第20話 これからの道

 夏休みが終わり、新学期が始まった。

 想推たちは放課後の教室に集まり、話し合っていた。


「……私さ、学校を卒業したら九能家に行ってみるよ」


 美幸は想推たちにそう告げた。


「跡取りになるの?」

「うん、まずは目指してみようと思う。せっかく認めてもらったんだし、挑戦はしてみようかなって。もちろん本気でね」

「そっか」

「想推こそ、九能家に戻らないの?」

「僕はこのまま探偵を目指すことにするよ。九能家がどうとかいう柵にはなるべく関わりたくないね」


 美幸に押し付けるようで申し訳なさもある。

 だが美幸は特に気にしていないようだ。


「そう。なら頑張って陣内先生を超えるような名探偵にならないとね」

「もちろん」

「あ、そういえばさ」


 ふと、知理が話題を切り替える。


「陣内先生の話だと、たまたま調査に出ていた先生が捨てられた想推くんを拾ったから、そのまま探偵事務所で育てることになったんだよね」

「うん、そう聞いている」

「でも、陣内先生は何の調査をしていたんだろうね。あんな山奥の何もないところで」

「……それは、確かに。考えたことなかったな」


 だが冷静に考えると、不自然なところもある。


「まあ、私たちが考えても仕方ないでしょ」

「そうだけど」

「そんなに気になるなら、あとで先生に聞いてみれば?」

「……機会があったら聴いてみるよ。とりあえずは、まず探偵としての知識や技術を磨かなきゃ」


 拳を握り締め、決意する想推。


「私も邪魔じゃなかったら手伝いたいな。いいかな?」

 

 知理が尋ねる。彼女は元々探偵業に興味があったので、今後も関わりたいのだろう。


「先生に聞いてみるよ。じゃあ今から行こうか」

「うん、美幸はどうする?」

「私はバイトに行かないとね。じゃあ二人とも、また明日」


 美幸と別れ、想推たちは探偵事務所へと向かう。


(美幸も自分の道を進むことにしたんだ。僕も頑張らないと)


 去っていく美幸の後ろ姿を見ながら、そう決心した想推だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

九能家の謎 @kunou_sousui

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ