象牙海岸共和國

ポンデ林 順三郎

象牙海岸共和國

🐇 ウサギと人間とナマズ、その三択を提示されて、僕は今回ウサギを選んだ。

🐇 現在の僕がウサギである理由はその選択の結果であり、他に何の理由もなければ、🐇何から影響を受けたとか、ましてや剽窃の類では有り得ないことを、最初に明言しておく。


🏚️ その日のシェルターに残っていた四人の内、一人はウサギ、これは僕だ。残りの三人が人間だった。🦈当初はナマズもいたんだけど、彼らは鰓呼吸だったので、地上での生活には適さなかったらしい。

🐇 他のウサギや人間は、何かしらで出て行ったので、残っていたのは四人。


🤠「ラストウサギ」


🤠 人間の一人、ニンゲンツーが口を開く。ラストウサギは今の僕の名前だ。

🐰 僕は右耳を向けて応えた。


🍠「そろそろ秋じゃないか」


🤠 とニンゲンツー。なるほど確かに、そろそろ九月だ。

🐇 一を聞いて十を知る、僕は左耳に右後足を突っ込んで、内側からサイバースペースを引き摺り出す。🖥️濃い灰色の背景に、緑のグリッドを格子に引いたやつだ。

🐾 ぱぱぱっ、と左後足でスタンピングして準備は完了。僕の身体からXYZの三軸を指す矢印が生えた。🐀これをマウスでドラッグすると、空を飛ぶのと同様の効果を得られる。


😗「あれ。何処かに出掛けるの」


😗 そこへ、目覚めの遅いニンゲンワンが自室からやってくる。🤗ニンゲンスリーも一緒だから、昨日は徹夜でテトリスでもしていたんだろう。

🐰 僕は顎でカレンダーを示した。


😗「あ、もう秋か」

🤗「よろしくお願いします」


😗 ニンゲンワン、ニンゲンスリーもそれだけで理解した様子で、🐇僕は彼らが本当に人間であるのか疑わしく思った。

🤗 人間同士のコミュニケーションとは、常に不全であるのではなかったろうか。

🐇 発信者である僕がウサギだったから、🐇これは人間同士のコミュニケーションには当たらないのかも知れないけれど。


🌞 ともかく、僕は三人の人間らしきものに見送られ、🛩️自分の身体をマウスでドラッグして、晴れた空へと躍り出た。

🇨🇮 目的地はコートジボワールだ。僕達の住む田町の和民からだと、🌍マウスドラッグで二万回、大体四半時間で到着する予定だ。

🗺️ 時々画面外にドラッグして移動位置が戻ったり、🐇別のウィンドウにコピーされてしまったりする他は、順調な旅路だった。


🇨🇮 きっちり四半時間で到達したコートジボワールは、既に秋の気配に彩られていた。🍠僕は秋の気配について具体的に記述するのに必要なロイヤリティを支払っていないため、これを🍠詳細に語ることはできないが、いわゆる秋の気配と言われて想像するイメージで、概ね間違いはないだろう。🕳️特に何も想像できない場合は、その空間が削り取られていると思っていただいても構わない。


🇨🇮 僕はコートジボワールの首都にある明治製菓の直営店で板チョコを四枚購入し、🧀その隣のブルボンの直営店でチーズおかきを四袋購入した。

🇨🇮 これでコートジボワールでの用事はおしまいだ。

🐇 僕はマウスをドラッグし、自分の身体を宙に浮かべる。


🤵「ウサギの旦那」


🐇 何度かの操作ミスの後、概ね地上から四メートルほどに達した所で、地上から僕を呼び留める声が聞こえた。

🐰 足元を覗き込むと、現地の人間だろうか。🤵コートジボワールの国旗と同じ色合いのタキシードに身を包んだ知らない人が、🖐️こちらを見上げて手を振っている。


📞 僕は右耳から一対のトランシーバを引っ張り出すと、片方を投げ渡した。


🤵「ウサギの旦那、菓子をお探しですかい? オーバー」


📞 トランシーバから声が聞こえる。僕はウサギだから返答は出来ないのだけれど、👂相手は僕の返事を待って一生懸命トランシーバを耳に当てている。

🐇 ウサギ用だから、人間の顔の形状には合わないのだ。悪いことしたな、と思ったので、📞僕はもう片方のトランシーバも投げ渡して、そのまま田町の和民へ帰投した。


🔚<了>

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象牙海岸共和國 ポンデ林 順三郎 @Ponderingrove

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