海の向こうへ

@zarakihigiri

第1話

少年は防波堤に座って海を見ていた。

「今日もいい天気だな」

その隣に一人の少女が座っていた。

「うん、いい天気だね。海の波は穏やかだしこの景色を見てるだけで心が落ち着くね」

「あぁ……さて景色も満喫したしそろそろ学校に向かうか」

少年が立ち上がる。

「うん、そうだね」

それに続いて少女も立ち上がる。すると

「おーい、ひじりー」

後ろの方から声をかけられ振り返った。

「おお~おは。祭は朝から元気だな」

「おうよ!朝からテンションあげないと一日もたないぜ!」

祭は元気そうに話しかけてきた。その祭といしょに少女が声をかけてきた。「おはよう、ひじり君、空」

「あぁ、おはよう不知火さん」

「おはよう、かなめちゃん」

後ろから声をかけてきたのは友達の西影 祭と不知火 かなめ同じ学校で同じクラスの人だった。

「朝から海見て何してたんだ?」

「とくには、ただ海を見たかったそれだけだよ」

「よくわかんねぇな、けどそろそろ学校いかねぇと間に合わねぇぜ」

「あぁ、そうだな」

そういって防波堤を後にして学校へ向かった。


キーンコーンカーンコーンHRの始まりを告げるチャイムがなった。

「ふぅ~なんとか間に合ったな……」

「結構ギリギリで危なかったぜ」

話していると扉を明け先生が入ってきた。

「ホームルームを始めるぞ」

ホームルームでは今日の日程の話ぐらいでとくに話すこともなくすぐに終わった。

そしてしばらくして一時間目が始まり授業を集中して受けているとあっという間に下校の時間になっていた。

「ふぅ~やっと終わったー。なぁひじり一緒に帰ろうぜ」

「いいけど、不知火さんと一緒に帰らなくていいのか?いつもは不知火さんと帰ってるのに」

「今日は用事があるらしいから男同士で帰ろうぜ」

「わかったよ」

それから祭とたわいもない話をしながら学校を後にした。

「そういえばさぁ、ひじりって秋山さんと付き合ってんのか?」

帰りながらたわいもない話をしていると唐突に祭から変な話題をふられた。

「……は?急になに聞いてんだよ」

「最近よく秋山さん一緒に登校したり下校したりするのみかけるからさ」

「……別に付き合ってねぇよ、たまたま一緒になって帰ったりしてるだけだよ。それより祭こそ不知火さんとどうなんだよ」

変なことを聞かれたので祭に仕返しをした。

「かなめとは付き合ってからそんなにたってないからお互いに距離感を確かめあってる感じかな。ってか俺とかなめが付き合ってるのなんてほぼ学校中に広がってるんだからどうでもよくないか?俺としてはひじりと秋山さんの関係が気になるぜ」

祭は再度話題を戻してきた。

「しつこいな………別にたいした理由ではないよ。この間海を見ていたら空さんが話かけてきて世間話をしていろいろと話してるうちにお互いに同じことを考えていて意気投合しただけだよ」

「同じ考えって?」

「この島を出たいってことさ。この島に住んでる限りは15までは学校で勉強をして卒業して家の家業を引き継いで一生を送るなんて嫌だからな」

「けどこの島に生まれたからには逃れられない宿命だぜ?別の島からの船なんて10年に一回来るか来ないかだし、この島に生まれたからにはここで生活してくしかないってのがこの島の風習だからな……それにそんなことを考えるだけでもヤバイぜ……」

そうこの俺たちが住んでいるこの島には悪しき風習がある。この島に生まれたからには中学校までは義務教育を受けてそこから皆家の家業を引き継ぎ自給自足の生活をして一生を過ごす。島から外に出ることは許されない、もし出ようものなら強制的に連れ戻され年齢や性別を関係なしにきつい体罰を一ヶ月毎日受けさせられる。出ようと考えているだけでも大人たちから叱られ二度とそんな考えを起こさないようにきつい罰を受ける。

「あぁ……だからこの話は信用している祭と秋山さんにしか話してないよ」

「なるほどな、けど秋山さんは不味くないか……」

「まぁな、秋山さんはこの島の巫女の家系だからな。もしそんなこと考えてるなんて密告されたら島長や家の人からどんなきつい罰を受けるか……だからこの話は祭にしかせずいろいろと準備を進めてきたが俺はあの日秋山さんと話をした時にこの人は信用できると思った、だから話したのさ……」

「なるほど、けど意外だなぁ……秋山さんがそんなこと考えてるなんて………まぁ俺になにか手伝えることがあったらなんでもいってくれ、できる限りは協力してやりたいから」

「あぁ……その時が来たら頼むよ…………」

こうして話をしてそれぞれの家の分岐点まで話をして別れた……

そして家に帰り家の家業である漁業の手伝いをしご飯を食べ風呂に入り自分の部屋にこもった。部屋に入ってすぐに扉に鍵をかけ窓もカーテンをしてきり密室にした状態で今日もまた島を出るための計画を進める……この計画を進めるためには必要なことは全部で3つある。一つ目はまずここを出るための足を確保することだ。二つ目は島を出るタイミングだ。そして三つ目は島を出た後の事だ…………一つ目の船は家の小舟を密かに島の裏側の洞窟に隠してあるから足の調達は問題ない。食料や水も保存のきくものを一ヶ月分船に積んであるし島を出る時の準備は大丈夫だ……三つ目の島を出た後も漁業の手伝いをしてたお陰でなんとなくだが他の島の位置を把握しているため島々を渡り歩いて必要な物は現地で調達行けばなんとかなるだろう。問題は二つ目の島を出るタイミングだ…………島を出るためのに必要な条件は二つある。一つ目は島を出るための至るところに大人たちが巡回をしていることだ……大人たちに見つかったらすぐに連れ戻されてしまう。なんとかうまいこと巡回の目を駆け抜けて出なければならい……そして二つ目は島の回りの海の潮の流れだ。これが一番の問題だ、この島の回りの潮の流れはなぜかある程度進むとこの島に戻るように潮が流れているため進んだと思ってもすぐに島に戻ってきてしまうため島を出ることができない……この潮の流れと巡回の目をかいくぐらないことには島を出ることはできない…………この条件をクリアできる日を調べた結果唯一一回だけ条件を満たす日があった。その日を逃すと条件を満たせる日がもうなくなりこの島を出ることはできないだろう……その日は島の神社で一年に一度島の神に奉納の儀式をするということで島をあげての大きな祭がある。祭があるお陰で巡回の目は極端に少なくなりそして奇跡的にその日は潮の流れが一ヶ所だけ変わる場所がある、そこを通れば無事に島を抜け出すことができる。そのため奉納の儀式までに念入りに準備を進める必要がある。奉納の儀式開始までは後一ヶ月しかない…………

それからは祭に島を出るための準備を毎日学校へ行く前や学校が終わって家の手伝いを終えた時などに隙を見ては進めていった。そして奉納の儀式三日前にようやく島を出るための道具や作戦練り終えた。そして奉納の儀式三日前の夜に島を出ることを伝えるために祭と秋山さんを自宅に呼んだ。

「すまない、こんな夜遅くに呼び立てて」

「俺は大丈夫だけどよく秋山さんはこれたな」

「うまいこと抜け出してきたら気にしないで……あまり長くはいれないけど……」

「二人とも来てくれて助かったよ、二人を呼んだのは例の件の事を話したくて呼んだんだ」

「話しをするってことは手筈が整ったのか」

「あぁ、これからその説明をする……まず島を出る日は3日後の奉納の儀式の日だ」

「なるほど、確かにその日なら大人達が祭の準備や儀式の準備で巡回が手薄になるな」

「そしてこの日は島の潮の流れが変わり唯一島の外に出ることができるつまりこの日しかチャンスはないってことだ」

「なるほどな、理解したぜ」

祭は理解が早くて助かる。

「さてここからが来てもらった本題にはいるんだが俺は島を出るために色々と準備してたのは知っての通りだと思うが祭、秋山さん俺と一緒に島を出るきはないか?」

問われた祭と秋山さんは考えている。沈黙の間がすこし流れた…………そして最初に口を開いたのは祭だった。

「…………俺はこの島のことは好きってわけではないがここで育ったからな、島を出たい気持ちはそこまでない。ひじりのことは親友として一緒にいたいって気持ちがあるがいまここで島を出るって決断するには…………」

祭とは今まで一緒にバカやったりしてきたりしてたから一緒に来てほしかったが祭には祭の人生があるからな

「そうか……わかった。秋山さんはどうする?」

「……私は、島を……出たい…………」

秋山さんは一緒に来てくれるか、かと思ったが言葉には続きがあった……

「……けど私が島を出ると家の人やみんなに迷惑がかかるから、行けない…………」

……そうか…………秋山さんもか…………悲しいが仕方ないか…………

「分かった、秋山さんも祭もこの話は忘れてくれ。みんなそれぞれ自分の人生があるからな」

みんなそれぞれ自分の道を歩むんだ。ついてきては欲しかったが仕方ない……

「一緒には出れないがなにか手伝えることがあったら遠慮なく言ってくれ手伝うから」

「ひじりくん私も手伝えることがあったらなんでもいってね」

「祭も秋山さんもありがとう。困ったことがあったら頼むよ。さて話したいことは話したし今日は来てくれて助かったよ、二人とも家まで送るよ」

こうして話を終え二人を家まで送った。送り終えた後一人考え事をしながら帰っていた。二人とも手伝ってくれるとは言ったが島を出ない二人をこれ以上巻き込むことはできない、巻き込んでしまって二人に迷惑をかけることなる。それだけは避けなければいけない。当日は一人でいろいろとやる必要がある。大変ではあるが準備をこつこつ進めていかないと…………


そして準備を終わらせ奉納の儀式当日をむかえた。儀式のする神社の前にはたくさんの屋台が並んでいた。儀式があるのは夜からなので儀式が始まるまでは屋台巡りなどをして始まる時間を待つ者が多い。皆が祭りを楽しんだりしてる頃俺は島の巡回をしている大人たちの人数やルートを確認していた。いろいろ用意はしたが見つかったりしたら手間になるため確認を厳重にしていた。何度も確認をして頭の中に叩き込んだ。気づいたらもう夕暮れになっていた。さてそろそろ計画の実行をするために動き始めるか。夕暮れになったことにより屋台などに人たちが神社に向かい始めた。夜に始まる島の神に奉納するための儀式や巫女が舞を踊るためそれを見るために島の人間のほとんどが集まる。巡回の人間も半分ぐらいはこれを見に来るため巡回の手が薄くなる。さらに儀式が始まると島一体の電気を消して月夜の光と儀式の回りだけに蝋燭の火をつけて明るくし儀式が始まる。そのため人目を盗んで脱出するには絶好の機会となる。この機械が訪れるのを待っていた。儀式が終わるのには約二時間かかる。儀式が終わると巡回の目がまた厳しくなるため儀式が終わる前に島を出ないといけない。儀式が始まりみんなは儀式に注目をしていた。誰もこちらを見ていないのを確認してその場から立ち去り船を止めている島の裏側の洞窟を目指した。神社から島の裏側の洞窟は場所が離れているため走って一時間ぐらいかかる。どうどうと走っていけばればいいが島のほとんど人が神社に行っているとはいえ巡回の目はまだ残っているためどうどうと町中を走っていくわけには行かない。そこで多少遠回りにはなるがまっすぐ向かうのではなく島のはしから迂回しながら向かうことにした。こっちの道を使うと走って一時間半かかるが儀式が始まるまでに巡回の目を確認したときに島のはし側の人が神社に行くと盗み聞きしていたため巡回の手が薄くなったいるそこを走って突っ切る方が安全と考えこちらの道を選んだ。しかし完全に巡回の目がないわけではないのでうまく隠れたりしながら巡回の目を避け洞窟を目指した。そして洞窟まで後少しのとこまで来た。後は森を抜けるだけなのだが違和感を感じていた。ここに来るまでの監視がゆるく感じた。いくら巡回の大人たちが神社にいってるとはいえ監視がここまで少くないものなのか、まあ深く考えても仕方ないし先に向かうか。慎重に森の中を歩いていると夜だというのに森の中に光が指し始めた。まさかと思い後ろを振り替えるとと大人たちがライトを持って森を照らしていた。

「この森のどこかに島を脱走しようとしているものがいるはずだ見つけ出せ!」

と言い大人たちが森の中に入ってきた。まずい、脱走のことがばれている、とりあえず隠れられそうなとこに避難しようと木を登り大人たちがいなくなるを待った。しかし大人たちはいなくならずむしろ増えていきだんだんと手詰まりになってきていた。このまま時間がたって潮の流れが変わってしまうと島を出れなくなってしまうので強引に突破することにした。唯一一ヶ所だけ包囲網が薄いところがあったのでそこを強引に突破することにした。木を下りて全速力で走ってそこを抜けようとした瞬間急に後ろから肩を捕まれてた。ヤバイ……捕まったと思い反射的に捕まれた手を払い後ろを振り替えるとそこには……祭がいた。

「…ビックリした………どうしてこんなところに祭が?」

「驚かしてすまん。神社にいたときにひじりが人混みを抜け出して行く姿が見えてな心配になって後を追いかけてきたんだ」

「そうだったのか……なら早めに声をかけてくれもよかったのに」

「少し周りの様子をうかがいながら後を追いかけていたからな、それより今あの薄い包囲網を抜けて行こうとしてただろ」

「あぁ、周りが囲まれてるからそこを突っ切るでいたが問題があるのか?」

「あれは罠だ。よくあの周辺を見てみろ、周りの様子がおかしい」

言われた場所をよく見てみると違和感を感じた。回りを見渡し違和感の正体を探った。そしてその正体がわかった、それは風だった。森を抜けたら海が広がっておりこの時間帯は海から森向きに強めの風が吹いている。そのため森の木々や茂みなどが風の影響で揺れているがその周辺だけ揺れがほとんどなかった。つまりあそこにはあの一帯の風を遮る何かがあることになる。

「そういことか、大人たちがライトを消して身を潜めて隠れているのか。そしてライトを少しだけつけてあそこの包囲網を薄いようにしてそこに来るように誘導されているのか。だがあこが罠だとわかっても回りを囲まれているこの状況より絶望的になっただけでどうやっと切り抜ければ……」

「安心しろひじり、あそこをよく見てみろ。あこからなら出れる」

言われたところを見るとたくさんのライトの光が見えた。たくさんのライトの光の数があらゆる方向に向けられ大人たちが探しているのがうかがえる。

「あそこはライトの光の数が多く見えるから大人たちがたくさんいるんじゃないのか?あこを抜けるのは危険じゃないか?」

「逆だ、あのライトの動きをよく見ていろ。ほとんどのライトの光が動いていない。人が何かを探しながらライトを照らしているのに光が動かないなんてことはないだろ。きっとライトを何かで固定しているだけつまりあそこが今一番抜け出しやすいと思うぞ。罠の可能性もないわけではないが」

「なるほどよく見てるな。どちらにしようと今の状況だとあこを抜けるしか選択肢はないな。走って駆け抜けるか……」

そう言い祭と一緒に森からの脱出をするため駆け出した。なるべくライトの光に当たらないように走りながらライトの光が多いところ駆け抜けた。内心見つかるかと思ったが祭の予想通り大人たちはほとんどえず気付かれずに森を出ることができた。森を出てたのはいいがまだ大人たちが近くを見回ってるためとりあえず身を隠すため近くの民家に忍び込んだ。

「さてここからどうするか、森から脱出できたのはいいが森の向こうに停めてある船に行くには大人たちが多くて船までいけないし……」

「なんとかして大人たちを森から引き離すしかないな」

「あぁ……さてどうするか……」

この状況をどうするか悩んでいると一人の大人が森の方へ走ってやってきた。

「皆さん大変です……み、巫女が脱走しました」

大人たちに聞こえるように叫んだ。すると見回りの人たちが集まってきた。

「なんだと、なぜそんなことになった」

「舞が終わり出番を終え供物納める者と交代した後に休憩するといって部屋に入られたのですがしばらくたっても戻ってこられなかったので呼びに行ったのですが部屋にはいなくて窓が空いておりどうやらそこから隙をみて逃げ出したようで」

「まずいな……島の巫女が逃げ出したなんて一大事だ。脱走者のことはとりあえず見捨てて全員巫女を探しにいくぞ。どうせやつらはこの島から出れまい」そういい大人たちは神社の方に走っていった。

「神社の巫女ってまさか……」

「秋山さんのことだろうな。どうする?大人たちが森から離れたいまがチャンスだがいくか?」

「行くなら今がチャンスだがなぜこのタイミングで秋山さんが。………まさか……俺を逃がすためになのか…………」

「可能性は大だろうな、俺がひじり追ってきたのはあこから抜け出したのに気付いたから、舞をあこで踊っていた秋山さんならなおのこと気づいた可能性は高いな。大人たちが不信に動いたことで追ってるのに気付いて自分を囮にすることにしたんだろう」

秋山さんなぜそんなことを……俺は巻き込むつもりはなかったのにこのままじゃ秋山さんが大人たちに捕まったら大変なことになってしまう……けどこのチャンスは秋山さんが身を危険にさらしてまで作ってくれた。それを無駄にしたくはないけど…………このままではいいわけがない!

「……祭、俺秋山さんを助けに行くよ!」

「本気か?秋山さんの思いを無駄にすることになるぞ」

「わかっている、それでも俺は秋山さんを助けたい。祭にはこれ以上迷惑をかけたくないからここで別れよう」

俺一人で秋山さんを助けるんだ。そのために秋山さんのいる方向に向かおうとした瞬間、祭に呼び止められた。

「待てよ、ここまで来てここでお別れなんて寂しいだろ。最後までひじりに付き合うぜ」

「けどそうしたら祭に迷惑が……」

「ったくひじりはそんなことを気にしてるのかよ。俺たちは親友だろうがそんなこと気にすんな。迷惑かけられてるなんて思ってたら最初から助けに来てねぇよ」

祭の思いを聞き目から涙がこぼれた。

「…ありがとう………なら祭一つやってほしいことがある、別行動になるが頼めるか?」

「おう、任せな!」

頼もしい返事をしてくれた。俺も負けてられない秋山さんを助けるために行動を起こさなきゃ。さっきの大人たちの話を聞いてるとまだ秋山さんは見つかってはいない。動き回って隠れてるとしたら見つかる可能性が高い。少しでも見つからないためには誰にもわからない場所に身を潜めるのが無難だがいったい秋山さんはどこに身を潜めているのか…………考えているととある場所が思い浮かんだ。まさかあそこか……確証はないが時間が惜しい。そこに向かって走りだした。その場所に向かう途中たくさんの大人たちが秋山さんの捜索でうろついていて動きにくかったが建物のをうまく使いながら切り抜け思い描いた場所に向かった。そしてついた場所は防波堤…………あの日秋山さんと海を見ながら話した場所。防波堤の上にのり見渡すと防波堤の向こうに身を潜めてる秋山さんを見つけた。

肩で息をしながら声をかけた。

「はぁはぁ……秋山さん探したよ」

「ど、どうしてここにひじりくんが……」

秋山さんはものすごく驚いていた。

「秋山さんを助けにきたんだ」

「なんで私を助けに……私のことなんてほっておいて島を無事に出てほしかったのに……そのためにこんなことをしたのに……」

「祭にも同じ事を言われたよ。秋山さんの思いを無駄にすることになるぞって、それでも俺は秋山さんを助けたいと思った。仮に助けに来ずこのまま島を無事に出れたとしても秋山さんを犠牲にしたんじゃ何の意味もない……」

「ひじりくんはどうして私のために戻ってきたの……」

秋山さんは自分を犠牲にしてまで俺を島から出るのを手伝ったのになぜ俺が助けにきたのかがわからないのだろう。俺がなぜ秋山さんの犠牲を無駄にしてまで助けに来たかなんて答えは決まっていた。

「簡単なことだよ、それは秋山さんのことが……好きだからだ」

「えっ……」

秋山さんは驚いていた。俺がそういう思いを抱いているとは思っていなかったのだろう。

「秋山さんは俺とは友達だと思ってくれて友達を助けるためにやってくれたのかもしれないけど俺は秋山さんのことが好きだから秋山さんを犠牲にしてまで島を出ることは望んでないんだよ」

秋山さんは俺の気持ちを聞きゆっくりと口を開いた。

「……ひじりくんがそんな風に思ってくれてたなんて…………いつから?」

秋山さんに問われた。

「それは一緒に防波堤で海を見た日からかな……俺はこの島を出たくてよく防波堤で海の向眺めていた。あの日も同じように海を見ていたら秋山さんが通りかかって声をかけてくれた。一緒に海を見て最初はたわいもない話をしていた。そして次の日もその次の日も話をして毎日防波堤で一緒に話をしていった。それから島を出る話をしたりして気付いたら秋山さんにいろんな事を話した。毎日防波堤で秋山さんに会うのが楽しくて話していると胸がドキドキしてこんな気持ちは初めでどうしてこんなことになるかは最初はわからなかったけど会っていくうちに気付いたんだ。秋山さん……いや空が好きだってね……」

自分の思いを全て秋山さんに伝えた。

「……ひじりくんがそんな風に思ってくれてたなんて…………私は……」

秋山さんがなにかを言うとしたときに

「いたぞ!巫女と少年をがいたぞ!!」

大人達に見つかりこちらに向かって走って来た。

「秋山さん行くよ」

秋山さんの手を握りその場走って逃げたした。追い付かれないように上手く建物や路地を利用しながら逃げているがここに大人達が集まってきたらとてもじゃないが逃げきれない。とりあえず逃げるため走っているがやみくもに逃げ回ってもこちらの体力がつきてしまう……さてどこに向かうべきか……島をでるためには森のところまで戻らなきゃいけないが大人達が周囲を捜索しているなか向かうには無謀すぎる。この状況を打破するには……一か八かに賭けるか。

「秋山さん今からある場所に向かうよ」

「どこに行くの?」

「島をでるための場所さ。ただ大人達の目を掻い潜りながらいくには大分厳しいからなるべく見つからずにはいくけど見つかったら強引に突破することになる。大変だけど離れずについてきて」

「わかったわ」

秋山さんの手を握りながらその場所に迂回したり遠回りをしながら向かった。大分時間はかかったが大人達に見つからないように行くためにはしかたなかった。ある程度の場所までいくとそこにはたくさんの大人達がいた。隠れて進むことができるのはここまでか。目的の場所までは後少し距離がある。ここを強引に突破する必要がある。

「秋山さんここからは強引に突破するから手を絶対離さないでね」

「どうやって突破するの?」

「大人達に見つかった時ようで何個かお手製の秘密兵器を持ってきたからそれを使うよ」

「秘密兵器?」

秋山さんは首をかしげていた。まぁいきなり秘密兵器といってもそういう反応をするのが普通だろう。秘密兵器を見せるためポケットからそれを取り出し小さい丸い球体を秋山さんに見せた。

「この丸いのは何?」

「これは閃光玉みたいなものかな、これを今から大人達の上に飛ばすからそしたらものすごい光が当りを包む見込むから秋山さんは僕がいいって言うまで目をつぶってて」

「わかったわ」

秋山さんに説明をしタイミングを見て閃光玉を大人達の頭上に投げた。するとピカッと辺りをまぶしい光が包み込んだ。周辺にいた大人達はその光を浴びあまりの眩しさにその場に皆崩れ落ち目を手で押さえていた。

「よし今だ、行くよ秋山さん」

秋山さんに合図をだし早く走り出そうとした。早く目的地につかないと他の大人達がさっきの閃光玉の光を見てこっちに集まってくるそれまでに目的地に着き島を出ないと。その場所に向かって走り出そうとした瞬間に後ろから肩を誰かに捕まれた。そして振り向いた瞬間思いっきり殴られ吹っ飛ばされた。

「ったく子供の分際で大人をなめやがって」

痛ってぇ……近くに大人がいたのか……閃光玉が効かなかったやつがいたのか油断していた。くそ今殴られた衝撃で軽く脳震盪が起きている。

「やっと捕まえたぞ、お前達もこれで終わりだ」

このままじゃ捕まってしまう。秋山さんは怯えて腰を抜かしてしまってる。俺は殴られた衝撃で脳震盪が起きてまずい……

「さぁおとなしくし捕まr……」

捕まると思った瞬間大人が急に倒れた。いったい何が大人の後ろを見るとそこにはスタンガンを持った不知火さんがいた。

「空、ひじり君大丈夫?」

そう問われてから少したって脳震盪が治まった。

「不知火さん助かったよ、ありがとう。けどどうしてここに不知火さんが?」

「祭から事情を聴いてね、空とひじり君を手助けするために助けに来たの」

「助けに来てくれたのは嬉しいけど今僕達がやってることはとてもやばいことなんだよ。この件に関わったら不知火さんも大変になるのにどうして」

祭に言われたからといってここままでの危険をおかす理由がわからなかった。本来一人で誰も巻き込まずに一人でやるはずだったのに気付いたら皆が助けてくれていた。特に不知火さんには俺の口から何一ついっていないのにそれでもこの場に助けに来てくれた。だから不知火さんはどうして助けてくれたの知りたかった。

「簡単なことだよ。祭から事情を聴いて親友が困ってるなら助けるのが親友だとそう思ったからだよ」

笑顔でそう答えられた。祭にも言われたな親友だから助けるのが当たり前って……

「ありがとう不知火さん」

「かなめちゃんありがとうね、助けに来てくれて」

「いえいえ、けどどうするの?どこか向かおうとしてたけど」

「ある場所を目指してるんだ。そこから島をでるんだ」

「なるほどね、なら早く向かいましょ。さっきの光でこっちに向かってるみたいだしそれに光を浴びた人たちもしばらくしたら追ってくるし大人達がこっちに来る前にその場所にいきましょう」

不知火さんに説明をしてこの場からそこに向かおうとした時に秋山さんが申し訳なさそうに口を開いた。

「……ごめんかなめちゃんひじり君あたしさっきの腰が抜けて立てそうにないの……あたしを置いてその場所にむかって……」

秋山さんは足手まといにならないようにここに残るといってくれているがそんなことはできない。皆で無事にやりとげなきゃ意味がない。

「大丈夫だよ、秋山さんを僕の背中に乗って背負っていくから」

「けどそんなことしたらひじりくんにものすごい負担が……」

「目的地まですぐそこだから大丈夫だよ。それに体力はある程度はあるからね」

「…ありがとう」

話を終え秋山さんを背中に背負い不知火さんと目的地に向かって走った。目的地に着くとその先には海が広がっていた。そしてそこには一台の船が停まっていた。

「ひじりー、秋山さん、かなめ待ってたぞー。」

船から祭が手を降っていた。祭と別れて別行動をしたときにここに船を持ってくるように祭に頼んでいたのだ。急いで俺らは船に乗った。秋山さんを船中にある休憩室につれていき横に寝かせてあげ船の操縦室にむかった。

「祭助かったよ。運転変わるよ。」

「おお頼むわ、ここまで運転ですげぇ疲れたからな」

祭と運転を交代した。ここからは時間との勝負になる大人達から逃げ回るのに結構時間を使ってしまったため潮の流れが変わる前にその場所に向かわなければならないのだが今の時間を見るとかなりギリギリになる。当然大人達も邪魔をして来るだろうからかなり厳しくなるだろうがそれでも成功させなければならない。船を目的の場所に向け最高速で走らせた。そして無事目的の場所手前まで来たときに後ろから船で大人達が追ってきた。やはり追ってきたか……だがここまで来れば後はここを突っ切るだけで行ける。大人達とは距離が大分空いている。時間がかかったせいで多少潮の流れがもどりつつありきつく下手をすると船が流されるが最高速で駆け抜ければギリギリで行けるはずだ。

「皆今から最高速でここを突っ切る。むちゃな運転になるから船が揺れるからしっかり捕まっててくれ!」

「わかった。信じてるから頼むぜひじり 」

「わかったよ、私もひじりくんを信じてる」

「ひじりくんお願いね」

皆の返事を聞き船を最高速で出し潮の流れを無理やり突破しにかかった。潮の流れが強く船が揺さぶられ潮に流されて行く。最高速で進んでるいるが予想以上に潮の流れが強くここを抜けれるかが怪しくなってきた。このままじゃギリギリ間に合わないか…………くそ、ここに来るまでに時間をかけすぎたのか……こんなところまできてどうにかならないのか……後一押し何かあれば……後ろから何かで船を押すことができればいいのだが。なにか、なにかないのか……そういえば大人たちから逃げるために持ってきたお手製の秘密兵器の中にあれがあったはずだ。鞄の中から急いで小さな球体を出し導火線にライターで火をつけ操縦室からでて急いで船の遥か後方めがけて投げた。そして素早く操縦室にもどり舵をとった。そして戻ったすぐに先程投げた球体がドッカン!と爆発し爆風で船が後ろから強く押された。その勢いで船は潮の流れに無理やり逆らい前に進み無事に抜け出すこと成功した。爆風の影響で船のいたるところが傷だらけになっていたが幸い船を無事に動かすことができ大人たちも追うことが不可能と分かったらしく引き上げていった。状況を確認しはりつめていた気が一気に抜けた。

「はぁ……なんとか無事に島をでることに成功したな…………」

「なんとかなったな。だけどさっきの爆発は驚いたぞ。事前に説明ぐらいくれよ。ビックリして船から落ちるかと思ったぞ」

祭が文句を言いながらこっちにきた。

「すまんすまん、とっさの判断だったんだ」

「まぁなにはともかく無事に島をでることに成功したな」

「あぁ……不知火さんと秋山さんは大丈夫?」

祭でも驚いたんだから不知火さんと秋山さんはなお驚いただろうと思い二人に声をかけた。

「もう、ひじりくん突破のしかたが強引すぎるよ」

「ほんとだよ、でも無事に島を出れてよかったねひじりくん。これからどうするの?」

「これからか………ここから少し離れたところに島があるはずだからそこら辺で足りないものを色々調達して色々な島々を渡り歩くことになるかな。結構大変になるけどそれは覚悟してことだから俺は問題ないけど三人は大丈夫なのか?巻き込んでしまった俺が言うのもあれだが」

自分の覚悟はできていたが三人ともは俺を助けるために俺が巻き込んでしまったよなもの。ここからは本当に大変になるだろう。だから三人のことが心配でしかったなかった。巻き込んでしまった以上やれることはやるがそれでも至らぬことがあるだろう。三人のそれぞれの気持ちを聞いた。

「ひじり今さらだぜ。俺はお前を助けると決めて行動したんだ。これからどれだけ大変なことが待ってようと協力して助け合っていこうぜ。それが親友ってもんだろ」

「祭、ありがとう」

祭から熱い親友の想いを受け取った。

「私も祭と一緒だよ。大変になることは分かってたことだもん。それでも助けると決めたときから覚悟はきまってたよ」

「不知火さんもありがとう」

祭と不知火さんの覚悟は伝わった。後は秋山さんだけだった。

「……私もね覚悟はできてるよ。ここまで来て怖じ気づいてられないもん」

秋山さんの答えも聞き安堵した。

「みんなありがとう。これから大変になるだろうけど頑張っていこう。とりあえず今から島に向かうから島に着くまではそれぞれ休憩してくれ」

祭と不知火さんは返事をし休憩に入った。秋山さんはなぜかこの場に止まっていた。

「どうしたの秋山さん休憩にいかなくていいの?」

「……あのね、ひじりくん防波堤のところでの話覚えてる」

防波堤での話しか告白のことだよな。自分の気持ちを伝えたけど秋山さんの答えを聞く前に大人達に見つかって答えは聞けてないけど迷惑だよな。ちゃんと謝らないと。

「告白のことだよね、迷惑だったよねごめん」

「……違うそうじゃなくて…私が言いかけてたのは……」

秋山さんはその言葉の続きを言おうと勇気を振り絞って言ってくれた。

「私もね、ひじりくんのことが好きなの。」

「えっ…」

それは予想にもしてない答えだった。まさか秋山さんが俺のことを好きだったなんて片思いだと思っていたのに……

「全然そんなそぶりなかったのにいつから?」

「ひじりくんと一緒だよ。二人で防波堤で毎日話をしていて時からだよ。ひじりくんはいつも自分の目的のために色々と考えて生き生きして私にはとても眩しかったわ。私はあの島の巫女として生まれたから何もかも親の言いなりだった。色々と厳しかったけどそれでも私はいいと思ってた。けどひじりくんと出会って話をしすごいと思った。ひじりくんは私に持ってないものたくさん持っていてだんだんひじりくんに引かれていった。この想いを伝えたかったけど島を出ようとしてるひじりくんには邪魔になると思ってなにも言えなかったの」

秋山さんがそんなに俺のことを思ってくれてたなんて……

「ひじりくんは私が友達を助けるために助けようとしたって言ってたけど私はね、好きな人を助けるために行動したんだよ。だからねひじりくんの想いを聞けた時すごく嬉しかったんだよ……」

秋山さんは自分の想いを全て俺に教えてれた。

「秋山さんの想いが聞けて俺も嬉しいよ。ありがとう……」

「秋山さんじゃなくてあの時みたいに空って呼んでほしいな」

「……空と両想いで嬉しいよ」

「私もひじりくんと両想いで嬉しいよ」

お互いの気持ちが確認できお互いにものすごく喜んだ。島を無事に出ることができ好きな人と結ばれて今日は新たな人生の歩みとして最高の日になった。これから大変な困難や苦労が待っているだろうがどこまでも広がる海の向こうを目指して。

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