学べるラノベ「ストゥディアーレ」

@philosai

世界の起源

「机に向かって勉強なんかしてられるかよ」

天神学(てんじん まなぶ)は受験を控え、親には毎日、「勉強しなさい」と言われ続けている。それで、机に向かっては隠れてゲームをしたり、漫画を読んだりしているのだ。


「だいたい、勉強なんかして、何になる?そりゃ、学力はないよりは、あった方がましだよ?でも、そのためにつまらない勉強なんかする気になれるかよ」


その時だった。

《楽して、学力が欲しいか!!》


何やら、有名なセリフのパクりのようなセリフが、学の頭に響いた。

そして、辺りの景色が変わっていく。


学は青くだだっ広い空間の中にいる。周りの風景はうねっている。

まるで、某ネコ型ロボットの道具、タ○ムマシンのようだ。


目の前にうっすらと女性の姿が現れ、少しずつ濃くなっていった。


「ネコ型ロボットが女体化して、助けに来てくれたのか!?」

すかさず、女性は

「ネコ型ロボットは女体化しても、妹の方みたいになるだけでしょ!」と返す。

肌が白く、高身長で緑の髪の女性だった。


「私はディオティマ。聖地アカデモスから来た天使」と続けて言う。


「そんな設定の説明はいらないから、これはなんだか教えてくれ!」


「これはタ○ムマシンではないわ。周りに、ぐにゃぐにゃした、サルバドール・ダリの時計みたいなやつもないでしょ?」

「ここは、創造の狭間。これから、あなたが楽して勉強できるような、世界を創造するの」

「これから行く世界は、あなたたちの世界の過去ではなくて、あなたたちの世界に似せながら創り出された世界。異世界みたいなもの。タイムマシンだと、『史実と違う』とかうるさいことを言ってくる人たちがいるでしょ」

「おっと、今のはメタ発言ね」

「ここは、『世界の起源』のようなものなの。卑猥な意味じゃなくて、ね」

「???何が卑猥なんだ?」

「今は芸術について勉強する時間じゃないから、早く、別の世界に行きましょうか」


彼女がそう言い終わると、学は森の中にいた。

「ここは…。あれ、緑の髪の女は…?」


《緑の髪の女、じゃなくて、ディオティマよ》

学の頭の中に直接また語りかける声がする。

「こいつ、直接、脳内に…!!」

「でも、最初の時はしぶいおっさんの声だったような…」


《あれは、雰囲気を出すため、おっさんの声にしていただけよ》

《私は、異世界の中ではこのペンダントの中にいるわ》

いつの間にか、学の首に、緑の宝石のペンダントがかかっている。


《さて、この世界を説明するわね。ここは、幕末の日本。あなたたちの世界では、だいたい、1865年辺りね》

「幕末か、これは、銀○とかで知ってるぞ」

《最初だし、とっつきやすいところにしたのよ。当然だけど、ここには銀○みたいに、宇宙人はいないからね》


「そこにいるのは何奴か!?」

後ろから声がする。


何奴って、そんなあからさまな言葉使わなくても…。ここは、「冷奴(クール・ガイ)だ」なんてボケても良いかもしれないが、幕末じゃあ、そんなネタも通用しないだろう。


「天神という者です」

「天神?ここらでは聞かない名だな。どこから来た?」


「東京…ですかね」

「とう…きょう…?」


《この時代にはまだ東京は江戸だから、東京なんて言ってもわからないわよ》

どうやら、ディオティマの声は学だけに聞こえるらしい。

「そっか、まあ、江戸みたいなもんです…」


「江戸だと?それでは、貴様、密偵か?」

侍が刀に手をかける。

「ええっ!?なんでそうなるんだ!!?」


《あっ、長州に飛ばしちゃったから、江戸はまずかったわねー》

《えいっ!》

ディオティマがそう言うと、侍が刀から手を下ろした。


「助かった…のか?」

《毎回、異世界に飛ばしてから、そこの人に説明していたら面倒じゃない。あなたの服装や言動には違和感を持たないようにしておいたわ》

「それにしても、なんで、江戸と聞いただけで刀に手をかけたんだ?」

《ここは、長州。今の山口県よ。この時代の江戸と長州の仲は最悪だわ。京都で禁門の変という大事件を起こした長州を処分するため、江戸幕府は長州に兵を送ってるの》

《幕末とは、幕府の終末ってことだけど、幕府は長州が中心となって倒したの》

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