5-4

 プリンセス・アザリアの後見人としては、エド・アウミーノ教授がつくことになった。アザリアはこれから政治家、文化人、学生、民衆、何人もの人と話をする仕事が待っている。


 お父さんはアザリアに言った。


「なんとかなるし、なんとかするもんですよ」


「なんとかしてみます。そういう頑張りも案外楽しいかもしれませんから」


「それでいいんです。人生は楽しくなくちゃ」


 境界遷移装置の扱いについて議論はあったが、プリンセスが厳重に管理するということで、少なくともこれまで通りに運用することになった。


 シャンバラとぼくらの世界との座標設定をしていたジャングーに話しかける。


「アザリア、大丈夫かなあ」


「ご安心を。私がついています」


「ジャングー、言うようになったな」


 ヒガンがからかうと、ユイナも続けた。


「せっかく4人チームになったと思ったのに、残念ね」


「3人でできることをしようよ」


「なんだ? 君らはまだ何か企んでいるのか?」


 お父さんがぼくらの会話を聞きつけた。


「な、なにもしないよ。今後からは3人で遊ぼうって話していただけ」


 ヒガンとユイナもブンブンと首を縦に振った。


「座標固定。準備できました」


 ジャングーの声に、境界遷移装置の上にみんなが並んだ。


 プリンセスとケイ先生が部屋に入ってきた。


「お別れね」


「みんなの成長を楽しみにしているよってのは、先生っぽすぎるかな」


「先生は、確かに僕の先生だったよ」


「じゃあね、アザリア。あなたとは友達になれそうだったのに、残念」


「もう友達よ。みんな友達。みんな仲間」


 いくらでも話すことはあったけれど、そろそろ終わりにしなくちゃ。


「ジャングー、やって」


「さようなら、カイキどの」


 ぼくらの足元にうずまきができる。やがて吸い込まれるようにうずの中に落ちていった。


 ……。


 何度目の境界遷移になるだろう。この感覚にようやく慣れたと思ったら、これが最後とはね。


 着地したのは、夜明けの市民公園だった。興奮して気づかなかったけれど、こっちの世界の時計でいえば、徹夜したことになるんだな。眠いや。


「お母さんに怒られるかもね」


「まあ、お父さんがついていたっていえばいいよ。なんとかなる」


「ぼくはそのお父さんを助けにいったんだけどね」


「ははっ、そうだった」


 ぼくらは「じゃあね」と言ってそれぞれの家に帰っていった。案の定お母さんが怖い顔をしていたけれど、お父さんがうまくいってなだめてくれた。ぼくは、お母さんの目が真っ赤になっているのを見逃さなかったけど。




 そして一週間がたった。何か新しいことをしていたわけでもないのに、あっという間の一週間だった。


 学校というのは、時間割があって、そのスケジュールの通りに日々が過ぎていく。息苦しいといえばそうなんだけど、頭を現実に戻すには都合がいい。


 ユイナとの挨拶が、帰るときにも増えたこと以外、以前と変わりない生活を送っていた。


 3分遅れて教室に入ってきた先生が言った。


「それでは、転校生を紹介します。入って」


「はーい、出戻りプリンセスのアザリアでーす。もう少し勉強してきてもよいことになって、戻ってきました。仲良くしてくださいね」


 教室がざわつく。ユイナが「えーっ?」と声をあげる。


「また、カイキのところで暮らすから、よろしくね?」


「ええっ、聞いてないよ」


「ちょっと、カイキどういうことよ」


 ユイナに質問攻めにあう。その剣幕につられたのか、他のクラスメイトからも、質問攻めにあった。


 質問攻めは何日も続き、そうこうしているうちに、朝の挨拶をする友達がひとり、ふたりと増えていったけれど、それはまた違うお話にしよう。


 家に帰ったら、お父さんとお母さんがニヤニヤしていた。そしてエプロンをつけたジャングーも。


 これだけお膳立てされていたら、言うことはひとつじゃないか。


 おかえり、アザリア。そして、ジャングー。

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マイキュービルダー ~ ぼくとプリンセスとガードロボ・ジャングー 木本雅彦 @kmtmshk

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