幕末編① イギリスに負ける

「え、山口県が、日本政府を倒した、みたいなこと?」

《そうよ。正確には長州はあとで薩摩とかと同盟を結んで、幕府を倒したの。薩摩ってのは今の鹿児島県ね。そして、新しく政府を作った》

《それが、今の日本政府なの》

《今の日本の総理大臣の安倍さんだって、山口県出身。副総理の麻生さんなんか、薩摩出身の英傑、大久保利通の子孫よ》

「まさか、異世界系を名乗るラノベで安倍さんが出てくるとは…」


おっと、侍をそのままにしていた。

「天神どの、拙者は村田蔵六と申す」

ディオティマのおかげで、先ほどまでの不審者を見る態度とは全く異なる。何ともご都合主義な世界だ。


「村田さんですね。すみません、道に迷ってしまったみたいで…。記憶もあまりなくって…」

「これは、大変。ひとまず、拙者の家にいらしてくだされ」


森から歩くこと、約1時間ぐらいだろうか。町中に出て、村田さんの邸宅に着いた。

「近頃は、幕府がいつまた攻めてくるともわからんので、みんな、ぴりぴりしているのだ」

「幕府が攻めてくるって、日本中を敵に回しているということですよね?長州だけで戦えるものなんですか?」

「何を。拙者たちは、イギリスやアメリカとも戦ったのだ。いまさら、幕府なんかが怖いものか」

「え?イギリスと戦う?幕府じゃなくて長州がですか?」


《四国艦隊下関砲撃事件(下関戦争)のことね。長州は、イギリスの公館を襲撃したりしているから、イギリス、フランス、オランダ、アメリカの四国から攻撃を受けたの。結果は長州の負けだったけど、この四国と戦ってたのよ》


「そうだとも。長州は幕府とこの前も戦いました。負けはしたが、これで終わりじゃあない」

「今、高杉さんが奇兵隊を強化しているし、イギリスからも武器を買っているのだ」


《高杉晋作の奇兵隊ね。高杉晋作は、農民や町民を兵士として集めた奇兵隊という部隊を作ったの。高杉さんはイギリスとかとの戦いの講話ときには「魔王」とも言われた人物よ。まあ、残念ながらこの後数年で亡くなっちゃうんだけどね…》


「なんで、戦ってきたイギリスから武器を?」

「残念だが、今の長州じゃあイギリスには勝てん。力がいるのだ。奴らの鉄砲は性能が全然違う。今は屈辱ではあるが、武器を揃えて、いずれ奴らとも戦えるようにするのだ」

「幕府の連中を見てみろ。十年ほど前、ペリーが来ただろう。黒船で脅してさ。あれで、すぐさま開国だよ。要は、武力が全てなのさ」

「さあ、もう疲れただろう。部屋を一つ用意したから、ぜひ、使ってくだされ」


村田さんに案内された部屋に布団を敷き、横になる。

それにしても、リアルな世界だ。こんな世界を「創造」できるなんて、ディオティマって一体何なんだ…。

そして、いまさらだけど、この世界から元の世界には帰れるのだろうか…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

学べるラノベ「ストゥディアーレ」 @philosai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る