ヘパイストスが思い描くもの

食べるものも着るものもデータ化され、3Dプリンターで出力されてしまう近未来。生活のすべてをAIに頼りきっている人間たちが、ある日突然美味しい料理のデータを失って大混乱に陥る──という、SFでもなかなかに斬新な題材でした。

料理はもちろん、昔ながらの『手作業』をすることもなくなり、極めつけには職についている人口すら減ってしまう。機械が進化した代償として、人間が退化してしまったわけですね。

ほとんどの人が自宅から出ない生活をしているので、個人間のつながりも希薄になってそうです。

私は医療技術系の仕事をしておりまして、様々な精密機器を扱うことが多いですが、機器も失敗をする(エラーを出すことがある)という前提があってこそです。なぜエラーが発生したのか? 対処法は? トラブルシューティングができるのは、やっぱり人間なんですよね。

自動化できるのは便利ですが、すべてを任せっきりにして、肝心の私たちが何もできなくなってしまう。そんな未来を思うとゾッとします。

ヘパイストスは、まさにそのことについて警鐘を鳴らすテロを起こしたとされていますが、その先にあるのは人類滅亡ではなく、逆に人類滅亡の阻止なんですよね。

AIに頼りきった生活が楽園と言えるのか? これが本当にテロと呼べるのか? 色々と考えさせられるお話でした。