「なぜ人を殺してはいけないのか」正しく答えられる人がどれだけいるだろう

凄惨な無差別殺人事件を起こし、自らも重傷を負って入院した男が主人公の話です。

「なぜ人を殺してはいけないのか」
「俺は正しい粛清を行った」
「死刑になっても構わない」

そう嘯く男は、常人には理解できないサイコパスなのでしょうか。
終始淡々とした一人称の語り口で綴られていく、犯人の心理の動きが非常にリアルでした。

大きな事件が起きると、世間は犯人の素性や為人を知りたがります。
被害者の遺族にとっては到底許し難い相手であることに間違いはないでしょう。

犯人が謝罪すれば、死刑になれば、物事は解決するのか。
最後の方の数話、遣る瀬無い気持ちでいっぱいになりました。何か少しでも彼の人生が違っていたら良かったのにと、本気で思いました。

答えのない、救いすらないかもしれないテーマですが、最終話のある人物の語りに一つの光を見たような気がします。
非常に考えさせられる、素晴らしい作品でした。

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