とある国家を舞台に、要職に就く人物らの政治的な攻防を描いた、政治と宗教の物語。
異世界ファンタジー、というかもう歴史群像劇です。読んだ後ものすごく頭がよくなった気分にさせられるというか、なんか「人間は愚かだ……」ってなってるのがすごい。
入れ替わり立ち替わり登場する人物たちの、その個性や魅力に釣られて読んでいたはずが、いつの間にかそこを通じてもっと大きな歴史を見せられているという、その感覚がもう最高でした。異常な食べ出というか、読み応えがすごい。いやいやこれで15,000文字って嘘でしょ?
もう完全に圧倒されてしまって、正直なにを読まされたのかまだわかってない感じ。単純にキャラクターが魅力的で(それも必ずしも「好感が持てる」という意味ではないのがまた良い!)、ただそれを追っていただけのつもりだったのが、でもそのまま「政治と宗教」という複雑な主題までまっすぐ食い込んでいくこの感覚。
彼ら個人の抱えたドラマが、でも一個の人格として情緒や共感のそれではなく、『群』としての人間の利害と絡まり合って、つまりそこから逆算されるものを含んだ形で発露されること。発端は信仰心や矜持だったはずなのに、出力結果が歴史になっている感じ。このミクロとマクロの接続が、あまりにもスムーズでもう惚れ惚れします。これだけ大きな物語を、しっかり身に迫る手応えを持って読ませるってもう魔法ですよ?!
なんだか小難しそうな感想になってしまいましたが、単純に面白い小説です。単純にキャラを追ってるだけで自動的に物凄いところまで連れて行ってくれるので、肩肘張らずに読んでみてください。ぜひぜひ!