映像的な表現力で、特に保育園時代を描いた様子は、古いサイレント映画を観ているような感覚に襲われます。 会話文がほとんどない、地の文中心の小説ですが、登場してくる人たちが、作者との生活の中から絞り出す声が聞こえてくるようです。 作者の豊かな感性と抜群の記憶力が、成長過程の一場面を切り取って、その時の感情と行動を余計な装飾なしに、素直に描いてるからこそ出る、瑞々しい感覚のノンフィクションです。 これだけ書き込んでいくことは大変だと思いますが、これからも描き続けて欲しい方だと思います。
高校生だったのは今から35年ほど前だけど、これだけの文章をかけていたら、今頃、小林秀雄御大クラスの大評論家になれているかもしれない。小説家としては、正直、私は自信ないけど(私は小説はほとんど読みません。必要があって書いているだけ)。それだけ、うらやましい才能が詰まっている文章です。
自らを巡る不条理を、太刀で斬りつけるように描いた作品。作者のこれまで読まれてきた小説によって裏打ちされた言い回しが、溢れ出る少女の心情を際立たせ、読む者を感傷の渦へと引きずり込みます。収める鞘を持たない感情が読後には残りますが、それが筆者との共感に繋がるように感じました。ただ、一つだけわがままを申し上げますと、筆者の好きなことや楽しみにされていることについて書かれたものを拝読できればと思います。
って感じ方をした事象を一個一個、プレパラートの上に乗っけて、その淡々とした語り口調が切実。息苦しいよね、何でこうなんだろうね。どうして自分と戦わなくっちゃならないんだろうね。