影
星ぶどう
第1話
俺は泥棒だ。この小さな町k市に住んでいる。この町は少々治安が悪いので有名だ。
なので俺は犯罪がしやすいから、この町に2年前に引っ越してきた。
俺は3年前まで普通のサラリーマンをやっていた。結構真面目に毎日働いていた。だが、その時の社長がとある犯罪組織に騙されたせいで、会社のお金を一気にとられそのまま俺が働いていた会社は倒産した。俺はすごく惨めだった。必死に働いて積み上げたものが、ちょっとの悪知恵だけでたいして苦労もしていない者達に壊されたことが。
その事をきっかけに俺は変わった。苦労しても報われないのなら、楽をしてずるく生きていこうと決意した。
その後近くのスーパーで万引きをしたが、すぐに見つかり3ヶ月ほど刑務所にいた。
刑務所を出てからはもっと犯罪のしやすい場所に行こうと思い、この町に引っ越してきた。
俺は今日も万引きをしようと思い、近所のコンビニに行った。するとレジで店員を脅している男がいた。
「おい、この袋いっぱいに金を入れろ。命が惜しければな。」
「は、はいわかりました。わかったので落ち着いてください。」
と、まあこんな具合で俺以外にも悪いことをしている奴は山ほどいる。こんなとこで働く店員も馬鹿だとは思うが。
俺はレジの奴らを気にせず今日の夕飯をリュックに入れた。
「今日は店員の気を引いている奴がいるから、簡単に盗めそうだ。」と心の中で思ったその時、
「警察だ、手を上げろ。」
「武器を捨てなさい。」
なんと2人の警察が入ってきた。
「ちっ、なんでいるんだよ。」
レジで店員を脅していた男は観念したのか大人しく手を上げた。俺はやばいと思い、リュックに物を入れるのをやめた。そのまま店を出たら怪しまれると思い、俺はわざと警察のところに行った。
「あー、お巡りさん。やっときてくれたんですね。買い物をしてたら変な奴が来て怖かったんです。」
俺は怖がっているふりをした。
「それは大変だったね。でも、もう大丈夫だよ。さ、早く逃げなさい。」
警察にそう言われ、なんとかコンビニから出ることができた。
「やれやれ危なかったな。まさか警察が2人も来るとは。」
この町には警察署はなく、小さな駐在所が1個あるだけなので見回りは滅多にこなかった。だから警察が2人もしかも犯行中に来るということはありえなかった。
俺は不思議に思いながら家に帰った。夕飯を食べながらテレビを見ていると驚きのニュースをやっていた。その内容はこうだった。
「日本政府はk市に警察署を設立し、市民の安全を守るため巡査の人数を増やすことを発表しました。」
俺は仰天した。
「警察署を建てる。そんなことしたら盗みにくくなるじゃないか。かと言って今から引っ越すわけにもいかないし。透明人間にでもなれたらいいのになあ。」
俺はこの町で一旦様子を見ることにした。
その後まもなく警察署が設立された。俺が察した通り犯罪を犯したものはすぐに逮捕され、逃げられた犯罪者はいなかった。俺はしばらく泥棒をやめた。
ある日、ネット通販を見ていると妙な薬を売っているのを発見した。よく見ると影になる薬と書いてあった。D博士が作ったと書いてある。そんな名前の博士は知らないが、少々興味が湧いたので買ってみることにした。
3日後、影になる薬が家に届いた。説明を読んでみると飲んでから丸1日影に入れば体と体に身につけている物は影になれると書いてあった。よくわからなかったので、俺はとりあえず1つ飲んでみることにした。特に体には変化はなかった。俺はがっかりしたが、試しに外に出て散歩してみることにした。
「影に入ると影になるってどういう意味だろう。試しにあの日陰に入ってみるか。」
俺は日陰に入った。するとどうだろう。体が服ごと一瞬にして消えてしまった。
「どうなってるんだ。」
俺は動揺していた。そして日向に出てみたところ、俺の体が戻り始めた。
「そうか、わかったぞ。これは影のところに入れば自分は影と同化でき、日向に出れば元に戻るんだ。これは使えるな。でも影になっている間は足しか使えないっていうのは不便だが、まあいっか。」
俺はその日からまた泥棒を始めた。いつもは夜に俺は盗みに行く。なぜなら夜の方が警備が昼よりゆるいからだ。でもこの薬を使えば昼でも盗みに行ける。万一誰かに見つかっても影に入れば姿を消せるので、逃げられる。俺はコンビニに入ってパンを2つ盗んだ。店を出ようとした時に店員に呼び止められたが無視して逃げた。
「誰かあいつを捕まえてください。」
店員が叫ぶと近くでパトロールしていた巡査が数名追いかけてきた。
「よし、試してみるか。」
俺はビルの角を曲がり、日陰に入った。その後、巡査が追いかけてきたが俺の姿が見えなくて戸惑っていた。
「へへへ、やっぱり俺の姿は見えないのか。」
「あっちの方を探してみましょう。」
巡査達はどこかに行ってしまった。
「へへへ、うまくいったぞ。」
俺は日向に出て近くのスーパーに入り、また盗みをした。
「この薬のおかげで今日は盗み放題だな。」
その後、俺は丸一日いろんな物を盗めるだけ盗んだ。だいぶリュックが重たくなってきたので、帰ろうかと思った時はもう日が沈みかけていた。するとどうだろう。日が沈むことにより、影の部分が多くなり始めていた。
「こんな荷物を背負って歩くのも目立つし、影になって帰るか。」
俺はそう思って影になって帰った。しかし、家の前の玄関について気づいた。玄関は暗かったのだ。このままの状態では鍵を開けることができない。
「まいったなぁ。これじゃ部屋に入れない。一旦灯りのあるところに行って鍵を出すか。」
そう思って灯りを探したが、どこもかしこも真っ暗だ。所々灯りのついている家やスーパーはあるが、灯りが弱いので元に戻れなかった。街灯もなく灯りを探していたらすごく眩しく輝いている灯りを見つけた。
「よし、あそこに行って鍵をだそう。」
そう思って灯りの下に行き、俺は元に戻った。すると周りから警察がたくさん出てきて俺は捕まってしまった。よく見るとそこは警察署だった。俺は観念をした。まさか警察署に自分から来てしまうなんて。俺は情けなかった。
1週間後k市は治安がだいぶ良くなった。とあるテレビ局がD博士にインタビューをしていた。
「影になる薬、あれのおかげで夜の犯罪が減りましたね。」
「あー、それに町を暗くすることで更に動きにくくする。そして灯りを見つけたと思ったら警察署。我ながらこの町の役に立てて良かった。」
「しかし、よくこの方法が思いつけましたね。」
「いやあ、逆転の発想だよ。わしも昔泥棒をやっていてね。透明人間になれたらなと思っただけですよ。」
影 星ぶどう @Kazumina01
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