ピリピリしてるけどシュワッと爽快な初恋の味
- ★★★ Excellent!!!
高校三年生の少女の目線から描かれる、等身大の恋と青春の物語。
それ以外に形容のしようもないくらい、まさに恋愛オブ恋愛といった風格の恋愛劇です。恋に思い悩む少女の日常。きっと不思議なことや大掛かりな事件なんかは何ひとつなくて、客観的な視点からはそこにはただ、何の変哲もない日々が続いているだけなのですけれど。でも『恋をしている』という事実ひとつが、その何もないはずの毎日を、波乱万丈な冒険の日々に変えてしまう。その感覚が生き生きと描かれていましたっていうか、もうまさに〝それ〟そのものでした。
恋と青春をそのまま現物で持ってきたかのような迫力。ストーリーよりもキャラクターよりも(もちろんこれらがないというわけではないのですが)、ただ『恋の感覚を文章上に再現すること』だけを優先したかのような物語です。事実、カメラは主人公である咲良さんにべったり寄り添っていて(というかもうほとんど同化していて)、その時々の感情や情動に応じてくるくると色を変える文章の、その浮き沈みの激しさの醸す思春期独特の感覚。遠いあの日の青さと甘酸っぱさ。きっと他人からすればなんてことのない些細な出来事、そのひとつひとつに喜んだりあるいは不安になってみたりと、まさに恋の嵐の最中を行く感覚をそのまま文章にしたような風情。実に印象的で、なにより力強いものを感じました。
ストーリーはこれもある種の王道と言っていいのか、特別捻ったところはない(というか何の変哲もない日常が嵐になってしまう時点で捻る必要もない)のですが、でもこの作品独自のエッセンスとして、車椅子の存在が挙げられます。主人公が恋をする相手であるところの隼人くんの移動手段。どうしてそれを使うようになったかは書かれていないのですが、でもそれゆえの悩みというか引け目というか、コンプレックスのようなものがお話の主軸にうまく作用して、物語の展開に綺麗なメリハリを生んでいるように思います。なかなか多くの人には分かってもらえない苦悩。
また車椅子と同様に、作中に出てくるいくつかの要素、いわゆる道具立てにこだわりを感じました。タイトルにも出てくる『ソーダ』なんかがわかりやすいと思うのですけれど、作品のイメージをそのまま象徴するかのようなあれやこれや。音楽を聞く趣味とか、その曲の内容などなど。総じて非常に爽やかで、でも同時に思春期特有のヒリヒリした不安もある、まっすぐで甘酸っぱい恋愛物語でした。