パ、、、、一身上の都合で最初の町の宿屋から離れられない。
ha-nico
前編
ピッ
ん??どこだ?ここは?
気づくと暗闇の中に立っていた。ここは家の中だったはずなのだが??
先程、仕事を終え充実感に満たされていた私は自分の家のドアを開けたはずなのだが・・・。
ピッ
奇妙な音が鳴ると暗闇に白い文字が浮かび上がった。
『なまえを おしえてください ****』
「は???」
ピッ
『なまえを おしえてください ****』
ん??私の名前か??「私の名前はオフェラトリウムだ!!」
ブブー×
んん??
「オフェラトリウムだ!!」
ブブー×
「ブブー×とはどういうことだ!?バカにしているのか??父母が一生懸命考えて神に奉献する唱からいただいた素晴らしい名だぞ!!!!ブブー×とは失礼な!!」
ピッ
『なまえを おしえてください ****』
「何度も何度も!!いいかげんにしろ!!私の名前は オ・フ・ェ・ラ『ピッ』
『「おふえら」様ですね。登録致しました。』
なにーーーー!!登録だと???なぜ平仮名で、、いったい何に登録したのだ!?しかも4文字縛りだっただと!?『フェ』が『ふえ』になっているし!!おかしなところが満載ではないか!!
し、、しかし逆に登録されてしまったとなれば『ェ』が『え』になってて良かったのかもしれん。『ぇ』だったら完全に卑猥な名前だ。歩くセクハラになってしまうところだった。
だが一抹の心配もある。自分で試してみたが早口や流暢に発音しちゃうとやはり「ピーーーーーーをピーーーーーーする(自主規制)」っぽく聞こえてもおかしくない!!!
「やっぱりちょっと待て!!!ちょと待て!ちょ、ちょっちま『ピッ』
妙な音と共に周囲が明るくなると、目の前に王冠被り、真っ赤なローブに身を包んだ白髭のじじいが現れた。
一体なんだ??ここはどこだ??目の前にいるのは王か????色々質問したい。
ピッ
『おお、「お●ぇら」よ!!』
「待てこるぁぁぁぁぁぁぁ!!いきなり流暢に発音しやがって!!しかも『え』を『ぇ』にしてたよね???絶対してたよね??わざとだよね??」
ピッ
『よく来てくれた!!待っておったぞ!!その昔、、、、、、』
私のツッコミに一切触れる事なくこのじじいは話を続ける。解せぬ、それにしてもなぜ話し始める前にいちいち『ピッ』という音が聞こえてくるのだ??問いかけても聞こえてないのか王冠白髭じじいは話を止めない。
仕方が無いので「ピッ」という音を煩わしく思いながらもちゃんと話を聞く事にした。
何々??むかーしむかし、ある勇者が魔物を封印したが、最近魔王が現れて封印を解いてしまったと、このままでは世界が滅んじゃうから魔王倒してなんとかしてちょ。という内容だった。
『頼んだぞ!!!』最後にそう言うと王冠白鬚じじいは、たまに瞬きをするが一切反応しなくなった。
もう何も言ってこないのか?急に『頼んだぞ』と言われても困るんだが・・・。仕事もあるし、何より帰りたい。
「あの、、申し訳ないのだが、私は受けるとは言っていない。」
ピッ
『頼んだぞ!!』
ファッ!?!?ごり押しですか??
「話を聞いてもらいたい。」
ピッ
『頼んだぞ!!』
「いや、あの、、ですからね」
ピッ
『頼んだぞ!!』
「隣の国から兵が攻めてきたんだって。へーーーー。」
ピッ
『頼んだぞ!!』
こ、、、恐い。会話が全く成り立たない。
もう一つ恐ろしかったのは、この王の間にいる黒いローブを着たお年寄りが、何も言わずうろうろと同じところを徘徊している事だった。
つ、、疲れる、、そして恐い。ここは一旦了承するしかなさそうだ。そう言えば、さっきの説明でそこにある3つの宝箱の中身は自由に使っていいって言っていたな。
では遠慮なく。
1つ目の宝箱を開けると「120G」が入っていた。
ふむ、こちらの貨幣か??やはり先立つものは金だな。多いのか少ないのか相場が分からないが、まぁ、王の施しだ!多い方なのかも知れない。ありがたく頂戴しよう。
2つ目の宝箱を開けると「鍵」が入っていた。鍵???私が寝泊まりする部屋の鍵なのだろうか??ふむ、まずはありがたく頂戴しよう。
そして最後の3つ目の宝箱を開けると、、、何これ??鳥の羽飾りのような物が入っている。んん????お守り???いや、普通戦え!魔王を倒せ!って言うならまず武器を持たせるだろ!
いやいやいやいや、ないないないない!
「あの、宝箱の中身はありがたかったのだが、出来れば『剣』をいただきたいのだが・・・。」
軽くではあるが、ある程度の防具を装備していた私だったが、武器は持っていなかった。なので剣を所望したのであったが・・・
ピッ
『頼んだぞ!!』
くっ!!!!いかん、魔王より先にコイツを倒したい!!グッと拳を握りなんとか堪えた。
しかしもう王は当てにならない、何とかして欲しいので怖いが意を決して徘徊している黒ローブのお年寄りに話しかけてみた。
「あのーーー、私は騎士なので、剣をいただきたいのですがーー。」
ピッ
『おふえら殿はこのロゼ城の姫の事はご存知ですかな???』
ファッツ!?!?!?これまたいきなり、、、いや知らんがな。ロゼ城って名前も今初めて聞いたくらいだ。
また、『ピッ』という音と共にお年寄りが私の意思に関係なく説明を開始する。
ここにいる奴らは誰も人の話を聞きやしねーーーー!!!!!私は壊れて自分のキャラを見失っていた。
仕方が無いのでまた話をちゃんと聞くと、この城には「ロゼ姫」という王の一人娘がいたが、半年前に魔物に誘拐されてしまったらしい。なので、魔王倒しに行くついでに姫も助けてきてちょ。という内容だった。
ふざけた内容だ。それを一人でやれと???他に戦える者はいないのか??
見渡すとこの部屋の出入口と思われる扉の両脇に兵士が立っている。おお!!それに槍を携えているではないか!!
私は双方に話しかけたがどちらも『おふえら殿。どうかご武運を。』としか言わない。
いかん、、ストレスが溜まる。最初は同じことしか言わないこいつらが恐ろしかったが、徐々にイライラしてきた。
しかし、唯一良かったのは年寄りも兵士も私を『おふえら殿』と呼ぶことだった。やはりさっきの王冠白鬚じじいが流暢だったのは私の聞き間違いだったのだろうか??
試しにもう一度王に話しかけてみると
『おお!!お●ぇらよ!!・・・中略・・・ではまた会おう!お●ぇらよ!頼んだぞ!!』
てめぇぇぇぇぇぇぇぇ!!ワザとだろ!!絶対ワザとだろ!!!こんなに怒りが込み上がり、これ程疲れたのは人生初めてだ。
もういい、、ここから出よう。
私は扉を、、、、開かない!?!?鍵がかかっている。
・・・・・イジメか??これがイジメなのか??もう嫌な予感しかしない。まさか、、、まさか、、、私は先程宝箱から手に入れた『鍵』を差し込んだ。
『ガチャ』
ピッ
『扉が開いた。しかし鍵は消えてしまった。』
なんでやねん。。。
おい!!兵士よ。何食わぬ顔をしてそこに立っているが『こいつさっき自分の部屋を用意してもらってると勘違いしてたぞ。好待遇希望ですか?プークスクスww』とか思っているんだろ???何とか言えこるぁぁあ!!
ピッ
『おふえら殿。どうかご武運を。』
もうイヤ。
私はガッッッッックリとうなだれたが、いつまでもこうしてはいられない。私は切り替えが早いのだ!!!気を取り直し王の間を出て情報収集をすることにした。
王の間を出ると城内は広くて立派だった。立派なのだが、人の声が一切しない。恐ろしい。恐ろしすぎる。
だってこんなに人がいるのに・・・。
よく見るとただ立っている者もいれば、先程の黒いローブの年寄りのように同じところをうろうろ徘徊している者もたくさんいた。身震いがした・・・もうここが魔王城なのではないか?とも思えるくらい恐かった。
またしても意を決して、城の人達??(もう人なのかも怪しい)に話しかけ情報収取をした。
結果をまとめてみると
○魔物達がいつ攻めて来るか分からなくて不安な日々系 47%
○ロゼ姫が心配系 34%
○旅の心得系 8%
○魔物に仲間を殺された系 8%
○その他 3%(元の世界に戻れる系のネタはゼロ)
だった。
しかしマジで誰一人として会話が成立しない。反応はやはり王の間の連中と同じだった。『ピッ』という音が鳴るのも同じ、それぞれ話す内容は違えど、同じ話しか繰り返さない事も同じだった。
最初数名に何度か違う質問をして会話のキャッチボールを試みたが徒労であった。私は途中から諦めて一度話を聞くだけで終わらせる事にした。
同じテンションで同じことを何度も何度も平気で話す人々は恐ろしいものだったが、その中でも一番恐ろしかったのは、『仲間が魔物に襲われ殺されたんです!!』と泣き叫んでいた者だった。
仕方ないではないか、ボロボロと涙を流しながら私に惨状を訴えてきたが、話し終えると『ピッ』という音とともに、何もなかったような顔をして徘徊し出すだぞ!!思わず「ひぁああ!!」と悲鳴を上げてしまった。くっ、、不覚だ。
しかし、さっさと魔王を倒してこの世界から抜け出さないと私はおかしくなってしまいそうだ。
先程「そうだ!書物とかに元の世界に帰れる方法が載っているかもしれぬ!!」そう閃いた私は書物をめちゃくちゃ探した。広い城内を隈なく探してようやく、ようやくひとつの本棚見つけた。
「あったぁぁぁ!!!」
喜んで本を手に取ろうと指を掛けたが、、、取り出せない!!!!!いいいいいいいいいいい!!!!
見た目は本物のように加工してあるが、樹脂のような材質で作られていた。
「食品サンプルかぁ!!!」私のツッコミが城内に響き渡った。
と、言うことでこのままでは本当に頭がおかしくなってしまいそうだ。
今は『魔王を倒す!』という最終目標を達成することにしか希望は無い。
「待っていろ魔王!!!必ずやお前を・・・・だが今日は疲れた。ひどく疲れた。休みたい。」
情報からすると、この城のすぐ目と鼻の先に『スファート』という町があるらしい。
よし町に行こう。町なら宿屋があるはずだ。私はうなだれながら城門に足を向けるのだった。
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