第2話

夏休み 3日目


朝 ベットから目覚め 机を見ると

昨日の手紙が置いてあった


『 午後2時 病院集合

東京のおみやげ、 』


『 夢じゃなかったか.. 』


ベッドを離れ

階段を降り リビングへと行き

テレビを付けると

東京の話題が取り上げられていた


《 七色ロール 》

渋谷で

中高生を話題に ネットなどでも多く取り上げられる菓子パンの1つ

中にはチーズがぎっしりと入っており

外は 虹のような七色の生地で覆われているらしい


テレビを眺めていると

後ろから なにか 硬い物体が背中に突撃してくるのを感じた


『 お兄ちゃん!遊ぼ!遊ぼ! 』

5歳の妹の鈴


『 ダメだ。今日はお兄ちゃんは

一生に一度の旅に出てくる。 』


鈴は 少し引いたような表情をしていた


『 お父さん!!

お兄ちゃんが壊れた〜 』


葉月家はいつも 賑やか、

妹の鈴は お母さんが残した最後の宝物だと

いつも父は言っていた


午前11時

色々と用意を済ませた


今になって 自分でも改めて思う

夏休み中 自分から外に出るのは相当

異常なことだと


陽翔は重い足取りで駅へと向かった


夏休みとはいえ 平日

社会人は変わりなく時を過ごしている

駅に着くと 沢山の人が見えた


品川から大崎、五反田 目黒 恵比寿


最高気温29℃

一人、たった一つのパンを買うために何をしているんだと

満員電車の中 我に返っていた


《 七色ロール 》

渋谷駅に着くと

大々的に売り出されていた


『 七色ロール2つお願いします 』

『 あいよー! 』


周りはカップルだらけ

男一人で買いに来ているのは 他に見えなかった


『 おーい!ひなと〜 』


でかい声 見覚えのある巨体


やってきたのは 偶然立ち会わせた

同じクラスの 高峯 輝

小学校からの仲で無駄に絡んでくる

とても 馬鹿で昔から 勉強を教えたりしていた


『 陽翔もこういうの買いに来るんだな〜 』

『 妹に頼まれてさ 』

『 いいお兄ちゃんしてんじゃねえかよ〜!』


肩をすごい勢いで叩かれた


『 これから 中野たちと遊ぶんだけど陽翔も

来る? 』

高峯はいつも 嘘偽りなく 幼稚園児のように

キラキラした純粋な笑顔をする

小学生の頃から こいつからの誘いは

何故か断りずらかった


『 今日はいいや ごめん

約束 があってさ。 』


不思議なそうな顔を浮かべる高峯、


ビニール袋が擦れる音同時に

薫風が吹き荒れていた


『 高峯 今何時? 』

『 1時10分 』


約束の時間まであと 50分

急いで病院へ届けることにした


『 はぁはあ..何とか間に合ったか 』


病院へ着くとすぐに病室へと向かった


病室の前に着くと 同時に扉が開き

そこには 心優の姿が見えた

『 2時25分、おかえり 』

『 はい。これ 』

袋を差し出すと そのまま手を掴まれ病室内へと入れられた

『 さっ!座って座って〜 』

やはり 僕の言葉は通ることはなかった


心優はすぐに 袋を開けた

『 2個.. 』

こちらを 向いてニヤニヤした表情を浮かべる

『 陽翔君も食べるつもりだったんじゃん 』

『 そりゃ、気になる 』


少し照れた 陽翔をクスクスと笑いながら

心優は 七色ロールを頬張った


『 うまぁあぁ 』

口から溢れ出るほどのチーズに

目を煌めかせるほど 心優は 感動していた


その時 陽翔の頭には1つの疑問がよぎった

『 なんで俺たち一緒に食べてるんだ?』


『ん〜 友達だから! 』

軽い答え、まるで 初めて玩具を買ってもらった子供かのように夢中な横顔を陽翔は

眺めていた


『 ガララッ 』


突然 病室の扉が開いた


『 真宮さん 診察の時間です 』

『 はーい 』


心優は 看護師さんと共に

診察室に向かい

部屋の中で待っているように言われた


『 はぁ、雑だな 』

心優の机には パンの欠片が散らばっていた


すると ベッドの布団の中に

1枚の紙が見えた


《 診療録 》

氏名 真宮 心優


《 主要症状名》

忘目病


この紙を見た瞬間 無意識に

何故かスマホを開いていた


忘目病 『 検索結果 』


成長するごとに 少しずつ記憶を失っていく

ごく稀に 10代を中心に発生する原因不明の病、

20歳を迎えた患者は未だいないという


それを見た瞬間 動揺からか

スマホの電源は勝手に落ちていた


『 ガララッ 』

静かな風が吹き

後ろから 扉の開く音が聞こえた

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