終始前のめりなハイテンションコメディ!

 隣の席に座る憧れの君、完全無欠の美少女(※ただし性格を除く)百地さんに振り回される、『僕』こといっちゃんの物語。
 コメディです。激しい勢いと高いテンションでもって、最後までぐわっと一気に駆け抜けるタイプのドタバタ劇。ある種の不条理劇とも言えるくらいのめちゃくちゃをやりながら、でもなんとなく許せてしまうというか、読み手の意識をふんわり丸め込んでしまうのがすごい。いわゆる『ギャグ漫画時空』というのか、読んでて普通に「そういう世界なんだな」と納得させられちゃう感じ。
 メインキャラクターふたりの人物造形、ひいてはその関係性が好きです。めちゃくちゃな行動力で主人公を振り回すヒロインと、それに渋々——どころかほとんど「この役回りだけは誰にも渡さん!」と言わんばかりの勢いで付き合う主人公。
 特に面白いのが(というか、恐ろしいのが)このヒロインの造形で、ただ言動が突拍子もないだけでなく、現実にそれを実行してしまうだけの力を持っているんです。学力に腕力、権力財力に行動力と、性格以外のすべてを兼ね揃えた完璧超人(でもなぜか見た目だけは妙に地味っぽい:ここ最高に好き)で、つまりただ隣で相槌を打っているだけで大変な冒険に巻き込まれてしまう。といって黙っていても無駄というか、結局構ってもらえるまで同じ話題を繰り返されるわけで、いやこう書くとだいぶ厄介な人のように見えてしまうのですけれど、でも実際は(この作品の中での感想としては)全然そんなことはない。
 彼女自身、別にわがままや気紛れで振り回しているわけじゃないのもありますし、なにより基本的に全部自力でやれる人なので、人に責任を押し付けることがないということもあります(自分で後片付けしちゃう)。でもそれよりなによりこれは主人公のおかげというか、いやむしろ主人公の〝せい〟というべきか、実はこの『僕』(いっちゃん)の方も相当ぶっ飛んでるんですよね。
 とにかく百地さんのことが好きすぎて、なんでも魅力に見えているような状態。彼女を見つめる視線の優しさというか、ことあるごとにいちいち「(カワイイ)」をつけちゃうような、この「百地さん大好き感」がもう本当にいい。これのおかげでどこまでも楽しいというか、むしろお前のその姿勢が可愛いです。頑張って見栄を貼ろうとしてみたり、あと何かと彼女を守ろうとするところとか。なにより、一応ツッコミ役のような立ち位置にはいるんですけど、でも全然彼女のことを否定しないんですよね。本当に可愛いふたり。
 楽しかったです。いや本当「楽しい」というのが一番ぴったりくる、とことん明るくて前向きなお話。ゴリゴリ前に進んでいくパワーが楽しい、スカッと気持ちの良いスラップスティック・コメディでした。kawaii!