穢土しぐさ

@HasumiChouji

穢土しぐさ

「あの……本当に、こんな所に『江戸しぐさ』が実在したって証拠が有るの?」

「そうだが、何か疑問でも?」

「仮にお前が言ってる事が真実でも、この時間だと、本当はこの神社、閉まってる訳でしょ。俺達がやってるの不法侵入……」

「それがどうした?」

「どうしたって、お前……」

 時は午前2時ごろ。

 その2人の男が居るのは東京千代田区九段に有る神社……早い話が靖国神社だった。

「この神社のどこかに有る筈だ……。江戸しぐさが実在した証拠を封じ込めた何かが……」

「証拠を『封じ込める』?」

「私のダウジングによれば……しまった、本殿じゃない」

「ダウジング? 今、ダウジングって言った? そんなモノで、その『証拠』とやらを探す気だったの……おい、どこに行く?」

 両手に曲った金属の棒を持った男と、その男を追い掛けるもう1人の男は神社の一画に辿り着いた。

「やはり、ここか……明治時代に最初の招魂場だった場所……」

 そう言って、男は背負っていたリュックサックから何かを取り出した。

「何やってるんだ?」

「封印を解く」

「えっと……それは……まさか……?」

「お前ん、ケーブルTVに入ってただろ」

「そうだけど」

「なら、ディスカバリー・チャンネルあたりで似たモノを見た事ぐらい有るだろ?」

「そうだよ。お前が、今、設置しようとしてるモノに見覚えが有るから聞いてるんだ」

「お前たち、何やってる?」

 その時、何者かの声が響き、灯りが2人を照らした。

「なんだ、警備員か」

「『なんだ』じゃねぇよ」

「警備員さん、離れてて下さい。危険なんで」

「待て、危険とはどう云う事だ?」

「あと、念の為、耳を塞いでて」

 そう言って片方の男は、その場から逃げ出した。連れの男と神社の警備員は、その男を追いかけ……。

 ちゅど〜ん♪

「おい。何をやったんだ?」

「封印を解く為に、爆破と云う手段を使わざるを……見ろ、あれが『江戸しぐさ』が実在した証拠だ!!」

 男が持って来たによって爆破された辺りからは、明らかに煙でも炎でも無い「何か」が現われ、上空へ向って吹き上がり続けていた。

 そして轟く声。人の声か、獣の声かさえも不明だが……それが怨嗟の声である事だけは確実だった。

「見ろ、あれこそが『江戸しぐさ』の伝承に有る『』で無惨に殺されただ!! 明治政府は、超能力を持った『江戸っ子』の怨霊達を利用して心霊兵器を作るつもりだったのだが、制御しきれずに、ここに封印したのだ!!」

「いや、ここに変なモノが封印されてたのは、確かだけど、あれの正体が、お前の言う通りかは別問題……」

「まぁ、あの怨霊の正体が私の推理通りなのかは、今後の研究課題かも知れないな」

「……ふ……ふ……ふざけんな!! 結局、俺達、ただの犯罪者……って、まだ怨霊が出続けてるけど……」

「そりゃ、『大虐殺』の結果生まれた怨霊なんで、洒落にならん数に決ってるだろ」


 その後、解き放たれた謎の怨霊達により「死都ネクロポリス」と化した東京は、いつしか「穢土」と呼ばれるようになった。

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