第3話
心優は 不思議そうな顔で
診察書を片手に持つ 陽翔を見ていた
『 あはは、見られちゃったか 』
『 乙女のベッドを勝手に漁るなんて 犯罪だぞ〜 』
心優の言葉は何か 篭っているような気がした
僕はその時
言葉を一言も発しなかった
『 正解 』が見えなかったから、
心優はごめんねと言っていた
『 自分がどんな病気か隠していて 』と
病室を後にし家に帰ろうとすると
病院の自動ドアの前に 一人のフードを被った少年がいた
そして すれ違いざま 陽翔に向かって少年は言った 『 あなたに人を信じる覚悟はありますか?』と
一瞬フードの隅から見えた瞳には
一切の迷いが感じられなかった
家に着くと ご飯も手につかず
一人 自分の部屋のベッドに篭り考えていた
会って間もない
関係も浅い 何も彼女のことを知らない
あの時 心優は 何も発しなかった僕を見て
どう思っただろうか
『 裏切られた 』と思っただろうか
『 不安 』だったろうか 裏切られる
辛さは人一倍 自分が分かっていたはずなのに
その夜
後悔と自分への嫌悪感が入り交じり
枕は濡れていた
次の日
『 お兄ちゃんどこか行くの? 』
着替えをする陽翔を見て 妹の鈴は言った
今日は 同じクラスで幼なじみの
高峯と図書館で勉強会をすることになっていた
『 おーい!こっちこっち 』
図書館に行くと
いつものように 高峯が話しかけてきた
高峯の 横には一切 勉強道具は
見当たらなかった
『 何をしに来たの? 』
少し呆れた顔で言うと
高峯は『 見守る 』と言い笑っていた
俺には友達がいない。
一緒に語り合える仲も無い
昔 母親を亡くし荒れていた時
俺は病み、孤立していた
クラスの中では
ただ単に暗くて 何を考えているか分からないヤバい奴
少しずつ 周りから人が消えていくのを感じていた
そんな時 現れたのが高峯だった
太陽のような笑顔で どんなに俺が振りほどいてもついてきた
ある時 根負けし 今に至る
『 今 自分には何が出来るのか 』
色々考え込んでいたのか
何故か 俺は
高峯にある質問をしていた
『 人を信じる覚悟とは何か 』
昨日 謎の少年が言っていた言葉だ
すると 高峯はすぐさま答えた
『 自分が相手をどう思ってるかだけでいい』
『 覚悟なんていらない 』と
こいつは 凄いアホだけど
たまに意表を突くことを言う
ケタケタ楽しそうにアホみたいに笑う
何かが吹っ切れた気がした
勉強会は終わり 別れ際
陽翔は 高峯に感謝の言葉を伝えた
『『 ? 』 』
だが 高峯は不思議そうな顔を浮かべていた
その日
根暗で不真面目で 陰気な自分に1つ 誓った
『 自分がしたいと思うことをしようと 』
そして あの日から2日間が経った今
俺はまた この病室の前に立っている
『 失礼します 』
ノックと同時に病室の扉を開けると 寝ている心優のベッドの近くには ある日の フードの少年が座っていた
『 ピー、ピー、ピー、 』
部屋の中に看護師さんの姿は見えない、
陽翔がゆっくり近づくと 突然 少年は
か細い声で言った
『 姉ちゃんが意識不明になった 』と
誰も手に負えない状態で
生死をさまよっていると
ずっと 君と きっと 伊吹とろろ @tororo_ibuki
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