第27話 ボルクス村 9
「ハハ、アハハ・・やったぞ、とうとうやった・・・こ、これで、シェリーは俺だけのものだ! ざ、ざまあみろ!」
「・・・・・・ブルド」
「え?」
「・・・・・そんなに僕が憎かったの?」
「は? あ? え?」
僕が寝ていたはずのベッドの上に馬乗りになっているブルドは僕の言葉に反応してこっちを向いた。
その時の顔があまりのも間抜けな顔だったのでちょっと可哀想な事をしたな。
「な、ルダ? え? な、何で!?」
慌ててる。慌ててる。
そりゃあ、今自分が短剣を指した人間が目の前に立っていれば当然の反応かな?
「ルダ・・・・・・・?!!」
ブルドは突然自分が下にしていた布団を鷲掴みにすると勢いよく引き上げ布団を投げ飛ばす。
「?!!」
「ちょっとは注意すればすぐに判るだろうに・・・・そんなに僕を殺したかったんだ」
投げられた布団の下からは、毛布と枕を一まとめに固め人が寝ている様にカモフラージュしたものが出て来た。
その塊にはブルドが射した短剣が刺さってままになっていた。
本当は今晩くらいは襲って来ないだろうと思って普通にベッドで寝ようかと思っていたんだけど、ファルナ様に言われて念の為に今晩からベッドの下に身を潜め寝る事にしていたんだ。
まさか本当に初日に襲って来るとは思わなかった。
ファルナ様に感謝です。
「な、何でだよ! なんでお前は死なない! なんでシェリーと居るのはいつもお前なんだ!!」
「幼馴染だから?」
「おちょくってるのか!!」
真面目に答えたつもりなんだけどな。
「ちなみにブルドも幼馴染だと思っていたんだけど?」
「ば、馬鹿にしてるのか!?」
いや、事実だから・・でもブルドの血走った眼を見ればそんな風にしか思ってないのだろう。
「さて、ブルド殿言い訳を、お聞きましょうか?」
ブルドの怒りを一身に受けていた僕の視界に階段から降りてくる二人の美女が現れてくれた。
「!!? な、何でお前達が!!?」
おい! ブルド! この方々は貴族の方だぞ。一介の小金持ちの息子が上から目線で喋って良い方々じゃないんだぞ! と、言いたいけど今のブルドにはそんな事は関係ないのだろう。
でもこれで不敬罪が成立してしまった。
なので、僕がどうであれ、ブルドは罰せられる対象になった。
「お前達はお父様が仕込んでくれた眠り薬で朝まで目が覚めないはずなのに!!」
何も聞いていないのに洗い浚い計画を話してくれて助かるよ。
「やはりそうなのですね。残念でした。貴族たるもの、と言っても極わずかですがそう言った毒に耐性を持つ者もいるのですよ。私とファルナはその極わずかな内の一人ですけどね」
「ブルド、現行犯です。もう言い逃れは出来ませんよ?」
フィネーナ様が答えると、ファルナ様は腰の剣に手を添えブルドを威嚇し投降するよう促す。
「フフ・・」
ん? ブルド?
「フフ・・・・フハハハハハ!! どいつもこいつも俺の邪魔ばかり・・・・」
ちょ、ちょっとおかしい!?
ブルドの様子が変だ?
ブルドはフィネーナ様達の方を睨み威嚇するとそのままベッドに上に刺さっていた短剣を手に取り抜いた。
「何のまねです? まさか公爵令嬢であるフィネーナ姫様にその刃を向けるのですか?」
ブルドの奴、気でも狂ったか?
高位貴族のフィネーナ姫様に短剣の刃を向けるなんて?
「ブルド止めろ! そんな事をしたら死刑罪になるぞ!?」
「死刑罪? は! 死ぬのはお前達だよ!」
そうブルドが言い放つと短剣から何か嫌なモノが噴き出して来たように感じた。
「何? その短剣なの?」
「フィネーナ姫様、どうかしましたか?!」
フィネーナ姫様も感じたのか?
あの短剣何かおかしい・・何だ! この禍々しさは?!
「もう良い! もう何だって良い!! そうだ! 力だ、シェリーを力づくで蹂躙してしまえば良いんだ! そうすれば誰にも文句は言わせない。シェリーだって力で従わせれば素直になるはずだ!!」
何をする気だ?
ブルドは持っていた短剣を大きく振り上げた。
「姫様! お下がりください!!」
「ルダ君! 何かおかしいわ! ここから出るわよ!」
お二人もブルドの変化と異様な雰囲気にただならぬ気配を感じたみたいだ。
「ブルド!! 止めるんだ!!」
「ルダ・・・終わりだ・・・・・・・・!!!!!」
次の瞬間、短剣を持つ手を自分のお腹に向けて勢いよく振り下ろすブルド。
「ぐう、あ・あああああああああああああ!!!」
苦しんでいるのか喜んでいるのかよく分からない叫び声を放つブルドのお腹から大量の血が噴き出した。
「自害・・・したのか?」
ファルナ様が疑いの目をしながらその様子を伺う。
「はは・・・はは・・・ハハハハ!? ハハハハハハハハハハ!!!!!!!!」
何だ? 何が起こってる?
ブルドのやつ・・なんだよ、あれ?
短剣をお腹に刺したまま笑ってる・・・。
次の瞬間、短剣を中心に黒い何かが大量に噴き出しブルドを飲み込んでいった。
僕が魔王候補? それは無理! 期待しないでください。 ユウヒ シンジ @waside210
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