第13話 経営困難
あれからしばらく時が過ぎてその間、パン屋を営業していなかった。
そのためか経営困難になってしまった。
セレナはもうどうする事もできずにいた。
ただ茫然とするばかりでいる。
「営業しないといけないのにできない……」
もうパン屋潰れてもいいよね。
ここまで頑張って来たんだし、もういいよね。
その時。
玄関のドアが開く音がして誰かが入ってくる。
「セレナ、何をしているの? パン屋を営業してるんじゃないの?」
「…………」
身体を揺すられるがセレナは動こうとはしなかった。
「貴女誰?」
「何を言っているの? 貴女の母親よ」
セレナに母親なんていたのかしらね。
きっと母親という存在はいない事にしましょう。
「セレナ、どうしちゃったのよ」
母親と名乗る人物から何か言われているけど、セレナには関係ない。
パン屋は潰れてもいいよ。
「セレナ、パン屋を営業するから鍵を貸して」
セレナは母親と名乗る人物にお店の鍵を貸した。
母親と名乗る人物はお店の鍵を受け取ると急いでお店に向かった。
セレナはお店には行こうとしなかった。
なぜなら、もう働く意欲がない。
パン屋の店主も誰かに引き継がせたい。
今のセレナじゃ経営者なんて無理なんだわ。
精神的におかしいし、こんなんで働いたら余計に悪くするだけだった。
しばらくしてお時間が過ぎると母親と名乗る人物が帰ってきた。
帰ってくるといきなりセレナの頬を手で叩かれた。
どうしてセレナ頬を手で叩かれたのかしら? 悪い事でもしたのかしら? 考えるけど思い当たらない。
それに母親と名乗る人物はどうしてセレナに構ってくるのかしらね。
そんな事をしないでほっとけばいいのにね。
母親と名乗る人物がぶつぶつ何かを言ってるけど、セレナにはぜんぜん聞こえないでいた。
もうセレナは終わりね……。
母親と名乗る人物がパン屋の経営者になればいいのよ。
そうすれば何もかも背負う事もないと感じた。
セレナは母親と名乗る人物にパン屋を引き継がせる事にしようと考えていたのだった。
「貴女にパン屋というお店をあげるわね」
「何を言っているの? セレナの大切なお店じゃないの?」
「もうどうでもいいわね、あんなお店……」
「………………」
母親と名乗る人物はとうとう黙ってしまった。
次の瞬間。
「セレナ、いい加減にしなさいっ! 貴女はパン屋を大好きで経営して営業をしていたんでしょっ!」
「なんでそんなに怒ってるの? 貴女には関係ないでしょ」
「関係あるのよ、貴女の母親だもの、大切な娘」
「大切な娘……」
セレナは心の中で大切な娘というキーワードに引っかかった。
その時、セレナの死んでいる目に活力が生まれた。
「アヤコ? アヤコなの?」
「そうよ、旅から帰ってくればパン屋を営業してないし、どうしちゃったのよ」
「アヤコがいなくなってからセレナ、何もできなくなってしまって」
「今まではパン屋を一人で営業していたじゃない」
一人でパン屋を営業できていたのは目標があったからだ。
でも、今は目標がない。
そのためにパン屋を営業する意味がなくなってしまった。
「パン屋を経営や営業する意味が今はないの、目標もないの」
「だったら、新しい目標を決めればいいじゃないの」
「アヤコがいないとセレナは本当に何もできないの」
「わかった、これからはずっと傍にいてパン屋も一緒に手伝うから」
アヤコが言ってる事はわかるけど、セレナには信じられないでいたのだった。
またどうせ旅に出るに決まっていると決めつけていた。
「今言った事は約束を守る、母親としてね」
「本当に? もうどこにもいかない?」
「貴女を置いてなんてどこにも行かないわ」
セレナはその言葉を聞いて泣いてしまった。
嬉しくて嬉しくて……。
「ほらっ、泣いてないで明日からは今までの分を取り戻すわ」
「そ、そうね、取り戻さないと本当にパン屋が潰れてしまうわね」
セレナとアヤコはパン屋を潰させるわけにはいかないと感じたのか
明日からは今まで以上に頑張る事を決めた。
悪役聖女はパン屋を開店した 一ノ瀬 彩音 @takutaku2019
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