第10話 書類

伊織はその当時のことを目を閉じて思い出すことにした。伊織はライブ会場にいる時のことを思い出す。


「両親と共にライブ会場にいました。 しかし、ライブ途中で怪鳥の怪物が現れて会場はパニックになりました」


伊織が話し始めると、若葉は何やらメモを取り始める。


「それから?」


若葉は伊織に続けてと言った。


「それからは両親と共に退場出口に走りましたが、会場にいた数千人がパニックになってしまったので両親とはぐれてしまいました」

「それから?」

「そして俺は地面に倒れてしまって助けてと言うと、若葉さんが言った天馬朱雀さんが助けてくれました」


伊織が言うと、その会場に現れた時にはもうと一人呟いていた。


「そこで朱雀君が怪鳥を倒して、力を君に与えたのね」


与えたと若葉が言うと、少し意味合いが違うようですと伊織が言う。


「意味合いが違う?」

「はい。 朱雀さんは俺に対して申し訳なさそうに力を与えると言っていました」


そう聞いた若葉は、申し訳なさそうにねと疑問を感じていた。


「その時に朱雀さんが言っていたことを思い出しました。 確か俺の身体はもう朽ちる寸前だ、だから申し訳ないが君に俺の力を託すと言ってました」


力を託す。その言葉を聞いた若葉は、それで君にと伊織を見て呟く。呟いている若葉を見ていた結乃は、伊織君は託された力を理解していないようですと話しかけた。


「そうみたいね。 でも、私たちも伊織君に授けられた力が何なのかわかっていないわ」

「そうですね。 それでも伊織君は怪物を倒せる力があるのは確かです。 天馬朱雀さんの力を受け継いでいるのですから」


そう若葉と結乃が話していると、伊織は俺はどうすればいいんですかと二人に聞く。


「伊織君はとりあえずこの国家防衛機構の職員として働いてもらいたいと考えています」


若葉は一枚の紙を伊織に手渡す。


「この紙は何ですか?」

「その紙は国家防衛機構に入職するための書類だよー」


結乃が伊織に説明をすると、自身の鞄の中からお菓子を取り出して食べ始めた。伊織


は美味しそうだなと思いながら、若葉から受け取った書類を近くにある机に置いて記入を始めた。


「ここに名前を書いて……ここに住所を書くっと……あ、ハンコは持ってない……」


伊織が若葉に言うと、若葉はそこはサインで良いわよと言う。結乃はその伊織を見て仲間が増えると喜んでいた。


「書き終わったー?」

「まだだよ」


伊織はすぐに結乃に返答をして書類を書き進める。


「書き終わったー?」

「まだだって」


一分も経過しないうちに、結乃は伊織にもう一度書き終わったか聞いてきた。伊織は書くことを止めて、結乃にまだだからと結乃の方を向いて伊織は言った。結乃はその言葉を聞いて早く書いてよと口を尖らせていた。


「今書いてるじゃん! もう少し待ってよ!」


伊織が結乃に声を上げて怒鳴ると、結乃が持っているお菓子を伊織の口の中に入れた。


「そのお菓子はチョコクッキーよ。 私それ好きなの~」


結乃は自身もチョコクッキーを食べて、至福の表情をしていた。その結乃の顔見た伊織はそれ以上怒る気を失くしてしまい、そのまま書類を書き続ける。


「サインも書いたし、その下の住所と電話番号も書いたからこれで終わりかな?」


書いた紙の全体を見渡して抜けがないか見ていた。その様子を見た結乃は、終わったのーと伊織に話しかけた。


「やっと終わったよ。 もう邪魔しないでよね!」

「そんなこと言うことないじゃーん。 邪魔なんてしてないけどね。 あ、これからよろしくね!」


伊織によろしくと結乃が言うと、こちらこそと返答をした伊織。その二人を見た若葉は頷いていた。


「伊織君はまだ学生なので、契約社員の形態です。 ちゃんとお給料も出ますのでそこはご心配なく」


伊織はそう聞いて安心をした。ちゃんと教えてくれたことや給料も出るので、給料が出たら家族に何かしてあげようと決めた。

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アースヒーロー~地球は英雄を求めている~ 天羽睦月 @abc2509228

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