ドブさらい

「おめでとうございますマルクさん。今回の依頼達成でマルクさんはDランクにランクアップしました」

「な、なんでですか」


 初めての薬草採取を終えて冒険者ギルドに戻ってきた僕に、受付嬢のアリサさんがそんな事を言ってきた。僕は今日始めて冒険者として働いて達成した依頼はFランクの薬草採取なんだけど。


「それではまずこちらが薬草50束採取の報酬で、銀貨15枚です。こちらは質の良い薬草を大量に仕入れて頂き大変ありがたく思っております。冒険者の仕事に傷はつきものですから。そして薬草の採取の仕方も大変丁寧だと査定班が褒めておりました」

「ええと、ありがとうございます」

「次に追加で査定を頼まれました複数のファントムボアの件ですが、本来ファントムボアはBランク冒険者が討伐するクラスの魔物です。本来ならBランク、最低でもCランクに上げたかったのですが、ギルドの規定により上限の2ランク昇格でDランクになることとなりました」

「分かりました。ファントムボアの素材はどうなりました」

「……実は」


エレナさんの話によるとファントムボアは綺麗に狩れており、傷口から雑菌が入らないようにすぐ傷口付近を魔法で凍らせてあった。また数が多い為、やはり当ギルドで全頭買取る事は不可能とのことだ。大物の魔物は貴重な資料になると判断したギルド側は一頭を買取、一頭を領主様が買取る。残り3頭を王都のオークションに出したいとのことだ。


「当ギルドでは一頭丸々の買取で金貨1000枚での買取りとさせていただきます」

「……え?」

「即金ではすぐにご用意できませんので、金貨100枚とギルド銀行の預金で金貨900枚を通帳に記入させて頂きます」

「金貨1000枚!?な、何かの間違えでは!?」


 つい大きな声が出てしまい周囲がざわめく。しかしアリサさんは首を横に振る。大型の魔物は綺麗に倒すのがとても難しく毛皮や皮、鱗は綺麗な部位が大きいほど価値が高くなる。そういう意味でも、ファントムボア丸ごと一体の毛皮の価値は大きい。そして領主様の買取りの打診がまだ正確な金額が提示されていないが領主は冒険者ギルドよりも高く買取ってくれるそうだ。そしてオークションに出す分はワイバーンの件と同じですぐにはお金にならないためまた待つことになった。ワイバーンは今朝早く王都に向けて運び出され、早ければ三日後にオークションが開催されるそうだ。


「ドラゴンの方も間違いなくファントムボア以上の落札価格になりますので、期待して待っていてくださいね!」

「は、はは……期待してます」

「ああそうそう、領主であるグリモア子爵様より夕食のお誘いです」

「あ、そういうのは良いです。遠慮しておきます」

「そうですか。分かりまし……って、ええーっ!? な、なに断っているんですか!? 領主様からのお誘いなんですよ!?」

「だって貴族の相手とか面倒くさいもん。じゃあ僕はこれで」

 

僕はこれ以上面倒事に関わらない様、そそくさとギルドを出るのだった。去り際になにかアリサさんが叫んでいたが聞こえないフリをしながら晩御飯は何を食べるかを考えていた。


 翌日、僕は依頼の書かれた紙を千切ると受付嬢のアリサさんの下へと向かい、いつも通りにこやかな笑顔で挨拶をしてくれたアリサさんの動きが固まる。それは冒険者の仕事の中では一、二を争う程に嫌がられる仕事であるドブさらいの依頼だったからだ。基本的に用水路や下水の汚れは水魔法で対処するがそれでもきれいに出来ない細かいゴミが溜まる箇所があり、そういう場所は町から冒険者への依頼という形で処理される。だが、報酬は安く臭いため誰もやりたがらない依頼なので常時依頼のようにいつまでの達成されないまま放置されていた。


「マルクさんはDランク冒険者なんですから、わざわざこんな仕事を受けなくても……」


 アリサさんの言いたい事も分かるが僕はお金儲けの為に冒険者になった訳じゃない。生活費は必要だけど大切なのは、自由に冒険をする事でありいろんな依頼を受けてみたいとも思っていた。だから僕は、ドブさらいの仕事も受けることにした。


「はぁ、分かりました。ドブさらいの依頼受付を受領しました。幸い、マルクさんは現在の所お金に困っている訳ではありませんからね」

「さて、それじゃあ冒険に行きますか」


 ギルドから近い町の水路に来た僕は上から水路の様子を見る。このあたりは水魔法での水洗掃除が行き届きにくいので、すぐにヘドロが溜まってしまう場所らしい。確かに他の場所にくらべると、水の底にどす黒いヘドロが見える。右手をドブの方向にかざし、僕は広域浄化魔法であるフルクリーンピュリフィケーションを発動させる。するとどす黒いヘドロが崩れ去り、周囲の水も含めて水路全体が光り輝いていく。浄化の魔法によって輝いていた水路はやがてゆっくりと光を失い、後には一切の汚れが消え去ったピカピカの水路へと姿を変えていた。次の場所に移動し再び水路を浄化の光が包み込んだ時だった。


「ギャァァァァァァァァッッッ!!」


 その先、浄化の魔法で光り輝く水路の中で、一か所だけ真っ黒い塊があった。闇属性の不定形魔物であるダークスライムで見た目がヘドロみたいな見た目のため沼地なんかじゃなかなか居る事に気付けなく、水中から不意を打たれて大怪我をする兵士が多い。しかし、マルクは再びフルクリーンピュリフィケーション発動するとダークスライムはどんどん小さくなっていき、最後には消えてしまった。残されたのは浄化されて綺麗になった水路だけ

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転生した少年がSランク冒険者になる方法 ~前世が平凡だったボクは来世では自由に生きる~ 須藤 レイジ @LEIJI

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