第4話 色褪せない約束

 月日が過ぎるたび、季節が巡るたび、僕は君を愛おしく想う。

 君とみた春の夜桜。あの時は夜風に乗って桜吹雪ができていたな。夏の少し汗ばんでいる君の黒い髪が人ごみに紛れて行ってしまった時は何とも言えない心細さというものを感じたよ。

 春の夜風に、夏祭りの人ごみに、なんどこの思いを乗せて君のもとへ飛ばしたいと思ったことだろう。

 しかし、この思いは決して口にしてはいけない。伝えてはいけない。

 僕たちの住む世界は違うから。

 君に呪いがかかってしまうから。

 だからこそ、僕は好きだという気持ちすら言ってはいけないんだ。

 言葉は強力だ。言霊が宿っているからな。安易に言ってはいけない。


 もうすぐ、あの子を失った季節がやってくる。

 春は、僕が嫌いな季節だ。出会いと別れの季節。

 それでもなお、僕はこの季節を待ち望んでいる。いつか君がやってくる日を待ち望んでいる。希望があふれる季節を。


 失いたくない。もう、僕を置いていかないで……。

 甘いものなんていらないくらい、僕は君に恋しちゃったみたいなんだ。


 君が亡くなってから、僕は君と見ていた花火を一人で見ているんだ。あの日から変わらぬ美しさだったと思うのだが、僕にはとても色あせて見えてしまって……やはり僕には君がいないといけないみたいなんだ。

 

 四季折々の景色は君を思い出させる。記憶の中の君はいつだって楽しそうで、輝いていた。僕は、そんな君に恋をしたんだ。

 やっぱり君は亡くなってしまうんだね。僕はもう楽しかった日々を忘れようとしない。僕は泣き虫だから、いつも君に慰めてもらっていたね。それらの記憶すら忘れないように大切にしまっておくね。

 君からの言葉は僕にとってお守りみたいなものだから。


 君が、前世を忘れてしまっていたとしても、たとえ君が亡くなってしまう運命だとしても、また何度でも会おう。


 さようなら。さようなら


「……また、来世で。……だよね、巫女」

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