三唱 反転、流転、暗転
にわかには信じられないものを見た。
膝をつき、血を吐いて咳き込むメルクマールを前に思考が止まる。
「メルクマール様!」
隣に立っていた警護の男が慌てた叫びを上げながらメルクマールに駆け寄った。額にびっしりと脂汗を浮かべたメルクマールの身体を支える。別の一人が、横から薬と瓶を取り出し、
なんで。どうして。だってさっきまで普通にしてたじゃないか。思考が空転する。
「メルクマール様、しっかりしてください!」
青白い病人めいたメルクマールの姿に、記憶の端が引っかかれる。
やつれ、やせ細り、それでも最後まで気丈に笑ってみせたのは──
記憶の奥、病床で微笑んでみせたある人物が脳裏に思い浮かぶ。
と、背中からいきなり地面に押し倒された。
「ぐ…っ!?」
「トーリさ──クィー!?」
「ぐぎゅ!?」
フリアの頭に乗っていたクィーが、別の男の手によって鳥かごに閉じ込められる。
「ぐうっぎゅぐぎゅぐうっぎゅぐぎゅぎゅぎゅぐっ、ぎゅ!」
「大人しくしろ!」
クィーが鳥かごの中で暴れる。男が抱えた鳥かごは、地震でも起きたかのようにがたがたがたと揺れ動いている。しばらくして、クィーは出られないと悟ると口をかぱっと開いた。口の奥で光が膨れ上がり、焼き焦がす炎となって吐き出される。だが、その光の炎も鳥かごは飲み込んでしまう。恐らく、海上都市ヴェール・ド・マーレにいた青竜の力を封じていた宝具と同じもの。
取り押さえられたトーリとクィーを見比べたあと、フリアが叫んだ。
「二人を離してください!」
「……なぜ、と君は聞いたね。これが、理由だよ」
いくらか落ち着いたのか、血を拭いながらメルクマールがゆっくりと立ち上がった。
悠然と立つメルクマールの表情は落ち着いたものでありながら、肌は生気が失われていた。
「私の身体は病に侵されている」
どくり、とトーリの鼓動が嫌な意味で高鳴る。
「完治することがない以上、定期的に薬でごまかすしかない」
「まさか、青竜をそのために……?」
トーリは呆然とつぶやいていた。
竜は強い再生力を持っている。鱗や翼、体液などは万能の秘薬として高額で取引されたぐらいだ。また、初代の〈竜の民〉は、竜から肉体の一部を分け与えられたことで、命を奇跡的にとりとめた。
「さて、優しい平和と秩序の民よ。もう一度問おう。こちらに協力してくれる気は」
「お断りします!」
断固としてフリアは譲らない。
「あなたの身の上は理解しましたが、それとこれとは話が別です!」
「なら、トーリ君の耳を削ぎ落とそう」
「え……」
「次は反対の耳、それが終わったら指を一本ずつ切り落としていくとしよう。君が承諾するまで、何回でも何回でも」
穏やかな声に似つかわしい、残虐な内容にトーリまでも耳を疑う。
「どうかな」
提案された瞬間、ざっ、と頬に冷たい刃が当てられる。ひやりとした冷たさにトーリは息をのんだ。
「……っ」
現実感を持って襲いかかる生命の危機に、トーリの背筋がぞわりと泡立つ。
「待って……! 待ってください!」
「フリア!」
呼びかけ、無理やり平静を作る。大丈夫だ。これは単なる脅しで本気じゃない。交渉のため、相手に言うことを聞かせるため、こちらの心を揺さぶるため。トーリはそう己に言い聞かせる。
「大丈夫。メルクマールさんはそんなことしない」
確信を持ってトーリは断言した。トーリが少しでも揺らげばフリアが揺らぐ。
「トーリさん……」
不安だった顔のフリアに、僅かに落ち着きが戻ってくるのを感じながら、トーリもほっとする。
それを打ち破ったのは、抑揚のないメルクマールの声だった。
「トーリくん。君は私のことを買いかぶっているところがあるようだが、さっきもいった通り、君に対して私憤はある。だが、理性という枷で抑えているんだよ」
ひどく穏やかに、メルクマールは口の端を持ち上げて笑ってみせた。先ほどと打って変わって色のない微笑みに、ぞっと芯が冷える。
「どうしようもなく凶暴な気持ちのまま、君をこのまま嬲り殺してやりたい、といったら君は信じるかい?」
水面下に潜む激情を、見た。底のない濃い微笑みは、どこまでも静かで、秘めている激情の激しさを物語る。
メルクマールという人物を、真に見た気がした。
また、自分がしでかしたことの大きさをこんな形で思い知る羽目になるとは思わなかった。
紳士めいた所作で、メルクマールがフリアの肩を抱いた。促す。
「さ、フリア君。こちらに」
「フリア! ダメだ──っあ」
耳の付け根にぴりりとした冷たい痛み。刃が、食い込んでいる。心の中に冷たい死の気配が、じっとりと染み込んでくるのを感じながら、トーリは歯を食いしばる。
「トーリさん!」
顔を青ざめさせたフリアが悲鳴じみた声で叫ぶ。
メルクマールがフリアの耳元でささやく。優しく毒を含ませるように。
「それとも、トーリ君の耳が落ちるのを、ここで一緒に見るかい?」
「あ、あ……あぁ……」
ついにがたがたとフリアが震え出す。
まさしく嬲るように、刃がトーリの耳にじわりじわりと食い込んでいく。血が薄っすらと流れ始めるのを感じながら、トーリは悲鳴一つ上げずに拳を握りしめる。嫌な汗が伝うのを止められない。
フリアはトーリから目を逸らせない。恐慌状態のまま顔色を蒼白にして小刻みに震えている。
どう考えてもこの状況はまずい。身動きも許されない状態で、トーリは切迫さに追い詰められていた。焦りが胸を焼く。
どうする──どうすればいい。
フリアは動かない。動けない。トーリも動けない。トーリを取り押さえている男も、メルクマールもそれ以上動かない。
その場の全員が硬直状態に陥り、息を発するのも困難になった頃。
「……やれ」
冷徹なメルクマールの一言を引き金に。
「う、あああああああああああああああああああああ──っ!」
フリアが金切り声で絶叫した。
同時、大地の底を轟かせる音が、響いた。
……その場の誰もが声を失うのを見た。
トーリだけが、何が起こったのかわからないでいた。
ふっと、自身にのし掛かっていた重みと圧力が消えるのを感じ、直後身体に生暖かい液体が降りかかる。あたたかい命。そんな言葉が脳裏に言葉がひらめいて消える。
「……え?」
声はトーリのものだった。
手をついて起き上がる。振り返れば、ちょうど胸に近い場所に穴を開けた男が、ゆっくりと倒れゆくところだった。
とさ、と思いの外軽い音を立てて、男が倒れた。赤黒い液体が、みずみずしい草と土の上に染み込んでいく。
一体誰が、トーリを取り押さえていた男を撃ったのか。
理解した瞬間、世界に音が戻った。止まりかけていた時が動き出す。
真っ先に動いたのはトーリだった。
「――しっかりしておじさん! おじさん!!」
腹の底から叫び、トーリはブレスレッドの法石をなぞる。治癒の力を持つ蒼い石が弱々しく光る。
立ち尽くしていた警備の男が、そっとメルクマールに話しかけた。
「メルクマール様」
「法石の光が弱い。恐らくは……」
鎮痛な面持ちでメルクマールが首を横に振る。
トーリはフリアに呼びかけた。
「お願いフリア手伝って! 他のみんなも! おれだけの力じゃ――!」
「あ、あぁ……」
叫びながら振り返ったところで、トーリは目を愕然と見開いていた。
フリアが、泣いていた。怯えたように肩を震わせ、魔法を使った後の、両手を掲げたままの格好で座り込んでいる。泣き笑いにも見える、今にも壊れそうな表情でひっくひっくと何度も嗚咽を漏らしている。
──彼女の傍にいかなければ。反射的にトーリはそう思った。
フリアが泣いてる。だって、フリアが泣いているのだ。
だから手を差し伸べてあげなくちゃ。それで大丈夫だよって言ってあげなくちゃ、と、思考も何もかもをかなぐり捨て、そう思う。
だが、ここでトーリが治療をやめたら、この男は恐らく──
「フリア!」
今ここで、この男を死なせるわけにはいかない。
魔法の力が反転してしまう。かつて、人を殺めたオルドヌング族の王子のように。
そんなことになったらフリアは、フリアはどうなる──?
「フリア──ッ!」
懇願なのか、何なのかわからない叫び声を上げ。
刹那、後頭部に強烈な衝撃が走った。
「あ……う…?」
ブレスレットの法石の蒼い光が薄れる。トーリの意識がぐらりと傾く。
「なん……で……」
ちかちかと意識が明滅する頭の中で、トーリは辛うじてそれだけを口にした。草の上に倒れ伏す。
部下なんだろう、あんたの。声は続かない。
メルクマールは抑揚のない眼差しでトーリを見下ろしている。
その場に居る誰も彼もが、冷めきった目をしていた。諦観し、諦め切った静かな目。
メルクマールが重たそうな口を開いた。
「致命傷に至る傷は、奇跡と謳われる魔法であっても治せない。君が使った法石の光が弱いのが何よりの証拠だ」
部下と思しき他の男たちは何も言わない。
フリアやメルクマールに非難や叱責をするのでもなく、祈りでも捧げるように目を閉じている。
……どうして。
どうして。自分は何が言いたかったのだろう。
気が遠くなり、視界が暗くなっていく。
そこでトーリは意識を手放した。
*
「おい……おい、しっかりしろ!」
「う……」
肩を揺さぶられる感覚に、トーリは薄っすらと目を開いた。
皮膚に浅く刺さる草の葉がぼんやりと見える。自分がどうして草の上で寝転がっているのかわからず、首を振り仰いだ。視線の先、見えた人物にトーリはゆっくりと目を開いた。
銀に輝く髪と、エメラルドグリーンの刃のような瞳の青年が立っていた。
「ブライヤー……?」
「目ぇ覚ましたか」
言ってから、ブライヤーは立ち上がった。あたりを見渡す。
「つうかクィーのやつどこいった。呼ばれてきてみれば、いやがらないしよ。あと、お目付け役もどこに──」
途端、トーリははっと目を見開いた。跳ね起きる。
「クィー……フリア! フリア!」
あたりはまだ明るい。あれから時刻はさほど経過していないだろう。
名を叫びながら、意識を失う直前のことがまざまざと蘇る。
フリアの恐怖で怯えた、錯乱状態のような壊れかけた泣き笑いの表情。
フリアの魔法に攻撃され、倒れた男のことも。
そこで思い出し、トーリは反射的に背後を振り返った。横たわっている男に駆け寄る。
「おじさん! しっかりしておじさん!」
青々とした草と男の胸はどす黒い血ですっかり染まっていた。流れた血のおびただしさを物語る。
ぞっと背筋に嫌なものが走る。本当に、死──
「あ? そいつなら、なんかやべー感じだったから適当に治療しといたぜ?」
「え……」
背後からブライヤーがかがみ込んでくる。
「本当に……?」
「触ってみろ。死んでねぇから」
トーリはためらいがちに手を伸ばした。震える手で男の肩に触れる──あたたかい。服の下に温かい血が通っているのがわかる。
生きている。ちゃんと、生きてここにいる。
トーリは息をついた。身体の力がいっぺんに抜ける。
「良かった……。ありがとう、ブライヤー」
「礼を言われる筋合いはねーよ。で、クィーとお目付け役はどこ言った?」
「それは……」
一瞬言葉につまる。それでもトーリは、ぐっと口元を引き締め、ここであった出来事をゆっくりと語りだした。
「なるほどな」
話を終えた後。ブライヤーの感想は、あっさりとしたものだった。
「ったく、ちび助のやつ。人間なんかにあっさり捕まりやがって……連れ戻したらいっぺん説教だな」
ぶつくさと文句垂れる男に、トーリはなんとなく聞いていた。
「ねえ、もしかしてブライヤーもフリアとクィーの正体知ってた?」
「まあな」
「……そっか」
驚くでもなくトーリはうなずいた。すとんと腑に落ちる感触。
「ユレンシェーナ家ってさ、オルドヌング族なんだよね」
「ああ、〈契約魔法〉の使い手だな」
オルドヌング王族と、そして、竜と人を契約でつないだ契約の民。
黄金時代の終わり、この大陸でマキラ家と同じようにこの大陸に残され、今も貴族連盟に監視されている一族。
「……フリア、反転するの」
「うん?」
「〈イドの解錠〉」
ぽつりと不安を口にすれば、ブライヤーが目をみはる気配。
男を撃ったあと、フリアは怯えていた。
トーリはそんな彼女に手を差し出すことができなかった。
ブライヤーは横たわっている男を一瞥した。
「そっちの男は一命はとりとめてるし、反転することはねぇと思うぜ。ただ、明確な攻撃の意図を持って相手を撃ったのは事実だから、力の状態は不安定になってるかもしれねぇけどな」
高い空を見上げながら、ブライヤーが目を細める。
「強い力は強い力からの影響を受けやすい。魔法の力に限らず、感情、天候、意志、人の欲、そういうものにな。強い力を持っている本人が強い意志を持っていれば影響が少ないんだがな。そうじゃねぇ場合は正にも負にも染まる」
ブライヤーの言葉が胸に重たくのしかかる。
あっけらかんとした口調でブライヤーは続けてきた。
「まっ、別にそんなの人間も竜も同じだけどな。強靭な意志があれば、正負に関係なく自我を保てる」
そう言って、ブライヤーは歩き出した。倒された木々を踏み、軽く乗り越えていく。
「んじゃ、とっとと行くぞ」
「え?」
「え、じゃねぇよ。ユレンシェーナのお目付け役も一緒にさらわれたみたいだし、助けに行くんだろ?」
「ああ、うん……。って、ブライヤーも一緒に来るの?」
「当たり前だろうが。クィーがさらわれたってんなら、助けにいかねぇと」
「うん……。うん?」
うなずいてから、トーリは首を傾げた。
なぜクィーがさらわれると、ブライヤーが当然のように助けに行くことになるのだろう。
「って言ったとこで、どこいったかね。まあ、契約すんなら、天の祭壇か」
遠くの山々を見上げる男の髪の毛は、クィーと同じ白銀──同じ?
あれ?と今更のように湧いてきた疑問に、トーリは思考を整理し始めた。
ブライヤーは男を治癒したと言った。
トーリは、ブライヤーのことをフリアと同じ戒魔士なのだと思っていた。それも、魔法の力が災いの力へ反転した戒魔士。
ブライヤーの魔法の破壊力を見た時、トーリはそう説明したフリアの言葉が事実だと思った。既にこの青年は魔法の力が反転しているのだと。だから、破壊的な力を振るえるのだと。
ここで疑問が生じる。魔法の力が反転しているのなら、どうして男の傷を癒せたのだろう。
反転した戒魔士は治癒の力を持たない。その力は他者を癒やし守るのではなく、害し壊す力ための力と化す。例外はない。
なら、トーリと同じように法石でも使ったのだろうか。そう思うも、黒いジャケットに黒い脚衣のブライヤーはそれらしい法石を身に着けていない。精々、そっけないシンプルな銀の腕輪ぐらいか。
そもそも、男の傷は致命傷に至るものだったはずだ。
少なくともメルクマールはそう言っていたし、実際に法石を使っても、男の怪我の治り具合は悪かった。それが証左なのだろう。トーリはそう解釈している。
その場合、ブライヤーは魔法以外の方法で、男の傷を癒やしたと考えるのが自然なのだが、致命傷に至る傷を、魔法も法石も使わず、どうやって癒やしたのか。
方法なんてない。否、ある。思いつく限り一つだけ。
かつて瀕死の状態に陥った〈竜の民〉が一命をとりとめたときのように。血を吐いたメルクマールが病状を数十秒で持ち直したように。
「こっからじゃあ、クィーんとこ行こうにも歩いては遠いか。ついでに急いでるし……」
そう、クィーだ。クィーは人見知りが激しい。人がいる前ではまず顔を出さない。
例外は友達であるフリアとトーリのみ。
だが、ブライヤーの前には、出会ったときから姿を現していた気がする。海上都市でブライヤーと食事を取り合う姿に至っては、仲睦まじいと言っていいだろう。トーリも時間を要したのに、どうしてブライヤーは最初から──
もう少し。あともう少しで答えに辿り着けそうな気がする。
と。
「ちょっと待ってろ。今、元の姿に戻るから」
「へ?」
降ってきたブライヤーの声に、トーリは思考の縁から戻り、顔を上げた。
突然、ブライヤーの姿が輝き出す。まぶしいほどの光にトーリは思わず眼前を腕で覆った。
「え!? ちょっとなに──」
しばらくして。
光が収まった後、見えたものに、今度こそトーリは口と目を大きく開いて固まった。
白く長い毛並み。大空を羽ばたく鳥を思わせる大きな翼。人の背丈の二倍をゆうに超える巨体。
おとぎ話の白竜そのものが、そこにいた。
『ほら、とっとと乗れ』
低く通る男の声が脳裏に響く。それは紛れもなくブライヤーのものだった。
「え、え、え」
トーリは目を白黒させ。
「えええええええええええええええええええええええええええっ!」
叫んだ。もう盛大に。森全体に響き渡るほどに。
『うるっせぇなあ……』
竜になったブライヤーが、凶悪な鉤爪がついた前足でけだるげに耳をかく。足の裏に、猫のような肉球が見える。あ、肉球あるんだ、などとどうでもいいことを思いながらトーリはブライヤーを指さした。
「だ、だだだだだだだだって! ブライヤーって竜だったの!?」
『気づいてなかったのかよ』
「気づける要素があるもんかあ!」
大声を張り上げ、腕をぶんぶんと動かす。
『回線は良好みてーだな』
「回線って……」
『クィーと話せないみてぇだから、なんか問題でもあんのかと』
「あ……」
言われてみれば不思議だ。クィーが竜であることを知った今は余計に。
「小さいから、とかじゃなくて? 人間の赤ちゃんも言葉しゃべれないし」
『あいつはもうそんな赤ん坊じゃねえよ』
「ならなんでおれ、クィーとしゃべれな……え?」
むんず、とトーリは首根っこをブライヤーにくわえられた。まるで猫の子にしてやるように宙吊りにされる。
「待──」
待って、とトーリが制止の声をかける前に、身体はぽーんと空中に放り投げられた。ふわふわとした毛並みの上に、背中から叩きつけられる。
「ってぇっ! ってあれ……?」
起き上がって手をつけば、クィーと同じふわふわな手触り。トーリは自分が毛の長い大きな獣の背中に乗っていることに気づくと足元を見やった。草むらとの距離が遠い。
と、急にブライヤーが動き出した。振動で後ろに傾きかけた自身の身体を慌てて前のめりへ。ブライヤーの背にしがみつく。
「わわっ!」
『つかまってろよ。でないと落ちるからなー』
「ちょ、待っ──ウソでしょ!?」
ブライヤーが翼を広げて飛び立つ。押し付けられる。トーリを乗せたブライヤーの身体が浮かぶ。ぐん、と視界が高くなる。地上がみるみる遠ざかっていく。
その日、翼を広げた白い竜が、空高く舞い上がっていくのを見た者がいた。
約束のヴェンデッタは竜の歌声と遊ぶ 久遠悠 @alshert
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