第二幕
俺は今喫茶店の片隅にある1人用の机に腰をおろしながらアイスティーとスコーンを食べていた。
さて、どうしたものか、、、
あれは夢であったのではと考える位には夢のようなことが起こっていた。そう考えるしかないが手元にはしっかり50万円入った封筒がある。
これは夢ではないとしっかりと指し示すかのようにある。
俺はあれからお会計を済ませてお店をあっけらかんと出てすぐ帰路に着いた。
悪酔いをしたのだろうと考えこのことについては何も考えないようにしていた。あの荒唐無稽な話に則るのなら日に照らされてやろうと。そう考えていた。
しかし、体は動かなかった。日に出ようとすると鬱病患者のように急に何もする気がなくなるのだ。
あの感覚はもう味わいたくはない。
このことからこの話は信じざるを得なくなった。
後々、自分の鞄から50万が入った封筒が出てきていわば裁判で一番有力な説に確実なる証拠が出てきたかのように完全に信じざるを得なくなった。
そして日が暮れてこれからのことを考えるために自分の家に一番近い喫茶店に立ち寄ることにした。
50万円のうちの1万を切り崩して食べ物を買う。
このままではずるずるお金を使っていきそのまま少しの贅沢をして50万円使い切ってしまいそうだ。
しかし、財布をどこかに置いてきてしまったか、落としてしまったのか、手元に無かったため仕方がない。
さっき買ったスコーンは既に冷めており時計の針は1周している。
まだ何も考えていない。
少しずつ居心地の悪さが増えていくのを考えながら渋々冷めたスコーンとアイスティーに手をつけた。
するとこちらにこの店の店長が近づいてきた。
私の先の前に来てニコニコと言い放つ。
「いつもご利用ありがとうございます。いつもその組み合わせで食べているとおもうのですがお気に召しましたか?」
居心地の悪さがさらに増す。
あー、もうこの店には来れない。
そんなことを思いながら営業マンのような笑顔になりながら答える。
「ええ、とても美味しいです。飽きない味で好きですよ。このスコーンとアイスティー。」
「それは嬉しい限りです。本当にいつもありがとうございます」
そう答えると他のスタッフだけでは回らなくなったのかそそくさとカウンターの方へ戻っていった。
それと同じように俺のスコーンとアイスティーを食べる手は加速し食べ終えると逃げるようにお店を出て行った。
人通りが少しずつ少なくなっていく。
俺はその道を歩く。
そして完全に人通りがなくなってしまった。
この世界にはもう自分一人しかいないと告げるかのうような静かな夜だった。
「すいません、これ、落としましたよ」
急にうしろから話かけられた。
そこには一人の女性が自分の財布を持って立っていた。
みなりは静かながらもお洒落を取り入れておりそれが逆にこの真夜中に不釣り合いで奇妙な感覚となった。
その財布を受け取り、中身の確認をする。
免許証やらなにやらの確認を済ませて立ち返る。
「本当にありがとうございます」
そう述べて立ち去ろうとすると、女性は突然言い放った。
「1人で散歩でもしているのですか?一緒に行っても大丈夫でしょうか?」
少しの間、頭が真っ白になった。
何を言っているんだろう。俺がもし性犯罪者かその予備軍だったらここで襲われてしまうなんて考えなかったのだろう。そうだとしてもこんな財布を拾った程度の縁の男性について行こうと思うのだろうか。
「まあ、少しなら大丈夫ですよ」
そう答えると女性はすぐに隣にいついた。
当たり障りのない話をしながら歩いていた。
「今度、どこかに遊びにいきませんか」
急にそんなことを言い出す。
「この出会いは一期一会だと思うんです。だからそのひとつの出会いを大切にしたい。」
そんなことを言っていた。
自分は先の予定など1つも無いために二つ返事で了承する。
「あっ、でも夜にして頂いてもいいですか?」
「別に大丈夫ですよ」
俺はそう答えると彼女と連絡先を交換した。
彼女の名前はのばらみほと言うらしい。
漢字で当てはめると野原美穂なのだろうか。
そんなことを考えながら彼女をタクシーに乗せて帰路につかせた後自分もひっそりと帰路についた。
影屋 夏山 月 @tukinatuyamano
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