第26話 ボルクス村 8

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・静かだな。


ファルナ様が戻られてから晩御飯を戴いた。

結構美味しかった。

たぶんフィネーナ姫様やファルナ様の手前変な食事は出せれないと思ったのかな。

それから僕はレジーさんやフィネーナ姫様の言われた通りに準備をした。

一応本とかは持ち込んだけど、ゆっくり読む気になれなかったので早めに横になる事にした。


「さて、ファルナ様の言うには今晩あたりとか言われてたけど、本当にレジ―おばさんが言っていた様な事を考えているのだろうか?」


僕もブルドはそれほど性格が良いとは言えないけど、幼馴染だし昔はそれ程、横柄な態度をとる事もなかったとはず。

まあ時々シェリーの事で僕に何かと張り合う事はあったけど、その度に僕は負けてたはずなんだけど。

まあ、年齢も二つ上な訳だし、負けて当たり前なんだよね。

でもそんな僕をシェリーがいつも庇ってくれて逆にブルドをやっつけていたのを思い出す。

あの頃はどこ行くにもいつも三人だった。

いつもシェリーが僕を遊びに誘ってくれて出掛けると、その後を必死になってブルドがついて来てたっけ?

何時だったかは、ブルドが年上だからって森の探索遊びでだって言い出して、皆で願い花を探して遊んでた時、ブルドが躓きそうになって僕が助けようと前に出たら僕の足がブルドの足に当たって自分が転んだんだよね。その時運悪くその直ぐ横の地面が崩れていてそのまま下に落ちちゃったんだ。崖の下という事もあって見つかるまで一晩掛かったんだよね、でもその時もシェリーに助けられた・・・?

あれ? でも、あの時一番近くに居たのってブルドだっけ?

なんで一晩も掛かったんだっけ?


「ゴトン・・・・」


?! 


「ズゥ、ズズ、ギィ、ズゥゥ・ギィィ・・」


何だ何か重たい物を引きずる音?


「コツ、コツ、コツ・・」


今度は足音、それもこっちに向かってる?

でも、階段を降りてく足音はしなかったのに急に地下牢の中に聞こえて来た。

やっぱりどこかに出入り口があったの?


「コツ、コツ・・」


慎重なのかゆっくりとでも確実にこっちに近づいている。

僕を狙ってる?


「ルダ・・ルダ・・・」


この声は?


「よしよし、眠っている様だな・・」

「・・・・・」


この声、ブルドだ。

こんな夜更けに何の様だ?


「食事には薬を入れられなかったが、まさか換気口から毒霧を流し込むとは思わなかったようだな?」


ん? 毒霧? 


「お前さえ、お前さえ居なけりゃシェリーは俺のものになるんだ」


そうだろうか?


「昔からお前を始末しようと、わざと躓いたふりをして崖に突き落としたり・・」


え? あれわざとだったの?


「犯罪者に仕立てあげようと、盗賊に頼んで盗んだ品物を、ルダの家に隠して役人に突き出したり・」


え? そう言えば一度領主様の役人が来て騒ぎになったけど、レジ―おばさんが直ぐに真犯人の盗賊を捕まえて冤罪だって分かったことがあった・・・あれもブルドが仕組んだの?!


「なのに何でお前はいつも、いつも、無事なんだよ!!」


それは罪を犯してないし、シェリーがいつも守ってくれてたから・・・そうかいつもシェリーが僕を守ってくれてたんだ。

それにしても一方的に陥れて、一方的に失敗して、一方的に怒られても困る。


「でもそれも今日で終わりだ。お前はここで悪魔付きになって死ぬんだ」


悪魔付き? 


「この短剣には強い呪印と悪魔の血が塗られているんだ。ある骨董商の人間が俺にって売ってくれたんだ。この剣で刺された人間は悪魔の血が体内に入り、呪印の効果で即刻悪魔付きに変貌するそうだ。ルダ、お前の為に高い金を払って手に入れたんだぜ」


別にそんな物騒な物、頼んだ覚えはないぞ!


「さあ、どんな悪魔付きになるんだろうな? 悪魔付きになったらみんなで殺してやるよ。上で寝てる貴族のお姫さんに殺させようかな? フフアハハハ、じゃあサヨナラだ」


完全に狂ってるとしか言いようがない。

ここまで悪意に満ちた殺気を放つような人間じゃなかったのに。


「死ね!」


ブルドは叫びながら短剣を握る手を振り上げ、それを一気に振り下ろした。


「ドス!!」


布団越しに鈍い音が僕の耳に届いた。

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