第5話

 決めるまではそんなに時間はかからなかったな。


 誰もフォローしようとしないなら義務をわたしが果たすのみだ。


 一週間の休暇が終わり、とりあえず母親を無理やりにでも入院させることができたので一旦職場に行った。

 戻る電車の中で文面を練り、自筆した。


『退職願

 この度実家の母の介護をわたくしが担わざるを得なくなりました。

 現在のことだけではなく将来のことを考えた結果、退職させていただくことを決断いたしました。

 これまで役職員の皆様には多大なるご指導・ご支援を賜り社会人として成長させて頂けたのもとても貴重な経験でした』


 さようなら。

 永遠に。


 そして、母親が転倒したその原因が、国指定の難病による半身不随だったことが、何年もそれに気づかなかった病院とは違う病院のセカンドオピニオンによって後になって分かった。




 終

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

親子兄弟夫婦じゃと愛と情とに絡まれて naka-motoo @naka-motoo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る