【7】
「私が国語の教師になろうと思ったのは、高校時代に出会った先生の授業がきっかけでした」
2ヶ月ぶりに届いたかなめ先生からの手紙は、こんな書き出しで、いくら読んでも、なぜ私にそんなことを書いてきたのか要領を得ないのだけど、7枚の便箋にびっしりと埋め尽くされた言葉たちは、確かに私のために書かれたのだとわかった。読むたびに甘酸っぱい果実のような、ひんやりとした心地よさを感じる。
今は夏の教員採用試験に向けて勉強しているらしいとわかってほっとする。
あの人には先生でいて欲しい。でもそういう本音を正直に伝えるのも何だか癪だった。だからちょっと冷たくしてみた。そしたら全然返事をくれないので不安にさせられたけど、結果的にはこれでよかったということなのだろう。
夏休みにでも、会いに行こうか。今なら、会ってくれるのではないか。ふとそんなことを思って、私は返事を書くためのレターセットを買いに文具店に出かけた。今度は素っ気ない葉書なんかじゃなくて、もっと手の込んだ可愛い手紙にしてあげよう。
現代lemonismの諸問題とその超克について 垣内玲 @r_kakiuchi_0921
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