黄昏のセピア
水;雨
…
わたしを呼ぶ声は親しきだれか。
かつては一生懸命だった。一心に打ち込んでいた。
どうでも良くはない。
それでも返すのは、それをいつくしみ、感謝しつつも淡いかなしみがわきおこるから。
高くもなく、低くもない素直な心の底は、かつてそうだったものをたぐるように、すがりよっていた。
すぐそばにただぼんやりと感じる。
落ち着ける、心の拠り所で思いのゆくまま、向こうを眺め渡しながら、いつまでも、どこまでも、ないかのようにときがとうとうと歩みゆくのみ。
あると信じているだけで何もいらなかった。
美化された情景と感情が移り変わり、たちかわり微笑みかけてくるのは本当に心地よかった。
そのおもいはずっとではいられないとどこかでわかっているのだけど、知らない場所できっと密やかに眠り続けてくれているのだ。
その黄昏のセピアの幸せをささやかに祈った。
すぐさまわたしはすぐそばの残りものとともに、ぼんやりと光の差すのを待ちわびるのだ。それはきっとほんのり自分勝手で、わがままに違いない。それでもいい。
納得のゆくまで人間のものがなしさに浸って紛れさせた。
懐かしいとおもってしまうのは、懐かしさをさえ懐かしんでしまっているからなのか
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