エピローグ

「……あの林、何十年たっても変化がないだろう?季節が廻り、景色は変われど、この土地だけは常にこの景観を保ち続けている。それに加え、村では全くといっていいほど不作の年を迎えることはないんだよ。

 これらは全て、神様が姫巫女様と同じ世界に行けるように神力のすべてを使って施したものなんだ。だから、何人たりともあの林の中へ入るべからずってなってるんだよ」

 神が神の力すなわち神力のすべてを使うというのは、願いを叶える代償として神一人の存在を完全に消滅させるというものなのである。消滅させるといっても、人格ができていた場合、その魂は人間の輪廻の輪に入ることになっている。

「……それとね、あの林が光って見えるのは巫女の力が少し多い者だけなんだそうだ。ただ、その者たちは皆等しく短命だったそうなのだよ」そう付け加える祖母はとても悲しそうだった。

 実はこの祖母の姉も巫女の力が一般の村人よりも多く、巫女として扱われていたが、祖母が十歳になるより早くに亡くなってしまっていたのだ。享年十八だったそうだ。


「……そっかあ。今度こそは二人が幸せになってくれればいいな」

 少女は静かに涙を流しながら言った。


 そして、神社のほうに向いて祈りをささげた。

 林の奥で少年が嬉しそうに微笑みながら、光の渦に溶けていった。

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永遠に散りゆく花たちよ 日景の餅小豆 @hikage-1103

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