アルバムの君
勝利だギューちゃん
第1話
高校の卒業アルバムを、開いてみた。
俺のではない。
俺のは捨てた。
とっくの昔に・・・
忌わしい過去があるので、封印したい。
その、気持ちからだった。
なので、高校時代までの、アルバムや文集などは、もうゴミとなった。
灰となり、燃えた。
なので、もう手にする事はないと、思っていたが・・・
しかし、時代を感じる。
共学だった。
制服はブレザー。
女子のスカートは、短くてもひざ下。
今のような、ミニスカだったら・・・
顔を見る。
やめよう。
見せる犯罪になる。
しかし・・・
みんな生きてるかな。
耳に入って来ないだけで、星になった連中もいると思う。
卒業後、すぐにママになった子もいるので、今は、孫がいるかもしれない。
ひとりずつ見て行く。
自分のクラスを・・・
ひとりの女の子を見つける。
微笑んでいる。
微笑んではいるが・・・
「こいつ、とても厚かましかったな」
思わず笑みが漏れる。
『どういう風に?』
「芸能人で例えると、本○美奈子だって」
『それから?』
「この顔で、よく言うな。失礼じゃないのか?」
『それから?』
「女優になって、ハリウッドに行くって。自分の顔、鏡で見た頃あるのかね」
『ふうん。あなた、私の事、そんな風に思ったんだ』
その声に、振り返ると、妻がいた。
この写真の子は、今の妻だ。
同窓会で意気投合して、結婚した。
アルバムは、妻のものだ。
「でも、嬉しかったよ」
「何がです?」
笑顔で言われる。
怖い・・・
「あなたが、そんな冗談を言えるようになったなんて、安心した」
昔の俺は、そんな冗談は言えなかった。
大人しくて、周りとの距離を持っていた。
意気投合したのは、趣味がきっかけだが・・・
「あの頃より、今のあなたのほうが、素敵だよ」
「嫌味か?」
「ううん。本当に。家族になれたんだなと・・・」
やはり、笑顔が怖い。
「でも、ひとつだけお願いしていい?」
「何ですか?」
【私よりも、後に死んで。あの世であなたの、歓迎会をしたいので、なるべく後で・・・】
アルバムの君 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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