ずっと 君と きっと

伊吹とろろ

第1話

《 幸せノート 》

僕は この1冊の本に手を触れた


蝉の鳴き声と共に夏風が吹き荒れる。

『 明日から夏休みだが

羽目を外しすぎないように。 』


『 ウォおぉぉぉーーー !!』


夏休み前 最後のホームルーム

クラスは歓声に包まれていた


『 夏休みの最後 花火あるらしいよ〜

みんなで行こ〜! 』

クラスの 上位の人達は男女で集まり

遊ぶ約束をしている


クラスから人が 少しずつ消えていく中

僕は1人 眠りに入っていた


2時間後


『 起きろ 葉月、もう帰宅時間だ 』


先生に頭を叩かれ 僕は飛び起きた


『 あと、これ 』


先生は1枚のファイルを手渡してきた

『 真宮 』

学校にあまり来ていない人

顔すら1度も見たこともない


小さい頃から身体が弱く

病院に籠りっきりらしい


『 ハズレくじを引いた.. 』


夏休みに入る前日というのに

知らない人に会いに 2駅ほど離れた

町の病院に向かうことになった


並木野病院


病院に着き 疲れきった僕は

受付に行き 彼女の病室の場所を聞いた


203号室


『 コンコンッ 』


『 関永高校2年の 同じクラスの.. 』


ドアを開けるとそこには

肌着を脱いだ 女性がいた


『 す、す、すいません!! 』

急いでドアを閉めた


少し時間が経つと

ドアは開き 一人の女性が出てきた


『 ごめんね、着替え中で 』

頬を赤く染める 僕をみて彼女は少し笑っていた


『 はい、これ。 』

プリントを渡すと僕は逃げるようにその場を去った


『 また来てくれる? 』

彼女の言葉を 聞こうともしないまま


病院は好きじゃない、

母さんを思い出すから

病人は好きじゃない

自分を置き去りにするから


もう 二度と彼女に会うことはないだろう

友達との約束も大してないまま

一人 優雅に夏休みを過ごす

最高の時間だ。


そして その日の夜

自分の部屋に戻り あることに気づく

『 筆箱がない。 』


次の日 すぐに病院の受付に向かうと

落し物はなにも届いていなく、

嫌な予感がした


『 またここへ 来てしまった.. 』

病室の扉をノックしたと同時に

彼女は 出てきた


『 あの..昨日 筆箱を落として、 』


『 まあまあ、一旦入ってよ 』

彼女は何故かニヤニヤとしていた

部屋の中は ぬいぐるみが多く

ベッドの傍には 二匹のうさぎの

ぬいぐるみが飾られていた


『 筆箱は? 』


『 でっでーん! 』

『 筆箱は何処でしょう クイーズ! 』

謎に高いテンション、病人とは思えないほどの陽気さ

学校で聞いていた 風貌とは

全く違かった


僕の言葉は一切通らず

勝手に クイズが始まった


1時間後


『 はぁはぁ 』

まったく見つからない。

自称 ゲーマーの僕にとっては

とても悔しかった


『 どこにも無いよ... 』

疲れきった僕をみて やはり

彼女は笑っていた

『 正解はここでした〜 』


彼女の上着の中という

意味不明な クイズ

1時間の努力は何だったのか

呆れと疲れで少しぼーっとしていると

彼女が 1枚の紙を渡してきた


『 私の名前は 真宮 心優(みゆ)

またね! 陽翔くん! 』


午後6時半 僕は病院を後にした


『 クイズペナルティ

また明日の14時 203号室集合。東京で

最近話題のおみやげを買ってくること 』


謎の絵文字と共に記された

パシリのような文章。


この日から ぼくの夏休みに1つの用事が生まれた

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