E-02 ★~Fin~★
……さて、これにて本当に、一件落着。後は皆で帰還するだけ……と思いきや。
「えへへ、これから先、楽しみで……え? ……あれっ、誰かが丘を登ってきて……?」
レナリアが言う通り、馬に乗って丘を駆け上がってくるのは、どこかで見た事のある女兵士――そう、《光の聖城クリスティア》の、女王の近衛兵の一人だ。
……ちなみにエクリシアは、瞬く間に漆黒の重装に着替えていた。さすが《
それはそうと、ようやく目の前にやってきた女兵士が、慌てて口走るのは。
「はあっ、はあっ……れ、レナリア姫様、皆様っ……ご、ご無事で何よりです! ああでも、でもっ……たた、大変なことがですねっ、あのですねっ!?」
「――落ち着いて、シュリ。《魔軍》はもう、崩壊しましたよ。慌てる事など、ありません。……さあ、深呼吸して。一体何があったのか、報告してくださいね?」
「えっ……《魔軍》を倒したのですか!? ああっ、さすがは姫様っ……あ、でも、それはよかったんですけどっ、そのっ……う、うう~っ……」
レナリアが優しく続きを促せど、彼女の焦燥は収まらず――ようやく発した報告は。
「そのっ……《光の聖城クリスティア》の、南から――《
〝見たこともない魔物〟が、次から次へと溢れ出してきてるんですぅ――!」
「――――えっ!?」
その報告に、レナリアも焦りを見せるが、続けて女兵士に問いかけたのはリーン。
「《神々の死境》から……と、仰いましたわね? その〝見たこともない魔物〟というのは、彼の地に住まう伝説のような魔物、という事でしょうか?」
「い、いいえ、違うんです……《神々の死境》の魔物がどんなに強くても、ある程度の記録や文献が、残っているはずなのに……一切、どんな記録にも、一致しないんです! それこそ、そう……まるで、全く別の……〝異世界〟から、現れたかのようで……!」
「……全く〝見たこともない〟……〝異世界〟から現れたような、魔物? ……一体、何が起こって……いえ、どうしてこんな、突然に……?」
いつもは茫洋として余裕のあるリーンも、さすがに表情が曇る。
と、更に補足するように、女兵士が付け加えたのは。
「あ、実は……今が初めてでは、なくて。ほんの少し前から、ほんのごく少数、そういう〝見たこともない魔物〟の報告はあって……えっと、確か……レナリア姫様が、そちらの怪しいマント……ご、ごほん! な、ナクト殿と一緒に、旅をした頃から――」
「私が、ナクト師匠と? ……ん? つまり、ナクト師匠が、《神々の死境》を離れた頃? ……ん、んん~……えっ、まさか!?」
時期的に、状況的に考えれば――ナクトが《神々の死境》を離れ、そして〝見たこともない魔物〟が現れた、という事になる。
それは、まるで――ナクトという〝大きな力〟の留め金が、外れてしまった事で――起こった事態のようではないか。
エクリシアもまた、その考えに行きついたのか、重装鎧の向こうで慌てている。
「……如何ニ、スル……(……ど、どど、どうしましょうっ……)」
「ひえっ!? さ、さすが《剛地不動将》殿、こんな状況でも落ち着いてますね……!?」
副音声の聞こえない兵士さんは、何だか勘違いしちゃっているが。
さて、レナリアも、リーンも、エクリシアも、困惑していた――そんな時。
「――まあ要するに、まだ世界の危機は終わっていない、ってコトか」
「! ナクト師匠っ……」「ナクト様っ」「ナクト、サン……(ナクトさんっ……)」
ただ一人、揺らがぬ〝世界〟の如く泰然自若としていたナクトに、レナリア、リーン、エクリシアが、注目し。
ナクトはマントの下で腕組みしながら、ふう、とため息を吐く。
「こんな北の果て
――どうやら、〝世界〟というものは――まだまだ波乱に、満ち満ちているようで。
飽きることなく、絶えず流れ続け、休ませてなどは、くれないようだが。
「……まあ、仕方ないよな。俺の装備である〝世界〟を………いや」
ナクトは、仲間達を――レナリアを、リーンを、エクリシアを、一人ずつ見つめ。
「俺達が一緒に生きる〝世界〟を、救うため――もうひと働きしようか!」
「「―――おーーーっ♪」」「応ッ……!(おーっ……♪)」
彼女達と共に生きる〝世界〟は――何よりも、美しいのだから。
異世界で最強の装備は、全裸でした ~装備至上の世界で、俺だけの最強装備《世界》を全裸だと勘違いした美少女たちが、服とコンプレックスを脱ぎ捨て迫ってくる~ 初美陽一 @hatsumi_youichi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます