中編

「ああ、外は気持ちいいなぁ。」


うなだれながらロゼ城の南門から外に出ると、城内の鬱蒼とし雰囲気とは真逆に外は晴天で、草原が広がり、爽やかな風が吹いていた。


気持ちの良い風に当たり、私は思わずひと伸びして大きく深呼吸をした。


少し気分が軽くなったので、先に進むと数キロ先に海があり、その対岸におどろおどろしい城がそびえ立っている事が分かった。


「お!!もしかしてあれが魔王城か??どうやってあそこまで行くのだ??」


などと疑問に思ったが、それよりもまず休息を取らねばならない。城の東側に目を向けるとスファートの町が見えた。確かに目と鼻の先だ。


「よし!歩いて15分くらいで着きそうだな。」


意気揚々と私はスファートの町に向かってトコトコ歩いていると、草むらから『青いぷよぷよ』したのが出てきた。


「こ、これが魔物か??あああ!!武器無いいい!!!」


し、しかし弱そうだ!素手で倒せるかもしれない。


私は戦闘態勢を取ったが、、、、??????


青いぷよぷよは一向に何もしてこない。


「攻撃しても、いいのかな??いいですかーーーー????」


私は攻撃の意思を伝えたが、それでも反応が無かった。戸惑いながらも青いぷよぷよした魔物に対してキックをお見舞いしたやった。


おお!!なんかのけ反ったぞ!!ダメージを与えたようだ。


「よし!!この調子で連撃だ!!!パンチ、、???あれ??」


急に体が動かくなった。


「痛っ!!!」


何かと思えば青いぷよぷよした奴が体当たりをしてきていた。


「ダメージはそんなにないが、なぜ体が動かないのだ??」


このまま動けないとさすがにまずい。そう焦っていると・・・


ピッ


お!?あの例の音とともに体が動くようになったぞ!!


しかし不思議だ・・またしても青いぷよぷよは何もしてこない。まるで攻撃されるのを待っているように見える。


「よし!!くらえ!!」


私は2撃目を与えた!!が、また体が動かなくなりヤツの体当たりを再び受けた。


もしかしてこの世界の戦闘は『1発叩いたら、1発叩かれるシステム』なのか???そんなバカな!?!?しかし考えている暇はない、体が再び動くようになったぞ。


「ええい!!ままよ!!」


私が3撃目を与えると、青いぷよぷよの魔物はひっくり返ると『パッ』と姿を消した。


「倒したのか???」


うむ、倒したようだ。姿が消えたことも驚いたが、消えた後に『チャリーン』という音がしたので、青いぷよぷよの魔物がいた場所を調べてみると『2G』落ちていた。


なんで、魔物を倒すとお金が現れるのだ?


?????????????????????


「ハッ!!いかん!!!この世界で考えてはいかん!!!」


私はブンブン!と頭を左右に大きく振り疑念を思いきり振り落とした。気を取り直し少し歩くと『スファートの町』に到着出来た。


町に入るなり『剣』と『盾』の絵が描いてある看板が目に飛び込んできた。


「武器屋だ!!さすがにこのまま素手で戦い続けるわけにはいくまい。」


何を隠そう私は元の世界で騎士だった男だ!!やはり騎士には剣である!!


私は剣を購入するため、疲れた体に鞭を打ち店内に入った。


ギィーーーー、バタン!


店に入ると『ピッ』という音が鳴り


『ここは武器と防具の店だ!何か買うかい??』


と、小太りの店主と思われる男に声を掛けられた・・・・が、何だと!?!?


『こん棒:60G』

『銅の剣:180G』

『皮の盾:90G』


私はそう書かれている値段表の前で、122Gを強く握りしめ、プルプル体を震わせ青筋を立てていた。


「あの腐れ王冠白鬚じじい・・・・」


嫌がらせか?やはり嫌がらせなのか??王の間で剣が欲しいって言ったよな??確かに言ったよな????あのじじい『今頃武器屋で唖然としとるのかのぉ。プークスクスww』とか思ってるんじゃねーだろうなぁ・・・。




「もおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」





狭い店内に私の叫び声が響き渡った。


ピッ


『ここは武器と防具の店だ!何か買うかい??』





ギィーーー、バタン!


私はこん棒を手にし、店を後にした。。。残金62G



****


心底疲れたので、私は今度こそ宿屋に向かった。


「お!」


『INN』と書いてある看板を発見した。


宿屋に着くまでに何名か町人と思われる者達とすれ違ったが、たぶん疲れるので声は掛けなかった。少し慣れてきている自分が嫌だった。


宿屋に入るとすぐ受付があった。私は早速受付の者に泊まる意思を伝えてみる事にした。


「すまんが、すぐ案内出来る部屋はあるかな??」


ピッ


『スファートの宿にようこそ!一晩8Gですが、よろしいですか?』


「ああ、頼む。」


ピッ


『それではごゆっくりお休みくださいませ。』


「ありが・・と!?」


突然目の前がスーッと暗くなると、妙な音楽が鳴った。鳴ったと思えばパッと明るくなり


『ゆうべはよく眠れたようですね。それではいってらっしゃいませ。』


などと、ニコニコ顔の受付が頭のおかしな事をのたまいやがる。


「は????あれ???」


何故だ???確かに体力的な疲れは無くなっている。空腹感も無い。しかし、実感がない。なぜか記憶を辿ると昨夜この宿で食事をして、ベッドでゆっくり寝ているという記憶があるでは無い!?しかし記憶にはあったものの実感が一切無い。


なんだこのモヤモヤした感覚は・・・体力は回復しているが、メンタルは打ち拉がれたような気がする。


「あの・・・。」


ピッ


『スファートの宿にようこそ!一晩8Gですが、よろしいですか?』


「泊まらねーよ!!!」



残金54G




「うああああああああああああああああ!!!!」


私は町の外に向かって走り出した。


そして叩いた。これまでのストレスを発散するため、こん棒で魔物を叩いて叩いて叩きまくってやった。


テレテッテッテッテー♪


何処からともなく奇天烈な音楽が鳴ると、宙に文字が現れた。


ピッ


おふえらはレベルが1上がった。


力が2上がった。

すばやさが1上がった。

たいりょくが2上がった。

かしこさが1上がった


ピッ


「やかましいーーーー!!!かしこさなんか上がるかい!!!むしろ下がっとるわ!!」



ハァ‥ハァ‥ハァ‥


魔物との戦闘よりも、ツッコミに体力を奪われた。しかし、その後も叩いて叩いて叩きまくっていると何度かレベルというものが上がった。最初は3回の攻撃が必要であったが、一撃で青いぷよぷよした魔物を倒せるようになってきた。



「よしよし・・・だいぶストレスも発散できた。おお!!256Gも貯まっているじゃないか!」


「これで剣が買えるぞーーーい!!!」


これまた意気揚々とスファートの町にやって来た私だったが、繰り返した戦闘でほとほと疲れていた。町に戻る前に綺麗な池を見つけた私はそこで体を洗い流して多少スッキリはしていたが、どうにも睡眠を取ったという実感が欲しかった。


武器屋は後回しにして、私は宿屋に向かった。宿屋の受付に声を掛けてもまた同じことになると思った私は、受付を無視して仮眠を取れる部屋を探す事にした。


1階にある部屋のドアを開けてみると、ちゃんとベッドがあるではないか!


がしかし、部屋の中に無言で周回している者がいた・・・・私は静かにドアを閉めた。


今度は2階に上がり廊下を歩いていると、青い髪をツインテールにしている若い女の子が部屋と思われるドアに寄り掛かり立っていた。

20歳前後に見えるその女の子に私は一瞬にして心を奪われてしまった。

ちなみに私は24歳だ!同僚から老け顔だと言われている・・・が、やかましい!!


女の子は、まつ毛は長く、瞳はキラキラしていた。淡いピンクの唇は柔らかな笑みを浮かべていた。


可愛いいいいいいい!!めちゃくちゃ可愛い!!!、、、、のだが、なんかちょっとエロい。


背は私の首元くらいで小さい、小柄だ、、、、小柄だが、お胸様が大変なことになっている。はちきれんばかりだ。胸元がVの字に大胆に開かれた白いタイトなサマーニットのTシャツを着ているが、お胸様の影響でおへそがちょっと「こんにちは」をしている。


はぁい、こんにちわぁ。


そして太ももを少し覗かせた青いフレアスカートにレースアップのサンダルを履いていた。


うん、可愛いエロい。カワエロ????だ。しかし何なんだこの圧倒的な存在感は!!!光輝いて見えるぞ。なぜこのような子がこのような所に、、、


「あの、、なぜこのような所に??」


ピッ


こちらに気づくと、その娘は首を少し傾け上目遣いで


『あ!素敵なお兄さん。パフパフいかがですかぁ??たったの50Gですよっ♥』と少し恥ずかしそうに言ってきた。


「あがががががが・・・がわいい!!!」


あざとい!!!!めちゃくちゃにあざとい!!!超ド級にあざと可愛い!!!オッケーッス!!全然オッケーッスよ、隊長!!!!!


ハッ!?!?・・・ゴホン!!(咳払い)この世界に来て初めてときめいてしまったようだ。

しかしパフパフとはどのようなアイテムなのだ?武器屋にも道具屋にも無かった。ここでしか買えない裏アイテムなのか??手元には256G、、、まだ余裕がある。よし!分からないが可愛い子だから買っちゃおーーーっと!!!!!!


ピッ


50G支払うと、彼女は微笑み私の手を取ると部屋の中に招き入れた。


部屋の中は薄暗かったが、繋がれた彼女の手に導かれベッドに座らされた・・・・・ハッ!!!油断した!物取りか!この中に他の者たちが潜んでいるのでは????


しかし、物取りなら部屋に入ってすぐ襲われるはずだ、、、少し戸惑っていると『ぽゆん』と膝の上に柔らかな重さを感じた。


ぽゆん??


柔らかな感触を不思議に思っていると、徐々に部屋の暗さに目が慣れてき・・た・・が・・・私の目の前にむき出しの大きなおぱぱいーーんが現れたではないか!?


なんと!彼女が私に向かい合わせで膝の上に乗っているではないですか!?


「え??え???いったい何を???」


『えへへっ、じゃあ、いきますね♥』


パフ、、パフ、、パフ・・・・。


パフ、、パフ、、パフ・・・・。


や、、柔らかい。わ、私の顔がすべすべで少しひんやりとした柔らかな感触に包まれる。しかも、やわらか~~な圧力が掛かっては抜け、掛かっては抜けを繰り返す。


この世界に来て最高の繰り返しだ!!


素晴らしい!!こ、、これはまさに大聖堂に響き渡る聖歌のようだ。深く心が癒されていく・・・。(アホである)






しばらく感触を堪能していると『えへへっ♥これでおしまいです。ありがとうございました。また来てくださいね♥』と彼女はニッコリ微笑んだ。


終わりか・・・しかし、ありがとうございました・・・・・だと!?!?




それはこちらのセリフではないかぁぁ!!




部屋を出た私の手元には、まだ206Gあった!銅のつるぎを買っても、宿屋1回泊まれるくらいはある。


しかし残金を数えていると、彼女が部屋から出てきて先程と同じ様にドアに寄り掛かった。


可憐だ・・・可憐である。


また、客待ちをしているのか??しかし、この世界の住人が彼女に自分から声を掛けるとは思えない・・・という事は、私を待っているの・・・いやいやいや!!私は銅のつるぎを買うのだ!!買って魔物を倒し、魔王を倒し、この世界から離脱するのだ!!







ギィーーー、バタン!!


部屋を出た私の顔はだらしなかったでだろう。ああ、そうであろう。









残金6G。

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