第20話 生きる理由

 アイフ・アルヘルムは死んだ。

『死』というのはつまり、この世から生命を絶たれるという事だ。

 命の重みを知る事がどれだけ大切なのか、というのを一番実感できる行動だろう。



 雨が降り、まわりから火が消えていく。


 ボクとルディアはベリィ達の元に駆け寄る。容態を確認しなくてはいけない。


 幸い、ベリィは死んではいなかった。フィフォンが手当てをしてくれていたらしい。

 ボクは胸を撫で下ろした。


「良かった...。ベリィが生きていてくれて。それに、ありがとう。フィフォン。ベリィの命を繋いでくれて。」


 隣にいた兵士さんも、腹部はかなり危なかったが、ギリギリ生きている様だ。

 ボクが安堵していたその時、右腕に激痛が走った。最初は敵が現れたのか、アイフが生きていたのか、と思ったが、


「エリセス、右腕は怪我してるんだから、痛いに決まっているだろう。」


 とルディアに言われ、感覚が麻痺していた事に気付いた。余りに気を張り過ぎていたようだ。


「速く病院に行こう、リードを待たせている。」


 とルディアに言われ、ボク達は陸軍の野戦病院へと向かう。


 ゲルンvsフレイスの戦争は、どうやら終結した様で、ゲルンの勝利に終わったらしい。

 勝利とは言えど、大苦戦した様で、病院は怪我人で溢れかえっていた。


 そんな中、ボクもベッドに寝かされ、療養を強いられた。

 その1日後には、野戦病院から国境を越えて、ゲルンの病院へと移送された。

 ボクとベリィだけでなく、やはりルディアやザクロスもかなりの怪我を負っていたらしく、全員何週間かの入院をする事になった。


 戦争終結から3日後、ベリィの意識が戻り、その2日後には、話ができるまでに回復した。

 ただ、こればかりは良い事でも無く、医者達がかなり奮闘してくれた様だったが、弾丸の打ち所が悪かったのだろう。ベリィは

『脊髄損傷』『下半身不随』と診断されてしまった。


 これにより、ベリィが兵士を続けるのは不可、車椅子での生活を余儀なくされたのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 右腕の怪我が殆ど治り、ルディアと一緒にベリィのお見舞いに行った時の話。


「失礼しま〜す。」


 ボクは病室のドアを開け、ベリィの姿を確認する。良かった、元気そうだ。

 ベッドにはベリィが上体を起こして座っていて、隣には車椅子がある。


「おお!ルディア達じゃん、久しぶりだね!」


「1週間ぶりくらいだけどね。」


「あたしにすれば、1週間は久しぶりの範囲なの!」


「まあまあ、病室で大声出すのは良く無いよ、ベリィ。」


「はーい。エリセスさんがそういうなら黙るよ。」


 この間、戦争に行く前の『アレ』が相当効いたのだろうか。そんなに怖くしたつもりは無いのに。


「とりあえず、コレとコレね。あと、コレもか...。」


 ルディアは、紙袋からお菓子を取り出している。この間出かけた時、2人でベリィのために選んできたものだ。


「おおー!GODEVAのチョコレートじゃん!

良いねえ〜、高級品は。」


※この小説はフィクションです。実際の営利団体とは全く関係ありません。


「すごい高かったんだから、ちゃんと食べてね!」


「エリセスさんが買ってくれたの⁉︎絶対食べる。何があっても食べる。」


 自分で言うのも難だが、この子はどうもボクを崇拝している節がある。

 コレは気分が良いと言えば良いが、むず痒い感じもする。なんだか複雑な気分だ。

 そうこうしている内に、ルディアが本題を切り出してしまった。


「ベリィ、怪我の具合はどう?」


「ん〜?まあまあかな。現にこうやって話せてる訳だし、」


「そうか、なら良かった。あと、食べながら話すのやめなさい。」


「エリセスさん、ルディアがお母さんになってしまった。」


「ベリィ、ボクもベリィがいけないと思うんだけど。」


 ベリィは『叫び』の様な顔をして奇怪な声をあげている。コレ人間にできる芸当だったのか。話題が逸れてしまった。元に戻そう。


「まあ良いや。ベリィ、やっぱり下半身は動かないんだよね?」


「そうだよ。だって下半身不随だもん。」


「そっか...。じゃあこれからどうするの?兵士は続けられないんでしょ?」


「うーん...。どっかの事務で拾ってくれないかな...。」


「事務かぁ...。」


 頭の中で、自分の情報網を伝ってアテを探す。


「あ、1つあるよ、拾ってくれそうな所。」


「え⁉︎どこ⁉︎」


「ザクロスの下に付く。」


「......。えぇ...。」


 ザクロスの下ってだけで、どんな激務が待っているかは想像が付く。でも、全く知らないところで働くよりは良いだろう。


「...分かったよ。ザクロスの下でいいよ。」


「ok!今度会った時お願いしてみるよ。」


「うん。」


 さて、ベリィの再就職先も決まった事だし、ここでボクが一番聞きたかった事を聞こう。


「ねえ、ルディア。キミがボクを助けにきた時さ、2人ともスゴい怪我してたじゃん。」


「...ああ、そうだったね。それがどうしたの?」


 ルディアは自分の状態を覚えていないのだろうか。返事が曖昧だ。


「何があったの?なんか激しい戦闘があったとか?」


「あ、それあたしも気になる。聞かせて!」


 (ベリィも上手く乗ってくれたな。いける、いけるぞエリセス!)


「えーっと、話せば長くなるし、あんまり面白くも無いんだけど...。それでも聞く?」


 ボクはさらに押しをかけた。

(これで落とせるはず!)


「教えてくれないとザクロスに聞いちゃうよ?」


 ルディアは長考した後、結論を出した様に口を開いた。


「アイツは間違いを教え兼ねないな...。分かった、私が話そう。」


 (良し!ボクって意外と交渉の才能あるんじゃないかな?)

 因みに、ザクロスに聞いたら『そんなモン教える義理は無ぇ』とか言われるだろう。


「どこから話そうか...。基地を出た辺りからにしようか。」


 そう言って、ルディアは戦争での話をポツリ、ポツリと話し始めた。

 その話は、ボクが考えていた以上に驚愕の話だった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 今回も短めなんです。本当にすみません。

 次回から増やします。

 今回でエリセス視点は終了します。

次回からは元のルディア視点に戻るので、ご注意下さい。


※少しの間更新が止まります。ごめんなさい!

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武力戦線 仮名 永遠 @route1943

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