後編


それにしても、パフパフではしゃぎ過ぎてしまった。手元にはあと6Gしかない。


しかし、悔いはない!!!


「最高の癒しだった。」


それでもはしゃぎ過ぎてしまったため、体の疲れは否めなかった。私は他の部屋を当たってみると、遂に誰もいない部屋を発見した。


「よし!!よーーーーし!!!ゆっくり眠るとしよう。」


若干テンションが戻った私は、装備を外しベッドに潜り込んだ。


「おお、寝具もなかなかではないか。それでは・・おやすみなさい。」


私は深い眠りについた・・・・はずだった。体感的には5~6時間は寝たはずなのだが、疲れが取れてない!?体が重い・・何故だ・・眠ったという実感はあるが、悔しい事に今度は体力が回復していない。


つまりは実際に寝ても回復はしない・・・そういう事なのだろう・・・






「ぬがああああああ!!!分かった!!!もう分かった!!!」


私は今一度町の外に出て、青いぷよぷよし・・・スライムを一匹倒しては宿に戻り受付に声を掛けた。


ピッ


『スファートの宿にようこそ!一晩8Gですが、よろしいですか?』


「たのむぁあああ!!!!」


苛々しながら返事をしたが・・・・・・謎の音楽と共に疲労は抜け、体力が回復した。


「もおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」


宿屋に私の叫び声が響き渡った。


ピッ


『スファートの宿にようこそ!一晩8Gですが、よろしいですか?』


「泊まらねぇぇぇぇぇぇよ!!!!」




残金0G。



****


「さて、仕切り直しだ。」


もうこのままこん棒でもいっかー・・・何て一瞬思ってしまったが、やはり私にも騎士のプライドがあった。外に出て、今度は町の北部に向かってみるとスライムの他に、鋭い牙を持ったコウモリが現れた。


「飛んでいる魔物だ!こん棒では苦戦するかもしれない。」



何て思ったさっきの私をこん棒でボコボコにしてもらいたい。コウモリだろうと『一発叩いたら、一発叩かれる。』システムに変更は無かったので、あっさりコウモリを倒せてしまった。


しかし、嬉しい誤算があった。この似非コウモリを倒すと4Gゲット出来たのだ!!


「ビバ!似非コウモリ!!!」


何やかんやで、スライムを34匹、似非コウモリを32匹倒した私の所持金は196Gになっていた。さらにレベルもかなり上がった。


しかし・・・・溜まったストレスというものは恐ろしいものである。昨日、発散するために無我夢中でスライムを叩いて叩いて叩きまくったが・・・スライムのみを101匹倒していた計算になる・・・・そりゃ疲れるわ。


これで銅のつるぎを購入出来るが、私にはまだ問題が残っていた。そう大切な癒しの話だ。


癒しは一回50G掛かる。結構高い。


交互にスライムとコウモリを倒したとして、

スライム=9匹

コウモリ=8匹


で、ようやくパフパフ1回だ。


うーん・・なかなか稼ぎの効率が悪い。町の者に話を聞くと、北西に向かうと『センカド』という村があるらしい。道中魔物も強くなっていくそうだ。


しかし、私は予想していた。スライムより似非コウモリの方が少し強い感じがしていた。そして落とす金額もコウモリの方が多い。


つまりは魔物が強くなればなるほど得られる額も大きいという事だろう!!ここで思案していても始まらない。


「よし!レッツゴーセンカド!!」


私は早速武器屋に行き「銅のつるぎ」を手に入れ、意気揚々とセンカドの村を目指した。


まずは北にある森に入ると、早速これまで見た事のない魔物が現れた。


しかし・・・・こいつは私を馬鹿にしているのか????


その魔物は先が尖った帽子を被り、頬と思える場所で両手を開き、ベーっと長い舌を出している。


何故だ・・・何故だか『バーカ!バーカ!!』と言われているような気がしてならない。


「おらぁああ!!!」


私は勢いよく銅のつるぎを振りぬくと・・・一撃で倒せた・・・。


「あれ??レベルを上げ過ぎてしまったか??手ごたえが無さすぎる・・・だが、良しとしよう!!5G落ちている。やはり敵の強さに比例して金額が変わるシステムのようだな。」


気分を良くした私は、さらに森の奥に進んで行った。


残金・・・21G



****



森を抜けるとまた草原が広がっていた。結局森の中で戦った魔物はいつものスライムと似非コウモリ、たまにとんがり帽子だった。


うーん・・・パッとしない・・・。


そんな事を思いながら先を進んでいると、新たな敵が現れた!!


しかも人型の魔物のようだ!!!会話できるのかな???


「お前の名前は何と言うのだ???」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・答えない&動かない。


全身をローブで包んでいるその魔物??も、彼奴らと同じシステムにあるらしい。私はこれまでと同じく銅のつるぎを振るった!!が、一撃では倒れなかった!?


「お!!久しぶりの金縛りタイムだ・・・。さて、どんな攻撃がって火!?!?」


なんと、魔物の掌から火の玉が飛んできた!!


「魔法ってやつか??熱ッ!!!」


何て言うか・・・熱い痛かった。


「くそっ!!くらえ!!!」私は焦って再度銅の剣を振るうと魔法使いを倒す事が出来た。


「ふう・・魔法を使う奴がいるとは・・驚いたな。」


しかし、それ以上の驚きそこにはあった・・・なんと落とした金額が、な、なんと16Gである!?スライム8匹分・・・・・ああ・・今までのはいったい何だったのだろうか・・・何故か嬉しさ半分、虚しさ半分であった。


しかし、くよくよしている暇はない。先を進む私に見た事もない大きさのサソリや、骨野郎が次々と襲って来くのだった。そしてこいつらは・・ちょっと強かった。当然それに応じて落とす金額は25G~40Gと大金であり、既に大金持ち気分の私だったが、ダメージを喰らいながら何とか歩みを進めていく内に・・・・少しスライムが恋しくなっていた。


しかし、そんな私の目に『センカドの村』が映った。


「結構遠かった・・・だが、あの村にも癒しがあるかもしれない!!!」


私の足取りは少し軽くなった。断じてスキップなどしてはいない。


さて、センカドの村に入り村人に話を聞くとこの村は「センカド」という名の吟遊詩人の墓があるそうだ。


「ほお。」(興味なし)


しかし慣れとは恐いものだ・・・村人の中には綺麗な女性もいたがその女性は『センカドの村にようこそ!』しか言わないが、何とも思わなくなってきた。


ストレス耐性が付いて来たのだろうか??まぁ、良い傾向だ。私は口笛を吹きながら宿屋に向かった。


勿論、宿屋の主人は無視である。宿の奥に歩を進め、あの癒しを探し求めた・・・探し求め・・・全部の部屋を探し・・・ベッドの下を探し、タンスの裏を探し、探し、探し・・・・・どこにもスファートの宿屋にいたあのような娘が・・・ぱふぱふ娘が・・・


「おらぬではないかぁぁぁぁぁぁぁぁあああいいぃ!!!!!!!!!!」


私の絶叫が宿屋のホールに響き渡ると、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ・・・と例のあの音が連続して鳴った。そこにいた宿屋の主人、男2人、女1人が一斉に私の方に体を向けると・・・


「「「「セン南にこの村に地下にカドの向かう続くと宿には地下ドーサの町よ迷宮があうこそ!階段が隠るらしい。一泊がされてるみあるよ。するたいよかい??」」」」


一気に話しかけられた。


「うるさああああああああい!!!!!!」


ピッ、ピッ、ピッ、ピッ


「「「「セン南にこの村に地下にカドの向かう続くと宿には地下ドーサの町よ迷宮があうこそ!階段が隠るらしい。一泊がされてるみあるよ。するたいよかい??」」」」




もういい・・・。


私は宿屋の主人に一声掛け、体力を回復し、武器屋で装備を一新するとセンカドの村をさっさと後にした。


しばらく歩くと頭が冷えて来て、さっきは大人げなかったと反省した。まぁ、センカドの村にいなかったのは仕方がない。次のドーサの町に期待しよう。


ふふ・・スファートの娘はあざと可愛いタイプの娘であったが、ドーサにいるであろう癒しの娘は、出来ればお姉さんタイプだとありがたい。


そんな事を考えながら旅を続け、次々現れる魔物を倒し、資金稼ぎをしていると、いつの間にかレベルは28になり、お金は8523Gにまでなっていた。


なんと、1回50Gなら、170回癒されるではないか!!!


よしよし!いいぞ!!よく頑張った。


いよいよ、ドーサの町が見えて来たぞ!!


私はスキップでドーサ町に向かっていった。



****


「いないではないかい。」


どういう事だ???この町のどこを探しても、センカド同様パフパフ娘がいなかった。既に私には禁断症状が現れていた。気づく自分の胸の前に両手を上げ、その手をモニモニ動かしている。これは非常に不味い状態だ。


もうスファートの町からだいぶ離れてしまった。私はこの街の東にあるという「スーフォの町」の方が、スファートに戻るより遥かに近い事を確認すると、覚悟を決めてスーフォに足を向けた。



しかし、ここで私はこれまでで最強の敵と出くわした。なんとスーフォの町は巨大な城壁で囲まれていて、入口は石の巨人が守っていたのだ。なぜ・・・なぜここまで私の邪魔をするのだ。


私は半べそをかきながら、鋼の剣を振り回すが、あまりダメージを与えていないようだった。それに対して、巨人の攻撃は強烈だった。


持っていた薬草は全て使い果たしてしまった。私は・・・死ぬのか???


巨人が迫ってくる・・・やばい・・・何か・・・何かないのか??私は焦って腰袋に手を差し込むと、ロゼ城の宝箱に入っていた鳥の羽根飾りを見つけた。

くっ・・・もうこんな物しかもっておらぬ。


腹立つことに、あの王冠白鬚じじいの顔を思い出してしまった。


「くそぉぉおおおおおお!!」


苛立った私は、羽根飾りを投げ捨てた。






ドゥイーーン!!ドゥイーーーン!!!



今まで聞いたことが無い音がすると、突然私の体は遥か上空に吹き飛ばされた。



「あ・・・・死んだ・・・・・。」





****






ピピピ・・・チチチ・・・と鳥が鳴く声が聞こえる。


ここは天国か??私は死んだのか???


目を覚ました私は体を起こし立ち上がると、そこには見覚えがある城があった。


「おお・・・ロゼ城ではないか。」

あのアイテムは、ここに瞬間移動するアイテムだったのか・・・・助かった。


私は胸に込み上げるものを感じると、一目散にパフパフ娘のもとへと向かった。







パフパフ・・・・パフパフ・・・



ああ・・・・やはり最高である。



****


あれから半年、私は大サソリや骸骨を倒しては、パフパフを楽しむ生活を続けていた。


「さて、今日も帰ってあの娘に癒してもらうかな♪」


ルンルンとスキップしながらスファートの町に戻ろうとすると、上空にキメラが現れた。


おお!?!?久しぶりの強敵だ!!!


私は慌てて剣を構えると、キメラは何やら小さな箱を落としただけで去って行った。


不思議に思いながら箱を開けると、そこには望遠鏡が入っていた。


どうゆう事だ???望遠鏡を手に取り首を傾げていると、南東の方から『ドーン!!ドーン!!』という音が聞こえて来た。


ん???何かやっているのか??遠くて見えない。私はさっそく望遠鏡を覗いてみると、音がする所に白いドレスを着た美しい女性が立っていた・・・・だが、表情が怖い・・・まさに鬼の様な表情だ。


彼女の周りで、魔法使い達がアワアワしながら空に向かって魔法を放っている。


ん??魔法使いの一人が旗を持っていた。


旗に焦点を合わせると


「早く助けに来いや!!!こらぁぁああああああ!!!」


と書いていた。


何それ・・怖い。


さらに、対岸の魔王城の方からも同じくドーン!!ドーン!!と音がした。


今度は何だ??


仕方なく魔王城に掲げられてる横断幕に焦点を合わせると


「半分あげるよ????(/・ω・)/」


と書いてあった。


「いったい何の事????」


しばらく考えたが理解不能だった。


私は望遠鏡を投げ捨て、スファートの宿屋に足を向けるのだった。



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パ、、、、一身上の都合で最初の町の宿屋から離れられない。 ha-nico @ha-nico

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