ? じゃあハッピーエンドにしちゃえ!」って。伝統芸だよ。
「そんなもんなの?」
そんなもんだよ。じゃあいい? みんなゴリラにしちゃうよ。えい!
……というわけで、みんながゴリラになったことでリミちゃんの悩みはすっきり解決。
その上、ゴリラばかりになった芸能事務所に所属したリミちゃんは、生まれついてのゴリラとしての美貌と、そして入所後に養成所で演技レッスンに真剣に取り組み、確固たる演技力を身に着けて実力派美ゴリ女優として一斉を風靡。
部長も清野さんも、そして僕も、みなゴリラになって、なんだかんだ幸ウホに暮らしましウホホ。
ゴリ美 ナツメ @frogfrogfrosch
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